Policy(提言・報告書) 労働政策、労使関係、人事賃金  企業の雇用維持に対する新たな支援策の実施を求める

2011年6月2日
(社)日本経済団体連合会

東日本大震災後の雇用対策として、これまで政府が雇用保険の特例措置の実施や、雇用調整助成金の拡充など速やかな対応を図ってきたことにより、多くの企業で従業員の雇用維持努力がなされてきている。

とりわけ、事業主のみが拠出する保険料を財源とする雇用調整助成金については、リーマンショック以降の弾力的な要件緩和の実施によって活用がなされてきたこともあり、制度に対する企業の期待はかつてないほどに高まっている。

しかしながら、雇用調整助成金は「経済上の理由」により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主を対象とするところであり、天災や政府の指示等によって休業等を余儀なくされるものまで事業主の共同連帯として事業主の保険料を充当していくことは雇用保険二事業の制度本来の趣旨に鑑みて困難であり、併せて、財政収支が大幅に悪化している状況も踏まえる必要がある。

他方、直接被災や福島原子力発電所にかかる警戒区域や計画的避難区域に所在する場合、さらには今後の電力需要の抑制への対応などのため、事業縮小によって休業等を余儀なくされる場合であっても、雇用を必死に維持しようとする事業主に対し、政府として何らかの支援策を早急に講じていく必要がある。

そこで、下記のとおり、労働者の雇用の安定と事業主の雇用維持のため、一般財源により、新たな雇用支援の制度を創設することを求める。

1.求められる新たな制度の概要

事業活動の縮小に伴い雇用維持を目的とした休業のうち、「経済上の理由」に該当しないために、現行の雇用調整助成金の対象とならない以下のようなケースについて、休業手当等に要した費用の一部を事業主に助成する。

【対象とすべき例】

  1. 直接被災を理由とする休業
  2. 原発災害に伴う警戒区域・計画的避難区域における休業
  3. 東京電力・東北電力管内に所在する事業主が電力需要の抑制目標(電力の使用制限を含む)を達成するために行う休業

2.財源の在り方

天災や、政府による電力需要抑制の目標の達成など、休業の直接的な原因が事業主の共同連帯という雇用保険二事業で対応すべき範疇を上回るものであることから、一般財源により確保することが必要である。

以上