Policy(提言・報告書) 科学技術、情報通信、知財政策  日・EUインターネット政策の連携強化に向けて

2012年11月15日
一般社団法人 日本経済団体連合会

社会経済活動において、自由でグローバルな情報流通を促進し、世界経済のさらなる発展に繋げるためには、インターネットにおけるセキュリティの確保について、国際的に協調した取組みが求められる。

そこで今般、日・EUに対し、インターネットの利便性を最大限に活かしながら、さらに効果的なセキュリティ対策を実行していくための建設的な意見交換を期待し、産業界の考え方を申し述べる。

1.自由なインターネット環境の確保

インターネットの自由が経済成長やイノベーション、社会発展への貢献に対して果たす役割は非常に大きい。政府や産業界などがそれぞれの役割を果たすマルチステークホルダーアプローチにより、健全なインターネットガバナンスを推進しつつ、オープンで透明性の高い自由なインターネット環境を確保することが求められる。

2.情報セキュリティへの取り組みに係るベストプラクティスの共有

一方で、自由なインターネットを維持しつつ、インターネットの便益をユーザーが最大限に享受できるようにするためには情報セキュリティ対策が欠かせない。今後、スマートフォンなどの普及により、多様なデバイスが用いられる形で国境をまたがる情報のやり取りやサービスの提供が一層進むことを念頭におき、情報セキュリティ対策において、日・EU間でのベストプラクティスの共有、また、国境を越えた協力体制の整備が必須である。

3.個人データの保護と自由な情報流通の間のバランスの確保

個人データの保護と活用の問題は、各国の歴史・文化の違いや、国民の受け止め方の差異などから、長年にわたり、各国・地域・国際機関などでさまざまな議論が行われている。グローバルなデータ保護ルールの策定にあたっては、(1)透明性、(2)国内外における公平性の担保・調和の確保、(3)実効性、(4)企業活動への過度な抑制・負担を強いないこと、が求められると考える。

膨大な量の情報が容易に国を越えて移転する状況において、個人データ保護の重要性は言うまでもないが、その際、過度の法規制によりユーザーの利便性や企業活動におけるイノベーションを阻害すること、グローバルに活動する企業の経営に過剰な制約を与えることがないよう特に配慮を求めたい。

個人データを取り巻く環境変化を受け、欧州委員会において、新たにデータ保護規則案が提示されたことから、日・EU産業界においても新たな対応が迫られることになる。これを機に、上記4つの観点から、個人データなどの取り扱いについては、社会環境に応じた国際的な枠組みの検討が必要である。日・EUに対しては、それぞれの産業界の意見を聞きつつ、個人データ保護と自由な情報流通との間で、適切なバランスを維持できる政策の立案・実行を期待する。

4.越境サイバー攻撃に関する国際的な協力体制の整備

企業は、営業上の機密情報や先進研究情報をあらゆる攻撃から確実に守るべく取り組んでいるが、越境サイバー攻撃に対し、日・EUそれぞれの独立した法的枠組みによって対策を講じることは困難である。日・EUが情報セキュリティと自由な情報流通の間のバランスを確保していくなかで、このための対策に係る連携を一層強化し、攻撃組織や攻撃方法等のデータベースの作成・共有化、共同演習などにより、官民参加型の情報共有体制を構築し、情報セキュリティの高度化を図ることが求められる。

また、営業上の機密情報や先進研究情報のほかに、特に越境サイバー攻撃から守るべき分野としては、「情報通信」「金融」「航空」「鉄道」「電力」「ガス」「政府・行政サービス(地方公共団体を含む)」「医療」「水道」及び「物流」の重要インフラ分野が考えられる。

日・EUは、これらの分野を含め、既存の法的枠組みでの対応可否やサイバー攻撃に関する研究・人材育成の強化政策課題に関し、より実践的な対話の場を通じて詳細に検討し、国際的な協力体制のあり方について検討を進めることが必要である。

5.日・EUの定期的な意見交換

最後に、インターネットエコノミーを健全に発展させ、世界経済をさらなる成長へと導くには、オープンデータ政策の推進による新ビジネスの創出や、情報通信政策の立案・遂行に係る積極的な連携を図ることが重要である。

日・EUには、それぞれの産業界を含め、定期的に、建設的な意見交換を行うことで、協力体制を強化していくことを求める。

日・EUによる率先的な取り組みが、将来的に多国間での取り組みに繋がることを期待する。

以上