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Policy(提言・報告書) 労働政策、労使関係、人事賃金 採用選考に関する企業の倫理憲章の理解を深めるための参考資料

採用選考に関する企業の倫理憲章
(社)日本経済団体連合会
2009年10月20日制定
2011年3月15日改定

日本経団連では、1997年に「採用選考に関する企業の倫理憲章」を定めて以降、毎年、採用選考活動の早期化の自粛を呼びかけてきた。本資料は、倫理憲章の理解を一層深めていただくために作成したものであり、2011年3月の倫理憲章改定を踏まえて必要な修正を行った。各社の実情に応じ、採用選考活動の早期開始の自粛など、倫理憲章の遵守への一層のご協力をお願いしたい。

日本経団連は、今後も倫理憲章のさらなる周知徹底をはかり、産業界が一体となった取り組みとなるよう努めていく。

1.広報活動について

(1)広報活動とは

企業が行う採用選考活動は、一般に広報活動と選考活動に大別することができる。
広報活動とは、採用を目的として、業界情報、企業情報などを学生に対して広く発信していく活動を指す。本来、こういった情報は可能な限り速やかに、適切な方法により提供していくことが、ミスマッチによる早期離職の防止のためにも望ましいものである。しかし、昨今の早期化ゆえの長期化による過熱化が著しいことに鑑み、倫理憲章では、インターネット等を通じた不特定多数向けの情報発信以外の広報活動の開始時期について規定したものである。
一方、こうした広報活動の実施に際しての制約は、それが実質的な選考とならないものとすることである。具体的には、会社説明会などのように、選考活動と異なり学生が自主的に参加または不参加を決定することができるものが該当すると考えられ、実施にあたっては、その後の選考活動に影響しない旨を明示するとともに、土日・祝日や平日の夕方開催など、学事日程に十分配慮することが求められる。

(2)広報活動の開始時期について

倫理憲章では、「3.採用選考活動早期開始の自粛」において、「学生が本分である学業に専念する十分な時間を確保するため、インターネット等を通じた不特定多数向けの情報発信以外の広報活動については、卒業・修了学年前年の12月1日以降に開始する。」としている。
この開始期日の起点は、自社の採用サイトあるいは就職情報会社の運営するサイトで学生の登録を受け付けるプレエントリーの開始時点とする。したがって、12月1日より前には学生の個人情報の取得や、それを活用した活動は一切行えない。
また、12月1日より前に行うことができる活動は、HPにおける文字や写真、動画などを活用した情報発信、文書や冊子等の文字情報によるPRなど、不特定多数に向けたものにとどまる。なお、12月1日以降に実施予定の広報活動のスケジュールを事前に公表することは可能である。

(3)広報活動であることの明示について

12月1日以降に行う広報活動については、学生が自主的に参加の可否を判断できるよう、その後の選考活動に影響を与えるものではないことを十分周知した上で実施することが求められる。具体的には、広報活動を行う際の告知・募集の段階と実施時の段階の双方において、当該活動が広報活動として行われる旨を、ホームページや印刷物への明記、会場での掲示や、口頭による説明などの形で学生に周知徹底する必要がある。
なお、広報活動であることを示す場合の内容としては、以下のような例が考えられる。

【会社説明会の場合の明示例】
○明示する場面
  1. 開催の告知・募集段階
  2. 開催当日の案内(口頭、会場における掲示など)
○具体例
例1) 「この説明会は、学生の皆さまに今後の就職活動を行う上での参考として、当社や業界の状況をご理解いただくための広報活動の一環として開催するものであり、本説明会への参加の有無が今後の採用選考のプロセスに影響するものではありません
(あるいは、下線部分に替えて)
本説明会へ参加しなかったからといって、今後の採用選考上不利に働くことはありません
例2) 「この説明会は、広報活動の一環として、当社の事業やCSRへの取組みなどについて理解を深めていただくために行うものです。説明会への参加は任意であり、参加者の方々を対象に選考を行うことはいたしません」

2.選考活動について

(1)選考活動とは

選考活動とは、一定の基準に達した学生を選抜することを目的とした活動を指す。

(2)選考活動の開始時期について

倫理憲章では、「面接等実質的な選考活動については、卒業・修了学年の4月1日以降に開始する。」としている。
ここで言う早期開始を自粛すべき「実質的な選考活動」とは、活動の名称や形式等を問わず、実態で判断すべきものであり、具体的には、(1)選考の意思をもって学生の順位付けまたは選抜を行うもの、あるいは、(2)当該活動に参加しないと選考のための次のステップに進めないものを言う。
ただし、WEBテストやテストセンターの受検、エントリーシートの提出など、日程・場所等に関して学生に大幅な裁量が与えられているものについては、学事日程への影響がない場合もあるため、当該活動が早期開始を自粛すべきか否かの検討を行う際には、倫理憲章の趣旨を十分に踏まえた上で、各企業が活動の実態に合わせて適切に判断することが求められる。

3.多様な採用選考機会の提供について

倫理憲章では、海外留学生の帰国後の就職活動への対応が求められていることや、2010年11月に「青少年の雇用機会の確保等に関して事業主が適切に対処するための指針」が改正され、未就職卒業者の新卒採用扱いでの応募機会提供への努力規定が設けられたことを受けて「6.多様な採用選考機会の提供」の項目を追加している。企業はこれらの対応にあたり、各社の実態に応じた努力を継続していくことが求められる。なお、卒後3年以内の未就業者の取り扱いについても、上記の指針を踏まえつつ、自社の実情や採用方針に則り、適切な対応を行うことが望ましい。

4.その他

◇インターンシップについて

倫理憲章では、「7.その他」において、インターンシップについて、「産学連携による人材育成の観点から、学生の就業体験の機会を提供するために実施するものである。したがって、その実施にあたっては、採用選考活動(広報活動・選考活動)とは一切関係ないことを明確にして行うこととする。」としている。
現状行われているインターンシップをみると、就業体験の提供を行うもののほか、企業の広報が中心になっているものも実施されており、従来の本参考資料では、両者を含めて広報活動の一環であると位置付けていたところである。しかし、今般、就職・採用活動の過熱化の是正に向けて、12月1日より前の広報活動の自粛を倫理憲章上で規定したことに基づき、インターンシップと称して企業広報の一環で行っているものは、12月1日以降に実施するよう求めることとした。したがって、今後は混乱を避けるためにも、12月1日以降に行う企業広報としてのプログラムについては、インターンシップの呼称を使わないことが望ましい。
なお、「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方(平成9年9月18日文部省・通商産業省・労働省)」、「インターンシップの導入と運用のための手引き(平成21年7月文科省)」等を踏まえて考えると、本来の趣旨である就業体験として12月1日より前に実施するインターンシップは、以下のような条件を満たしたプログラムであることが求められる。

【就業体験としてのインターンシップの在り方】

学生の就業体験の提供を通じた産学連携による人材育成を目的とすることに鑑み、当該プログラムは、5日間以上の期間をもって実施され、学生を企業の職場に受け入れるものであること。
加えて、就業体験の提供であることを明確化するために、実施の際には、採用選考活動と関係ない旨をホームページ等で宣言した上で、以下の取り組みを併せて行うことが求められる。

  • 採用選考活動と明確に区別するため、告知・募集のための説明会は開催せず、また、合同説明会等のイベントにも参加しない。また、告知・募集は、ホームページなどWEB上や、大学等を通じて行う。
  • 募集から実施までを通して、当該活動が就業体験の提供であり、採用選考活動とは無関係である旨の周知徹底を図り、参加する学生から活動の趣旨について書面等での了解を得る。
  • 学生の就業体験の提供を通じた産学連携による人材育成を目的としていることが分かるよう、可能な限り詳細にプログラム内容を一般に公開する。
  • インターンシップに際して取得した個人情報をその後の採用選考活動で使用しない。
  • 大学等のカリキュラム上、特定の年次に行う必要がある場合を除き、募集対象を学部3年/修士1年次の学生に限定しない。
以上

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