Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年6月16日 No.3548  宇宙産業の動向と経産省の取り組み -宇宙開発利用推進委員会企画部会・宇宙利用部会

都築氏

経団連は5月20日、宇宙開発利用推進委員会の企画部会(原芳久部会長)と宇宙利用部会(山品正勝部会長)の合同会合を東京・大手町の経団連会館で開催した。経済産業省製造産業局の都築直史宇宙産業室長から、宇宙産業の動向と同省の取り組みについて説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 宇宙産業の動向

世界の宇宙産業市場は、衛星サービス分野を中心に着実に拡大している。宇宙活動をしている国の増加や商業的宇宙活動の拡大などにより、2040年の世界の宇宙産業の市場規模は、現在の約3倍の100兆円を超えると見込まれている。

宇宙産業は、民間開放や技術革新などにより大きな変革期を迎えている。わが国をはじめ世界各国ではスタートアップが宇宙分野に参入し、新たな宇宙機器産業や宇宙利用産業が創出された。また近年、米国を中心に、大量の超小型・小型衛星を一体的に運用する衛星コンステレーションの構築が進んでいる。

■ 経産省の取り組み

宇宙基本計画(20年6月閣議決定)では、わが国の宇宙産業の規模を30年代早期に2.4兆円へと倍増する目標を掲げている。こうしたなか、宇宙産業をめぐる時代の変化に対応し、わが国が有する過去からのアセットや人財の蓄積、“とがった”ものづくりの現場の存在、高い適応力などの強みを活かしたエコシステムを整えていくことが重要である。昨今の小型衛星コンステレーションの勃興や、利用サービスが将来的に大きく成長すると見込まれていることを勘案し、ハード面では汎用性のある開発支援、ソフト面(利用面)の環境整備について特に重点的に取り組んでいく。

■ 小型衛星コンステレーション関連施策

小型衛星コンステレーション化の大きな流れとスピードに対応するため、研究開発から試験・実証、社会実装、ユーザーからのフィードバックといったイノベーションサイクルを加速していく取り組みを進めている。そこで、汎用性のあるコンポーネントの開発促進、衛星の部品の試験環境整備、開発段階における宇宙空間での早期の軌道上実証を実現するため、環境整備を進めていく。

■ 衛星データ利用の促進

経産省は、(1)衛星データの拡充(2)利用環境の整備(3)社会実装――の三つの観点から、衛星データの利用を促進している。例えば、衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」を開発し、政府の地球観測衛星データを無償で提供している。また、懸賞金型事業にも取り組んでおり、衛星データ利用に関する多様なアイデアを募り、新たなビジネスや社会課題の解決につなげていく。

■ スペースデブリ対策、サイバーセキュリティ対策

現在、軌道上には、2万3000個以上のスペースデブリ(宇宙ゴミ)が周回している。小型衛星化の進展に伴い、ますます宇宙環境の混雑化が懸念され、スペースデブリ除去をはじめとした軌道上サービスとルール化への期待が高まっている。経産省は、軌道上サービスに必要となるロボットアーム・ハンド技術の開発支援を進めるとともに、衛星事業者によるスペースデブリ低減対策を評価する認証枠組みに関して、国際的なルール形成の議論に参画している。

また、サイバーセキュリティ対策の強化に資する民間宇宙事業者向けの指針の整備に取り組んでいる。

【産業技術本部】