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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年9月1日 No.3557 研究DXの推進ならびに大学研究力強化政策 -イノベーション委員会企画部会

経団連は7月25日、東京・大手町の経団連会館でイノベーション委員会企画部会(江村克己部会長)を対面とオンラインのハイブリッド形式により開催した。文部科学省研究振興局の西山崇志基礎・基盤研究課長、黒沼一郎大学研究基盤整備課長、神部匡毅参事官(情報担当)付参事官補佐から、研究デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進ならびに大学研究力強化政策について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 研究DXの推進

世界的なDXが進むなか、研究活動においてもデジタル技術とデータを活用した研究DXの進展が求められている。文科省は、研究DXを取り巻く課題を解決するため、(1)ユースケースの形成・普及(2)研究データの共有・利活用の促進(3)研究デジタルインフラ等の効果的活用――を一体的に進めている。

具体的には、スーパーコンピューター(スパコン)などの研究デジタルインフラや大型研究施設の高度化・利便性の向上を図るとともに、全国的な研究データ基盤の構築、AIをはじめとした先端基盤技術と分野研究の融合、人材育成などを通じて、日本全体の研究データの共有・利活用を促進している。また、マテリアル等の先導的な研究成果の創出が期待される分野において、価値創造につながるユースケースの形成・普及を推進している。

今後は、特に、わが国が誇る高品質な研究データに加え、世界最高水準のスパコン、多次元解析等の革新的なAI技術を組み合わせることで、圧倒的な効率化・高速化と飛躍的なイノベーションを実現するため、国立情報学研究所(NII)や理化学研究所(理研)等が中心となってプラットフォーム形成を進める。

そのほか、物質・材料研究機構(NIMS)では、MOP(Materials Open Platform)という産業界との領域別オープンプラットフォームの枠組みを構築して水平連携を図っている。

これらの取り組みを進めるうえでは、産業界との密接な連携のもと、日本全体での研究データの共有・利活用が重要と考えている。

■ 大学研究力強化政策

2022年5月に「国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律」が成立し、世界に伍する研究大学の実現と、地域大学も含め、わが国の大学の研究力強化を進めている。その柱の一つが、10兆円規模の大学ファンドの運用益による研究基盤への長期的・安定的な支援である。

世界に伍する研究大学とは、(1)世界水準の研究環境(待遇、研究設備、サポート体制等)により世界トップクラスの人材が結集(2)英語を共通言語とし、海外大学と日常的に連携する教育研究環境を有する(3)研究者に生活費を支給し、研究活動に集中しながら博士号を取得可能――を備えたものと位置付けている。

こうした潜在力を有する大学を「国際卓越研究大学」に認定して、大学ファンドにより支援する。潜在力は、(1)研究力(2)毎年3%成長する事業・財務戦略(3)自律と責任あるガバナンス体制(合議体)――という3要件で判断する。特に、(2)は大学独自の外部資金獲得も前提としつつ、大学の事業規模を成長させることを意味している。スクラップアンドビルドという行政固有のルールから大学を脱却させることで、新たな学問分野への対応、拡大する産学連携・地域課題解決ニーズへの対応の両立を図ろうとするものである。

今後、22年9月に認定基準の詳細を公表してパブリック・コメントを募集するとともに、年内に大学からの応募を開始し、23年度に対象大学の選定を進める予定である。

【産業技術本部】

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