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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年9月22日 No.3560 日本ベンチャー学会とシンポジウムを共催 -アントレプレナーシップ教育への取り組みをめぐり議論

岸田文雄内閣総理大臣が「スタートアップ創出元年」と位置付けた2022年、官民でスタートアップ振興に向けた取り組みが進められている。とりわけ6月には、提言「スタートアップ躍進ビジョン~10X10Xを目指して」(22年3月15日公表)の多くの項目を盛り込むかたちで、「骨太方針2022」と「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」が閣議決定された。社会全体でスタートアップ振興を推し進めるには、この流れを一過性ではない本格的な潮流とすることが必要である。

(左上から時計回りに)長谷川氏、出雲副議長、各務氏、石井氏

そこで経団連と日本ベンチャー学会(各務茂夫会長)は9月5日、共催シンポジウム「スタートアップ創出元年~今後の課題と展望」をオンラインで開催した。パネリストとして出雲充経団連審議員会副議長・スタートアップ委員長、各務日本ベンチャー学会会長・東京大学大学院教授、石井芳明経済産業省新規事業創造室室長が登壇し、長谷川博和日本ベンチャー学会副会長・早稲田大学教授がファシリテーターを務めた。概要は次のとおり。

■ 大学を核とするスタートアップエコシステムの構築(出雲副議長)

スタートアップの要件は、社会課題の解決とイノベーションの創出という2点である。全国に3306社存在する大学発スタートアップのうち64社が上場しており、50社に1社が上場するという計算になる。全国の各大学・地域に、上場スタートアップを中核とする強靱なエコシステムが生まれることを目指し、好事例を展開することが必要である。

日本で起業が少ない原因の一つは、身近に起業家がいないことである。起業家に自身の出身校でアントレプレナーシップ教育(起業家教育)の出前授業を行ってもらい、学生が起業家と触れあう機会を増やすだけでも影響は大きい。経団連としても、学校への起業家の派遣をサポートしたい。

■ スタートアップ育成5か年計画策定に向けた検討(石井氏)

「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」にも盛り込んだとおり、政府では、スタートアップ育成5か年計画を22年末に策定する。

経産省では、5か年計画に盛り込むべきアジェンダとして、公共調達、資金、人材、挑戦しやすい環境の整備、ストックオプションの環境整備、起業家教育、オープンイノベーションの7項目を検討している。

山際大志郎スタートアップ担当大臣のもと、政府を挙げて本気でスタートアップ支援に取り組んでいる。社会全体の機運も高まっているなか、起業家教育を盛り上げる動きも非常に重要である。初等・中等教育の段階から起業家教育を行うとともに、大学への支援も強化すべく、文部科学省とも調整を進める。

■ 産学連携による起業家教育プログラムの実施(各務氏)

これからの学生には、試験のように答えのある問題を解くのではなく、個別の課題を自ら見つけて解くというマインドセットを持ってもらいたいという思いで起業家教育に取り組んでいる。一人ひとりが個人的な経験に基づき、社会課題の問題の当事者として自分自身を位置付けることが重要である。

起業家教育はお金も教員も必要であるため、簡単にはプログラムを新設できない。今後は教育プログラムをつくるという産学連携が不可欠という考えのもと、東京大学では、社会課題の解決と経済価値の創出の両立方法を考えるさまざまなプログラムを企業と共同で実施している。

研究者や教授に対しても、海外大学と連携したプログラムを実施している。しかし、日本の研究者には、スタートアップとしてグローバルに展開するうえで不可欠な、説明と質疑応答の双方に対応できる英語能力が格段に不足している。対策が必須であり、今後は英語教育プログラムも行いたい。

◇◇◇

閉会にあたり出雲副議長は、「他国の勝ち筋をたどるだけでは、世界に追い付くことはできない。日本ならではの新しい成功の道筋をつくるためにも、人材の流動性を高めていくことが必要である。10X10Xの実現のため、先頭に立って取り組んでいきたい」と強調した。

経団連では提言の実現に向けて、今後も産学官と連携した活動を継続していく。

【産業技術本部】

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