アジア太平洋地域や国内の自然保護プロジェクトを支援する事業


日本経団連自然保護基金/日本経団連自然保護協議会


第53回NGO活動成果報告会

第53回NGO活動成果報告会

2008年8月4日開催

山梨大学教育人間科学部発生進化学研究室准教授宮崎淳一氏より、『希少生物ホトケドジョウの保護と自然環境の保全』について報告

ドジョウのなかでも特に「ホトケドジョウ」類は絶滅が心配されている。ホトケドジョウ類には、大きく分けて「エゾホトケドジョウ」「ヒメドジョウ」「ホトケドジョウ」「ナガレホトケドジョウ」の4つの種類が確認され、日本に生息していない「ヒメドジョウ」以外の3種が環境省の「レッドデータブック」に掲載されている。また、本州で一般的にみられるのは「ホトケドジョウ」と「ナガレホトケドジョウ」である。

ホトケドジョウ類を遺伝学的に調べると上記の4種は遺伝的にも異なり、「エゾホトケ」と「ヒメ」のグループと「ホトケ」と「ナガレホトケ」のグループに分かれることが明らかになった。また、本州で一般的な後者グループについて詳細に分析すると、遺伝的資質の違いは生息地の違いと一致しており、各生息地の境には高い山脈など地形的な境界があり、互いに行き来ができないために、独自の遺伝的進化をとげたものと考えられる。これは、ドジョウの進化の歴史であると同時に、本州の地形のなりたちを示す鍵にもなりうるものである。

ところで、ホトケドジョウは、見た目はずんぐりとしており、里地里山にすんでいる。一方のナガレホトケドジョウは、体つきがほっそりしており、生息地も奥山の細流に限定されるという特徴がある。ところが、東海地方のナガレホトケの遺伝的解析を行ったところ、形態的特長や生息地の特徴はナガレホトケでありながら、遺伝的にはホトケドジョウの仲間であることが判明した。これは、いったん、両者の系統樹が別れた後に、東海地方においてはホトケの一部が奥山の細流に分け入り、そこに適応したのではないか(共進化)と考えざるを得ない。したがって、この東海地方のナガレホトケは上記の4種とはまた別の保護すべき類型(保護単位)と考えられ、保護を図っていく必要がある。

しかし、東海地方にはダムの建設計画がある。そして、当該計画地にはナガレホトケドジョウが生息している。既設のダムの周辺では生息は確認できず、ダムが建設されればその生息が脅かされる可能性が高い。そこで、計画地に生息しているナガレホトケドジョウを計画のないところに移植することを検討する必要がある。現在、その移植候補地を選定のための調査をしており、その際には、移植先における既存種と移植する種とが遺伝的に近いことを条件と考えている。今年度は、具体的な移植先を決定すること、そして、そのような移植を行うための基礎的データとして、水系毎のドジョウの遺伝形質の調査を進めていきたい。

今回、KNCFから初めての支援を受けたことにより、現地調査の回数を増やすことができ、大変ありがたい。