第59回NGO活動成果報告会
ヘラシギの越冬地・中継地における保全活動
- 日本湿地ネットーワーク
- 柏木 実 副代表
ヘラシギは、くちばしがスプーンのような形をした、シギ・チドリ類では唯一の種であり、IUCNレッドデータでは絶滅の危険性の最も高い種とされている(ヘラサギとは異なる)。シギはくちばしの形にいろいろな種類があり、それぞれ固有のえさのとり方などがあるため、環境変化に適応しにくい特徴がある。ヘラシギは、ユーラシア大陸北東端で繁殖を行い、日本や韓国・中国を経由し、東南アジアで越冬を行う渡り鳥である。その個体数は急激に減少しているが、それを食い止めるだけでなく、回復をさせたいとの思いで、国際的なヘラシギチーム10名で活動している。
2000年にロシア科学アカデミーがロシア・チュコト半島(アラスカの対岸)でヘラシギの生息調査を行いそれに関与したのが始まりで、2002〜2004年には、KNCFの支援を受けて繁殖地(ロシア北極圏)の調査を実施した。その結果、繁殖地における個体数は、1975年には、2000つがい以上いたものが、2000年には1000つがい、2003年には500、2008年には250と、急激に数を減らしている事実が明らかになった。また、標識をつけることで、渡りのルートも明らかになった。先日東京湾三番瀬において、シベリアから渡ってきたヘラシギを確認した。
2006年からの3年間は、KNCFの支援を受け、越冬地(タイ、ミャンマー、ベトナム)の調査を行った。ミャンマーにおいては、40羽程度の生息地が2箇所みつかった。どうやらここが越冬の中心的場所で、今後保全活動を行うのに最も適した場所が特定できた。一方、ベトナムでは、2008年は1羽も見つからなかった。これは、個体数減少の表れと考えている。このように、繁殖地における個体数の確定や、越冬地の分布などが明らかになった。
環境の変化を見た場合、繁殖地周辺ではあまり変化がない。一方、越冬地では開発や気候変動の影響もあり、洲がなくなるなど変化が大きい。また、中継地でも干潟の埋め立てなど環境変化は起きている。
今後、これらのデータを基に、ヘラシギの回復計画を立て、実行しなければならない。それには、モニタリングの仕組みが不可欠であり、現地の方々の協力が必要である。そうした体制作りも課題である。
ヘラサギは、1990年代に希少種となり、その後の保護活動の成果で、個体数が回復してきているので、ヘラシギについてもヘラサギの例も参考に、個体数回復活動に取り組んで生きたい。それに取り組む基礎データがそろった段階といえる。
質疑応答で、湿地の水質汚染の影響、日中韓連携の重要性、中国内陸部の中継地としての可能性などが指摘された。





