アジア太平洋地域や国内の自然保護プロジェクトを支援する事業


日本経団連自然保護基金/日本経団連自然保護協議会


第68回NGO活動成果報告会

第68回NGO活動成果報告会

2010年3月9日開催

外来撹乱生物の実態調査とその対策の研究による生物多様性と文化財保全

関西野生生物研究所
川道 美枝子 代表
アライグマの問題

日本では1980年代以降にペットとして輸入が増加したと考えられるが、現在は動物検疫が強化されほぼ輸入されていない。しかしペットとしては不向きで、手に負えなくなった多くのアライグマが捨てられ、その繁殖力の高さから、現在47都道府県すべてに生息し異常な勢いで増えている。

アライグマが農作物を食い荒す被害は深刻で、さらに危険な病原菌や寄生虫を持っている可能性がある。特に、発症すると100%死に至る狂犬病はアライグマの最も深刻な問題である。日本周辺の国々は殆ど狂犬病汚染地域であるため、もし日本に狂犬病が入ってきた場合、アライグマを媒介にたちまち拡大する危険性がある。

また人家や文化財に侵入している事実がある。近畿地方の多くの古い社寺は、侵入口も見つけやすくアライグマの格好の巣となっている。アライグマは天井裏へ入るために軒下を破壊し、その中で糞尿をして天井を腐らせて破損させる。その他壁や柱の貴重な絵や仏像などの文化財にも爪跡などで被害が及んでおり、中には修復不能なものもある。また生態系への影響では、社寺を囲む生物多様性豊かな鎮守の森などでカメ類、サワガニ、サンショウウオなどが食い荒らされている。


(図1 アライグマによる食害)
対策

問題の根本は繁殖能力の高さで、素早い捕獲が最も重要かつ効果的対策である。計算上1ペアのアライグマは10年後には350頭、15年では3667頭にもなる。20年では3万頭を超える。実際の捕獲では、兵庫県の場合年間3000頭を越えている。大阪府では2001年に3市3頭だった捕獲数が2006年には30市町で808頭にも上った。京都府は我々の対策が奏功し捕獲数は横ばいになった。

アライグマの捕獲には罠を使うことが多いが、外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)や鳥獣保護法(鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律)による規制があり、公的な許可が必要である。我々は、捕獲用の罠を購入して市町村に貸与し、社寺を含めアライグマの被害があった地域で積極的に捕獲を進めてもらっている。

捕獲効果の測定は、社寺の建造物につけられた新しい爪跡の有無で可能である。アライグマがいなくなれば、建物・文化財への被害、病気、農作物や生態系への悪影響の防止に繋がる。そのためにも実態調査と早期の対策開始が大変重要である。


(図2 罠で捕獲されたアライグマ)