Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年3月2日 No.3581  自動車産業における脱炭素実現に向けた多様な道筋 -モビリティ委員会

プラット氏

十倉会長

豊田委員長

有馬委員長

経団連(十倉雅和会長)は2月8日、モビリティ委員会(十倉委員長、豊田章男委員長、有馬浩二委員長)を東京・大手町の経団連会館で開催した。オンラインを含め約500人が参加した。トヨタ・リサーチ・インスティテュート最高経営責任者のギル・プラット博士から、「リーン生産方式の教訓を気候変動問題に活用~日本からG7と世界への贈り物」と題し、自動車産業におけるカーボンニュートラル(CN)実現について説明を聴くとともに意見交換した。

冒頭、十倉会長は、「2023年は広島でG7サミットが、25年には大阪・関西万博が開催される。こうした機会をとらえ、2050年CNの実現に向けて国際的に発信するため、モビリティ産業をはじめ、さまざまな産業が一緒になり社会実装を加速することが必要」と委員会への期待を込めた。続いて、豊田委員長は、「G7は『日本らしいCN』について、各国首脳に理解してもらう良い機会である。モビリティ委員会に参加する200を超える企業の行動と実行のため、科学者の見地から『事実』を共有する場としたい」と述べた。

プラット氏による説明の概要は次のとおり。

■ 島国・日本の知恵をCN実現に活用

島国・日本は、限られた資源を有効活用してきた。トヨタ生産方式といったリーン生産方式が日本で発明されたことは偶然ではない。日本は、資源制約のもとでのCNの達成が不可能でないことを、G7や世界に対し経験から伝えることができる国である。

■ 電気自動車とCO2削減に関する事実

バッテリー式電気自動車(BEV)を製造するには、従来のガソリン車に比べて6倍以上の重要鉱物が必要となる。新しい鉱山の稼働には10~15年かかるとされ、さらに、今後10~20年は、電池用鉱物が30~50%不足すると予測されている。

環境保護の観点から、今すぐ大気中に蓄積するCO2を減らす必要がある。BEV1台分のリチウムを使用して、プラグインハイブリッド車(PHEV)6台またはハイブリッド車(HEV)90台を製造することが可能であることに加え、HEV90台の方が、自動車全体のCO2排出量は少なくなる。つまり、リチウムの使用量に対し、CO2削減効率が最も良いのはHEV用電池である。その事実を踏まえ、限られたリチウムの使い道を考えることが必要である。

■ 敵は炭素

敵は炭素であり、内燃機関ではないことを認識することが大切である。無駄を減らし、資源を有効活用することがカギとなる。世界のリーダーやメディアも同じ見方をするようになりつつある。私の使命は、多くの人に「多様性こそが力」と伝えていくこと。日本が得意なことを世界に理解してもらうため、共に頑張っていきたい。

◇◇◇

意見交換では、有馬委員長から、「ファクトに基づいた明快な説明である。国によって進む道は違うと思うが、自動車部品産業は電動化の荒波をどうとらえ、どう乗り越えていくべきか」との質問があった。プラット氏は、恐竜が絶滅したなかで生き残った生物がいたことを例に、「多様性が確保されるよう、資源を投下することが必要だ」と述べた。

このほか、エネルギー、船舶、航空等の各業界におけるCNの進め方について議論した。

最後に、豊田委員長が「自動車をペースメーカーにして、CNに向けた活動を産業全体で進める必要がある。日本全体の競争力強化につなげるためにも協力してほしい」と締めくくった。

モビリティ委員会 プラット博士講演・主な質疑応答
https://www.youtube.com/watch?v=9MbyMOAgEbg

【ソーシャル・コミュニケーション本部】