Policy(提言・報告書) 地域別・国別 アジア・大洋州  訪ミャンマー官民合同ミッション 藤野団長所見

2011年9月17日
於 ヤンゴン

  1. 今回の官民合同ミッションのミャンマー派遣は、民政移管後6か月を迎えたミャンマーの官民首脳と両国間の経済関係の強化の可能性について話し合い、両国経済関係の新たな展望を切り開くことを目的とするものであった。在ヤンゴン日本国大使館はじめ両国官民関係者による周到な準備と参加団員による的確な質疑により、この所期の目的は概ね達成することができた。関係者に対し、改めて謝意を表したい。

  2. ミャンマーは豊富な天然資源と安価で優れた労働力を有しており、約6,000万人の人口を擁することから消費市場としても有望である。また、アジアの東西経済回廊及び南部経済回廊の西端に位置するASEAN連結性の要衝である。これらの同国の発展の潜在力と地理的重要性に着目し、我が国経済界は、大きな関心を寄せてきたところである。特に、アジアの持続的経済成長を達成するための地域経済統合と、これを支えるアジアのハード・ソフトの広域インフラ整備を進める上で、ミャンマーの参画は不可欠である。
    こうした中で、今年3月に民政移管が行われたことから、日ミャンマー協力の可能性が大いに高まった。今回のミッション派遣は大変時宜を得たものであるとして、ミャンマーの官民双方の関係者から大変高い評価を得た。

  3. われわれは、滞在中に、首都ネーピードーにおいて、テー・ウー連邦連帯開発党(USDP)総書記、テイン・テー国境大臣兼産業開発大臣、ウィン・ミン商業大臣、ソー・テイン第一工業兼第二工業大臣、並びにカン・ゾー国家計画・経済開発省副大臣等、政府要人と会談した。
    日本側からの制度の細部にわたる技術的な質問に対し、ミャンマー側は適切に即答し、いくつかの提案については検討すると発言するなど、ミャンマー政府の前向きの回答ぶりが印象的であった。

  4. また、一連の会合を通じ、党・政府の要人から、ミャンマーが民主化とともに、経済開放政策に着手しており、その実現のためスピード感をもって外国投資法をはじめとする各種制度や法制の改正を進めているとの説明を受けた。特に、為替管理の合理化と緩和(為替の一本化や投資企業の外貨建てによる利益送金、等)、投資企業の民間からの借地権取得の規制緩和、自動車購入における規制緩和等を予定しているとの紹介があった。また、関連法案の成立には時間を要するため、早期実現が必要な政策については、大統領令により可及的速やかな実施を図りたいとの説明があった。
    さらに、一層の経済成長を達成して貧困を克服すべく、国内インフラの整備と、農業の工業化(加工食品等)や農業から工業への転換といった産業構造の高度化が必要であるとの認識が示された。
    これに加え、ミャンマー側より、技術と資本が不十分であるため、これを補う上で、技術力が高く、歴史的に関係の深い日本からの投資に対し高い期待が表明された。その一環として、このほど投資委員会(MIC)を設置し、ワンストップオフィスとして機能させるとともに、インセンティブの提供等、柔軟かつ機動的に外資導入上の障害を解消していくとの説明があった。

  5. 我が国がアジアの成長基盤の一角をなすミャンマーの投資拡大の期待に応えるためには、道路、港湾、物流関連、電力等のインフラの整備が前提となる。特に、タイ~ミャンマー間のミッシングリンクを解消し、東西経済回廊、南部経済回廊を完成することが重要である。そのためには、円借款の新規供与を含む我が国の対ミャンマー政策を再検討し、官民連携による同国との協力や近隣諸国との連携の推進を図ることが重要である。

  6. 他方、我が国とミャンマーの経済関係の発展にとって、ミャンマー政府の民主化プロセスの実質的推進と国際社会との連携の強化は必要不可欠なものである。今回、ミャンマー側より、「国民の支持の上に発足した現在の内閣は、国民が必要とするものを把握し、その提供に努めている」、そして「ミャンマーが発展していくためには、(1)政治の安定、(2)経済力の強化、(3)国民主権の堅持が大切である」との説明があり、意を強くしたところである。

  7. ミャンマーと国際社会の連携強化にとって、現在、同国が名乗りを上げている2014年のASEAN議長国の帰趨は試金石である。
    経団連としては、11月の東アジアサミットの推移を見守るとともに、アジア・大洋州地域委員会企画部会を窓口として、政府と連携してミャンマーとの経済関係のあり方を検討してまいりたい。

以上