Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年11月3日 No.3565  日本貿易保険の取り組み -開発協力推進委員会

黒田氏

経団連の開発協力推進委員会(安永竜夫委員長、遠藤信博委員長)は10月5日、オンラインで会合を開催した。日本貿易保険(NEXI)の黒田篤郎社長から、同社の概要と活動について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ NEXIの事業概況と現下の世界情勢

NEXIは、貿易保険法に基づく特殊会社であり、日本企業の輸出、投資、融資といった海外でのビジネスに対して、戦争、内乱、テロ、経済制裁、自然災害、疫病蔓延等、通常の保険では救済できないリスクをカバーしている。1950年、当時の通商産業省の内部部局としてスタートし、2001年に独立行政法人となった後、17年、政府が100%出資する現在の株式会社となった。

足元では、新型コロナウイルスの感染拡大、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化等に伴い、人道危機や経済損失が拡大している。また、資源・食料価格の高騰とそれに伴う欧米の利上げの影響によって、新興国では貿易赤字や財政赤字が拡大し、経済危機に陥る国が増えると懸念される。こうしたなか、企業は、調達、製造、販売等に関し、あらゆるリスクを勘案し、それらの削減をより重視していかざるを得ない。そのため、リスク回避のためのツールとして、貿易保険の重要性・必要性があらためて高まっている。

■ ウィズコロナ時代におけるNEXIの対応

このような環境下、NEXIは、(1)新型コロナ関連損失を保険金の支払い対象とすること(2)サプライチェーン上の新たなリスクを取ること(注)(3)新型コロナ蔓延国であっても新規申し込み、既投資案件を引き受けること――の三つを基本方針としている。21年度はNEXI設立後2番目に多い保険金を支払い、うち75%が新型コロナ関連であった。また、リスク回避を重視する企業の増加に伴い、保険の利用者数が拡大した。

また、22年度には、(1)新型コロナ等を踏まえた対応(2)サプライチェーン強靱化に向けた見直し(3)国際連携強化に向けた対応(4)その他利用者ニーズを踏まえた対応――の四つの観点から7年ぶりに貿易保険法が改正され、NEXIも制度改正を実施している。これにより、感染症の蔓延で、海外のプラント建設工事が中断し、従業員の退避費用が発生した場合や、船積が延期され、国内で貨物保管料が発生した場合等にも保険金が支払われるなどのカバー範囲の拡大がなされている。

また、20年にNEXIは融資保険の対象案件を拡充するため「LEADイニシアティブ」を創設した。再エネ・脱炭素促進や、外国政府・企業、国際機関とのパートナーシップ構築、社会課題解決によるわが国のプレゼンス向上につながるなどの「先導性要素」が認められれば、従来のような日本からの輸出や出資が伴わなくても融資保険の適用が可能となった。これにより、アフリカ向け新型コロナ対策支援や、パラオ向け光海底通信ケーブル輸出支援、エジプト政府サムライ債発行支援、クウェート石油公社向け脱炭素支援等、着実に実績をあげている。より多くの日本企業に、事業リスク低減のため、NEXIの多彩なメニューを活用してほしい。

(注)投資保険において、投資先とは別の国にある製品販売先が新型コロナの影響でロックダウンするなど、製品の販売に支障を来した結果、投資先が1カ月以上の事業休止をした場合、保険金を支払う

【国際協力本部】