Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年11月3日 No.3565  ISSBにおける基準設定の現状と展望 -金融・資本市場委員会ESG情報開示国際戦略タスクフォース

小森氏

経団連は10月6日、金融・資本市場委員会ESG情報開示国際戦略タスクフォースを開催した。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の小森博司理事から、「ISSBにおける基準設定の現状と展望」について、説明を聴くとともに意見交換した。小森氏は9月1日にISSB理事に就任した。説明の概要は次のとおり。

■ ISSB設立の経緯

近年、サステナビリティに関する関心の高まりとともに、その報告基準や指標が乱立した。このため、投資家からは比較可能性を求める声が高まり、企業からも開示ルールの統合を求める声が聞かれるようになった。国際会計基準(IFRS)財団は、市場関係者の要請に応えるかたちで、IFRS財団のなかにISSBを設置することを決定し、2021年11月の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で発表した。ISSBが設定する「IFRSサステナビリティ開示基準」(ISSB基準)は、新たに一からではなく、既存の複数の開示基準から「いいとこ取り」をして開発することとしている。

ISSB基準は、世界中で使用される共通のルール(グローバル・ベースライン)として設計されるが、各国当局がこのベースラインに独自の要求事項を上乗せすることは許容される(ビルディング・ブロック・アプローチ)。

■ 「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」(S1)
および「気候関連開示」(S2)について

S1・S2の公開草案に対しては、世界中の市場関係者から1400を超えるコメントが寄せられた。ISSBは、22年末までにコメントの分析結果(フィードバック・ステートメント)を公表し、23年のできるだけ早い時期にS1・S2基準を最終化し、公表したいと考えている。

■ ISSBの今後の展望

ISSBは、S1・S2の最終化に向け、審議を加速する。今後ISSBが開発する基準の優先順位を決定するアジェンダ・コンサルテーションは、23年の上期に開始する。

IFRS財団には、国際会計基準審議会(IASB)とISSBの接続性を強化するためのチームも組成された。将来的にはIASBとISSBの両基準を統合し、一つの報告基準とすることも視野に入れる。

■ 日本に対する期待

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同する企業・機関数で日本は圧倒的に世界最多である。GRI(Global Reporting Initiative)基準準拠企業数、CDP(旧Carbon Disclosure Project)の気候変動、森林、水の分野で「+A」評価を得ている企業数も世界最高レベルである。企業自らが自主的にサステナビリティにかかるさまざまなフォーラムを立ち上げ、関係者が集まり積極的に議論しているのも日本ならではといえよう。こうしたサステナビリティに対する積極的な取り組みは、日本企業の大きな強みとなる。サステナビリティ情報の積極的な開示を世界に向けてアピールし、日本企業の企業価値とプレゼンス向上につなげるべきである。

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意見交換では、「サステナビリティ開示基準の集約に向けての課題」「S1・S2に続く今後の基準設定の展望」「統合報告書や有価証券報告書の位置付けの展望」「サステナビリティ開示情報に関する投資家側と企業側の現状認識のギャップ」等に関して意見・コメントがあった。

【経済基盤本部】