Policy(提言・報告書) 国際協力  緊急提言「海外インフラ展開のための金融機能の強化を求める」

2010年12月6日
(社)日本経済団体連合会

世界的に高まるインフラ需要に応えるため、政府の新成長戦略(本年6月18日閣議決定)ならびに円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策(本年10月8日閣議決定)での、官民連携によりパッケージ型インフラの海外展開を推進する方針を踏まえ、新成長戦略実現会議が、パッケージ型インフラ海外展開関係大臣会合を9月に立ち上げたところである。

同会合は、ベトナムにおける重点プロジェクトを指定して官民連携のトップセールスによる働きかけを進め、原子力発電所建設およびレアアース鉱山開発において、大きな成果を収めることができた。経済界としては、その戦略的、機動的な進め方を大いに評価するものである。

この取り組みをさらに加速するため、下記のとおり、インフラ輸出を支える金融機能の強化、特に国際協力銀行(JBIC)の業務の見直しを求める。

1.JBICの機能強化

日本企業の優れた技術・ノウハウを活用したパッケージ型インフラの海外展開のためには、各国の政府系輸出入金融機関に匹敵する機能がJBICに求められる。これに関連し、本年11月、先進国向けの投資金融業務を都市鉄道、上下水道、洋上風力発電などの分野に拡充するための政令改正が措置されることとなったことを歓迎する。さらに、次の3つの機能強化のための法改正を早急に行うことが必要である。

(1)先進国向け中長期の輸出金融を可能とすること

輸出金融については、原則として途上国向けに限定されている。先進国・途上国を問わず、原子力発電所や高速鉄道等の建設ならびに船舶・プラント等の輸出案件で、民間金融機関では対応が難しい融資に限定して、中長期輸出金融の供与を可能とすべきである。

(2)日本企業や海外合弁企業に短期のつなぎ資金の供与を可能とすること

日本企業または日本企業が出資参画している海外合弁企業が海外事業に必要とする資金に対し、現状では、1年超の長期資金のみ貸付が可能とされている。これに加え、大型の合弁事業の立ち上げ等で必要となる運転資金の調達を容易にするための短期のつなぎ融資で、民間金融機関では対応が困難な融資を可能とすべきである。

(3)日本企業が外国企業を買収するための投資金融を恒久化すること

日本企業が外国企業を買収するための投資金融については、国際金融秩序の混乱に対処するため、2011年3月末までの特例措置として認められている。パッケージ型インフラの海外展開にあたっては、外国企業と機動的に連携していくことも必要であり、これを恒久化すべきである。

2.JBICの分離独立

JBICは、海外に進出するわが国企業活動を機動的に支援することが期待されており、各国の政府系輸出入金融機関との競争に直面している。そこで、日本政策金融公庫からJBICを分離独立させ、業務の機動性、戦略性を強化すべきである。

3.国際協力機構(JICA)の海外投融資の早期再開

円借款は供与までに時間がかかること、リスケジュールなどの相手国の事情により供与ができなくなること、対象国が減少してきていることなどの制度上の困難を抱えている。

そこで、プロジェクトを対象とするJICAの海外投融資を早期に再開することが求められる。特に、官民連携のいわゆるPPP(Public Private Partnership)に海外投融資を活用していくことが必要である。また、開発効果が高く、政策的に推進するべきプロジェクトについては、JICAの海外投融資を円借款とともに供与することを可能とすべきである。

以上