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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年6月16日 No.3548 インパクト測定、マネジメントの展望 -金融・資本市場委員会建設的対話促進ワーキング・グループ

足達氏

経団連は5月23日、金融・資本市場委員会建設的対話促進ワーキング・グループ(銭谷美幸座長)を開催した。株式会社日本総合研究所の足達英一郎常務理事から、「インパクトの地平を展望する~気候変動から拡張するIMM(Impact Measurement and Management、インパクト管理と測定)」と題して、説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ インパクトへの注目の高まり

近年、「インパクト」という言葉への関心が高まっている。例えば、社会変革推進財団(SIIF)が「日本におけるインパクト投資の現状と課題2021年度調査」を公表し、日本のインパクト投資が前年度から2倍以上増加し、1兆3204億円に上ったと伝えている。また国際金融公社(IFC)が中心となって作成した「インパクト・マネジメント運用原則」の署名機関数は、20年に109機関だったのが、21年に150機関に増加している。さらに、国連開発計画(UNDP)の「企業・事業体向けSDGインパクト基準」の日本語版が21年12月に公表され、グローバル・インパクト投資ネットワーク(GIIN)が開発したIRIS+と呼ばれるツールは拡張を続けている。

■ インパクトに注目する五つの理由

こうした「インパクト」という言葉への関心が高まった主な理由として、(1)「前向きな話をしたいという欲求」、すなわちサステナビリティに関して、リスク抑制のみならずポジティブな取り組み面を評価してほしいという欲求(2)課題解決にはインパクト創出が本質だという信念(3)ウオッシュ(実態が伴っていないという批判)を回避したいという意図(4)個人的な意見であるが、欧米の文化的背景にもなっている「What gets measured gets managed」(測定できるものが、管理できる)――が考えられる。

■ インパクトの地平を展望する

以上を踏まえて、今後の「インパクトの地平」を展望すると次のことがいえる。

よく耳にする意見として、(1)パンデミックや国際情勢の不安定化により、従来型のESG投資(環境・社会・ガバナンス対応を踏まえた投資)やサステナブル・ファイナンスへの注目が低下するのではないか(2)ESGの要素としてS(社会面)への関心が強くなるのではないか(3)インフレなど短期的な事象に金融市場の目は行ってしまうのではないか――などがある。

これらを含め、個人的見解だが、(1)パンデミック拡大や国際情勢の不安定化に歯止めをかけられたのは、イノベーションのみならず倫理的な企業行動の側面があること(2)社会課題は単一ではなく複数連関して発生するので、今後、全体をとらえていく必要があること(3)長期的な産業構造の変化やマクロ経済の不安定化は依然としてリスク要因であること(4)サステナビリティに取り組まない企業に対するZ世代の不信感が今後増えていくこと――などの理由から、今後もインパクト投資、インパクト・ファイナンス、IMMの重要性は増していくと考える。

◇◇◇

説明後、インパクト指標と企業価値向上のベストプラクティスやインパクト投資に取り組む際の留意点などについて意見交換した。

そのほか、報告書案「インパクト指標を活用し、パーパス起点の対話を促進する~企業と投資家によるサステイナブルな資本主義の実践」を審議し、了承した。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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