Policy(提言・報告書) 税、会計、経済法制、金融制度  平成26年度税制改正に関する提言

2013年9月9日
一般社団法人 日本経済団体連合会

I.はじめに

昨年の政権交代以降、景気は着実に回復している。安倍内閣が進める大胆な金融政策、機動的な財政政策が功を奏しており、消費は底堅く、過度な円高の是正による輸出環境の改善などを背景に生産も持ち直している。先行きについても、海外経済の下振れリスク等には引き続き注意が必要であるものの、回復に向けた動きはさらに加速していくと期待される。

しかし、痛みを伴う構造改革はこれからが本番である。わが国は依然として取り組むべき構造的な課題、リスク要因を抱えている。財政状況は、平成25年度末に国・地方をあわせた政府の長期債務残高が約977兆円、GDPの200%に達する見込みであるなど、深刻さを増している。また、本格的な少子高齢化・人口減少社会が到来する中で、社会保障制度の持続可能性に対する信頼が揺らいでいる。

さらに、デフレ脱却・経済の再生に向けたわが国の取り組みの真価が問われている。長らく指摘されてきた6重苦のうち、超円高は大きく是正された。他方、経済連携や環境・労働分野における規制緩和については、改善に向けた動きが見られるものの、依然として予断を許されない。さらに、重い法人の税負担や社会保険料負担の増加、エネルギー・コストの高止まりについては、現在も改善の目途が立っていない。

こうした中、先の参院選で与党が勝利を収め、ねじれ国会が解消した。今後、長期安定政権のもとで、政府・与党が課題の解決に迅速に取り組むことを強く期待している。重要なことは、改革をパッケージで推進することである。歳出入改革、給付の重点化・効率化をはじめとする社会保障制度改革、日本再興戦略(成長戦略)の着実な実施とさらなる深掘りを一体的に行うべきである。このうち、税制については、成熟社会に対応した税体系を構築すべく消費税率の円滑かつ着実な引き上げを行うとともに、成長力を高めるため法人課税の改革を行うことが何よりも重要である。

経済界としても、自らが経済成長のエンジンであるとの気概を新たに、新事業の創生を含め、経済の活性化、国内における投資や雇用の維持・拡大に向けて、積極的に取り組んでいく。

政府は、消費税率の引き上げに係る判断を近々、行う予定としている。また、政府・与党は、景気を下支えし、成長戦略に即して投資を促進する観点から、投資減税等の具体化を進めている。年末には、地方法人課税、自動車関係諸税、国際課税などを含む平成26年度税制改正の議論が行われる。

経団連は、本年5月に「地方法人課税のあり方」、7月に「日本再興戦略に基づく税制措置に関する提言」を公表し、法人実効税率のさらなる引き下げに向けた道筋の明確化、利便性の高い投資減税等の実現を主張してきた。以下では、その後の状況変化を踏まえつつ、当面取り組むべき課題、また、平成26年度税制改正で措置すべき事項について、提言を行うこととする。

II.消費税率の円滑かつ着実な引き上げ

財政の健全化、持続可能な社会保障制度の確立、成長基盤の創出のためには、消費税率の引き上げが不可欠である。税率の引上げは既に法定されており、あとは最終的な判断を行うのみである。

消費税法改正法の附則では、経済状況等を総合的に勘案するとされているが、最近の種々の経済指標は、わが国の着実な景気回復を裏付ける内容となっている。本年4-6月期の実質GDP成長率は年率換算で3.8%となっており、設備投資もプラスに転じた。完全失業率もリーマン・ショック前の水準である3%台まで低下している。来年4月に予定通り消費税率を8%まで引き上げる環境は整ったと考えられる。

現に金融市場は消費税率引き上げを織り込み済みであり、仮に消費税率の引き上げの延期、引き上げ幅の縮小などを行うならば、わが国財政に対する国内外の市場からの信認が失われ、金融システムが混乱に陥るおそれがある。また、消費者や事業者も、すでに消費税率が予定通り引き上げられることを前提に取引を行っていることから、実体経済にも少なからず混乱が生じる。消費税率を1%ずつ引き上げるとの案では転嫁が困難との指摘もある。こうしたリスクが顕在化すれば、金融と実体経済の負のスパイラルから、国民生活に急速かつ深刻な影響が及ぶ。スケジュール通りに消費税率を粛々と引き上げる以外の選択はあり得ず、政府は、早期に消費税率8%への引き上げを決断すべきである。また、その後も、10%への引き上げを確実に行うべきである。

消費税率の引き上げに伴い予測される短期的な景気の落ち込みに対しては、実効性のある投資減税を導入するとともに、必要に応じ財政政策によって適切なタイミングで需要を喚起することなどが考えられる。

持続的な経済成長のためには、研究開発税制の拡充や自動車関係諸税の簡素化・負担軽減も極めて効果が大きい。

なお、現在、与党では、消費税率の引き上げに伴う低所得者対策として、複数税率の導入が検討されているが、少なくとも消費税率が10%の段階までは単一税率を維持すべきである。複数税率は、消費者にとって税負担が軽減されていることが実感しやすいという面があるが、大幅な税収の減少を招く。消費税率の引上げは今回の社会保障・税一体改革の大前提である。軽減税率の導入はこれを覆すものと言わざるを得ない。一方で、税収を補うために標準税率をさらに高くすることは、国民の理解を得られない。

軽減税率については、この他にも、対象品目の線引きが困難であり、課税の中立性が損なわれること、高額所得者にも軽減税率の恩恵が及ぶこと、徴税側・納税側の事務負担が増加すること等の問題が指摘されている。

低所得者対策としては、社会保障・税一体改革による給付と負担の全体像を踏まえつつ、消費税率8%の段階から当面の間は、消費税導入時および引き上げ時の事例も参考に、簡素な給付措置の実施を検討すべきである。また、番号制度の本格的な稼働後においては、給付付き税額控除も1つの選択肢として検討すべきである。

消費税の適正転嫁は当然であり、転嫁対策法やガイドライン等を踏まえ、経済界として適切に対応していく。

III.成長戦略に基づく税制措置の具体化

成長戦略に基づく税制措置については、政府・与党において詰めの議論が行われているが、投資の促進という政策目的に照らし、真に効果的なものとなるよう制度設計を行う必要がある。

1.投資減税等

投資減税については、特定の法律に基づく認定等の要件を付すことなく、使い勝手のよい簡素な仕組みとする必要があり、競争力の強化に向けた新製品・高付加価値製品の製造、生産能力の増強、生産の効率化、省エネ、耐震化(津波対策を含む)等に係る投資については幅広く特例の適用を認めるべきである。

対象設備については、製造業・非製造業を含め、日本全体で投資を拡大する観点から、機械・装置のみならず、構築物、器具備品、ソフトウェア、建物等も対象とすべきである。

措置内容については、大法人、中小法人を問わず、特別償却(即時償却を含む)に加え、税額控除の選択適用を認めるべきである。また、欠損金額のうち除却損からなる部分の金額については大法人にも繰戻還付を認める等の措置を講じるべきである。

これらの措置は、集中投資促進期間にかかわらず最低5年の措置とすべきである。また、切れ目なく投資を喚起していくためには、成長戦略の実行初年度である平成25年度から特例の適用が受けられるようにすべきである。

既存の生産等設備投資促進税制について検証を行い、減価償却費超過要件や投資増加要件(対前年度で10%超)の改善を図ることも重要である。

また、事業再編の円滑化や起業促進のため、産業競争力強化法案とあわせ、法人税や登録免許税等について所要の措置を講ずるべきである。

2.償却資産に係る固定資産税の抜本的な見直し

償却資産に係る固定資産税は、政府が進める投資促進政策に従って国内投資を行おうとする企業に追加的なコストを負わせるもので、企業の設備投資意欲を低下させ、ひいては雇用の増加を阻害することが懸念される。これは政府の政策に逆行していると言わざるを得ない。また、特定の設備型産業に負担が偏重しているため、課税の公平性の観点からも問題が大きい。

さらに、国際的に稀な課税である。特に機械装置への課税はわが国製造業が競合するアジア近隣諸国において例がない。米国の各州においても、もとより製造業が立地する五大湖周辺では償却資産課税は稀であったが、競争力強化の観点から、近年、その他の地域も含め、償却資産課税はさらに縮減の傾向にある。

したがって、償却資産に係る固定資産税については、廃止を含め抜本的な見直しを行うべきである。まずは恒久措置として残存価額を廃止する他、今回の投資減税で法人税の特例を受けた資産については固定資産税を免除すべきである。また、金型など耐用年数の短い資産は課税対象から除外すべきである。地方税収の減少に対しては国が補填することが考えられる。

3.研究開発税制の維持・拡充

研究開発投資はわが国企業の競争力・成長力の源泉であるが、不確実性が高く、事業化までに長期間を要するハイリスク投資である。また、研究開発拠点は製造拠点と一体となって国内における雇用を支えている。研究開発税制は、投資と雇用確保の両面から極めて重要である。

成長戦略は、民間の研究開発投資を今後3年以内に対GDP 比で世界第1位に復活させるとしているが、この目標を達成するためには、現行の研究開発税制の「活用促進」では到底十分とは言えない。諸外国とのイコール・フッティングも踏まえたさらなる拡充が不可欠である。

また、研究開発税制の頻繁な変更は、企業の国内における長期にわたる研究開発投資の計画立案および実行を阻害する。制度の安定的な運営が求められる。

かかる観点から、以下に掲げる措置を講じた上で、総額型の税額控除限度額の時限的引き上げ措置(法人税額の20%から30%)も含め、制度全体を本則化・恒久化すべきである。

  1. (1) 増加型・高水準型の維持・拡充
    研究開発税制の増加型は試験研究費の増加、高水準型はすでに高水準にある試験研究費の維持に対するインセンティブであり、それぞれ研究開発投資を促進する上で合理的な政策目的を有する。双方とも本年度に適用期限を迎えるが、維持・拡充すべきである。少なくとも、制度改正によって増税影響が生じないよう配慮することが不可欠である。

  2. (2) 総額型の税額控除限度超過額の繰越期間の延長及び繰越控除要件の廃止
    現在、総額型の税額控除限度超過額の繰越期間は1年に過ぎず、諸外国に比べ大きく劣後している。さらに、損金に算入される試験研究費の額が前事業年度よりも増加していることが繰越控除の要件となっている。景気変動により控除対象法人税額が減少した場合にはやむを得ず繰越控除を行うほかない中で、制度の活用メリットを高め、中長期的な研究開発投資活動を支援する観点から、繰越期間を5年に延長するとともに、繰越控除要件を廃止すべきである。

なお、公益法人改革に伴い、公益社団・財団法人の有する学術研究用資産については固定資産税の非課税措置が継続される一方で、旧公益法人から移行した一般社団・財団法人については平成20年度与党税制改正大綱において「平成25年度までの間にできるだけ速やかに必要な検討を行い、適切な措置を講じる」とされたものの、未だに対応策は講じられておらず、非課税措置は平成25年度までの時限措置となっている。

一般社団・財団法人、とりわけ非営利型の一般財団法人は、基礎段階にある先端的研究、環境保全・安全性確保のための研究、規格・標準化に係る研究、中小企業の国際展開などの分野で着実な成果を上げており、その果たす役割は公益社団・財団法人に劣後するものではない。旧公益法人から移行した一般社団・財団法人の学術研究用資産に係る固定資産税非課税措置は、平成26年度以降も継続すべきである。

IV.平成26年度税制改正に関する提言

平成26年度税制改正では、成長戦略に基づく税制措置とあわせ、経済の活性化、国内における投資や雇用の維持・拡大に資する税制を整備するとともに、経済のグローバル化に対応した国際課税制度を構築することが不可欠である。

とりわけ法人課税については、諸外国との競争条件のイコール・フッティングを実現することが急務であり、法人実効税率の引き下げやパテントボックスの創設など、成長戦略の深掘りが求められる。

1.経済の活性化、国内における投資や雇用の維持・拡大に向けた税制措置

(1) 法人実効税率の引き下げに向けた道筋の明確化

  1. 法人実効税率の引き下げの必要性
    短期的な政策税制に留まらない法人課税の改革は、今後の税制改革における最重要課題である。とりわけ、法人実効税率の引き下げは、わが国の立地競争力を強化し、国内における生産・開発拠点等を維持するとともに、内外の企業による投資を促進する上で、避けて通ることのできない改革の本丸である。
    経済活動の主体は国民と企業であり、雇用の主体は企業である。企業の成長、新産業の台頭なくして雇用の増加はなく、消費も拡大しない。現在、法人実効税率については、復興特別法人税の課税期間が終了する平成27年度以降の検討課題とされているが、遅きに失すると言わざるを得ない。この間も諸外国は税率の引き下げを行っており、日本との差は拡大する一方である。法人実効税率を最終的にはアジア近隣諸国並みの約25%まで引き下げるべく、道筋を示すための議論を早期に開始すべきである。
    法人実効税率の引き下げを巡っては、いくつか批判的な見解が存在する。欠損法人割合が7割のため税率引き下げの効果は限定的との意見、減税をしても内部留保が積み上がるだけであるとの批判、国際競争にさらされているのは製造業等の一部業種に過ぎず、一律減税には意味がないといった主張である。
    しかし、これらはいずれも的を射た指摘とは言えない。
    欠損法人が永久に欠損状態であるということはあり得ない。法人実効税率の引き下げは、利益計上法人の税引後当期純利益を増大させ、新たな投資や雇用を生み出すということのみならず、欠損法人から利益計上法人へと復帰した企業を強力に後押しするという効果もある。また、創業期にある企業のキャッシュ・フローの改善による開業率の向上や海外からの直接投資の増加を通じた雇用の創出と産業構造変革の推進という効果も忘れてはならない。日本はこの面で諸外国に大きく見劣りしており、改善が急務である。
    内部留保については、まず、議論の前提として、余剰資金を意味しないということを認識すべきである。内部留保は、会計上、利益剰余金を指すことになるが、これらは貸借対照表において現金預金のみならず、機械・設備などにも対応している。すなわち、企業は内部留保を源泉として広く事業用資産への投資を行っている。企業が保有する現金預金がマクロで増加していることは事実であるが、その要因としては、第1に需給ギャップの存在により企業の設備投資意欲が低下していたこと、第2に先行き不安によるリスク回避傾向があったと考えられる。ただし、これらも安倍政権が進める経済政策とあいまって、解消の傾向にあると考えられる。
    さらに、法人実効税率の引き下げによるメリットを享受するのは、製造業に留まらない。いまや非製造業を含め、熾烈な国際競争が行われている。法人実効税率の引き下げについては、改めて大所高所に立った議論を行う必要がある。

  2. 地方法人所得課税の改革
    法人実効税率の問題に具体的に取り組む際には、まず、税制の抜本的な改革において偏在性の小さい地方税体系の構築が行われるまでの間の暫定措置として平成20年度税制改正で創設された地方法人特別税の問題を解決しなければならない。
    消費税法改正法が成立したことで、今後、地域による偏在性の少ない地方消費税が拡充され、また、国税の消費税に係る地方交付税も増加することになる。平成20年度税制改正において想定していた「税制の抜本的な改革」は、今回の改革において実現しつつあると言ってよい。地方法人特別税については、遅くとも消費税率の10%への引き上げ時までに廃止すべく、平成26年度税制改正で成案を得る必要がある。
    なお、地方法人特別税は、消費税率引き上げまでの暫定措置という経緯からして単純廃止すべきものだが、それが困難である場合は、地方法人所得課税において税源の偏在が指摘されていることを踏まえ、まずは地方法人特別税、法人事業税及び法人住民税の全部又は一部、とりわけ所得に対する課税部分を国税の法人税に統合することが考えられる。そして、法人税として国が一括して徴収した額については、その配分において、地方交付税の不交付団体に対する一定の配慮を行いつつ、各自治体の産業誘致など独自の努力の成果が反映される仕組みを地方が主体的に構築することが考えられる。その後、法人所得課税については、国家の成長戦略として国際的な水準へと段階的に縮減すべきである。
    地方法人特別税に替えて、法人事業税における外形標準課税を拡充することについては極めて慎重に検討すべきである。

(2) 地方法人課税

法人所得課税、償却資産に係る固定資産税以外にも、地方法人課税においては改善すべき課題が残されていることから、早期に是正すべきである。

  1. 事業所税の見直し
    事業所税は、従業者割は法人事業税付加価値割と同様、給与課税となっており、雇用の促進に逆行している。また、資産割は固定資産税および都市計画税との二重課税である。他の税目と整理・統合するなどした上で、速やかに廃止すべきである。

  2. 申告・納付事務の簡素化
    地方法人課税は、税目やその課税ベースが多様である上に、申告書類が多く、計算が複雑であり、また、税率の異なる都道府県、市町村ごとに申告・納付を要することから、法人、特に全国に展開している法人にとっては、納税に係る事務負担が大きい。税制の簡素化の観点から、地方法人課税の負担軽減とあわせ、速やかに以下の見直しを行うべきである。

    1. 計算の簡素化(とりわけ法人事業税付加価値割、事業所税におけるみなし共同事業の判定)および申告書類の削減
    2. 申告の電子化の徹底(全地方自治体のeL-Taxへの加入)、フォーマットの統一、自治体ごとの税率の一覧性向上 等

    また、番号制度の稼働とあわせ、本店が所在する都道府県等への地方税の一括納付を可能とするシステム等についても、導入を検討すべきである。

(3) パテントボックスの導入

現行のわが国の研究開発税制は研究開発段階の投資活動に着目した制度設計となっているが、その成果物である知的財産権等の無形資産を国内に保有し、商業化するインセンティブは乏しい。一方で、欧州諸国においては近年、知的財産権に起因する所得(ロイヤリティ、知的財産権の譲渡益、知的財産権を利用して製造した商品の販売益で一定のもの)について低税率または所得控除を適用する、パテントボックスを相次いで導入している。英国も本年から適用を開始している。

こうした中で、わが国が現状を放置するならば、日本企業の研究開発拠点、あるいは企業の超過収益力の源泉である無形資産が当該制度の導入国に移転しかねない。わが国の研究開発拠点としての立地競争力を維持・強化するためにも、欧州諸国ですでに導入されている当該制度の創設を急ぐべきである。

(4) 自動車関係諸税の簡素化・負担軽減

自動車関係諸税は、欧米諸国と比べ極めて過重な負担が課されてきた。特に、道路整備目的で創設された自動車取得税と自動車重量税は、道路特定財源が平成21年度に一般財源化された時点で既に課税根拠を喪失しており、さらに自動車取得税は消費税と、自動車重量税は自動車税との二重課税となっている。

こうした中、仮に自動車関係諸税の改革を行わないまま消費税率が引き上げられれば、国内販売に致命的な打撃がもたらされ、裾野の広い自動車関連産業の国内における生産や雇用の維持が困難となる。

自動車関係諸税については簡素化、自動車ユーザーの負担軽減、グリーン化の観点から、自動車重量税など保有課税の廃止・抜本的な見直しを行うべきである。また、消費税率10%時点において自動車取得税を確実に廃止し、消費税率8%段階では、自動車取得税を3%引き下げるとともに、エコカー減税を拡充すべきである。自動車取得税の廃止財源として他の自動車関係諸税の増税を行うことは容認できない。

あわせて、自動車税のグリーン化特例につき、延長・拡充を行うべきである。

(5) 石油関係諸税の負担軽減

消費税と石油関係諸税(揮発油税、地方揮発油税)の関係はTax on Taxとなっており、早期に解消する必要がある。そもそも石油関係諸税は、自動車関係諸税と同様、平成21年度に一般財源化された時点で課税根拠を喪失しており、負担の軽減が不可欠である。少なくとも「当分の間税率」を廃止すべきである。

また、国際的なイコール・フッティングの観点から、製油所内で発生する非製品ガスに係る石油石炭税の還付制度を創設すべきである。

(6) 地球温暖化対策のための税の見直し

現在わが国では、原子力発電所の稼働停止を受けた化石燃料輸入の増加、円高修正、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の開始などを受け、エネルギー価格が上昇傾向にあり、今後ますます上昇することが懸念されている。平成24年10月から導入されている地球温暖化対策のための税は、これに拍車をかけており、来年4月に二段階目の引き上げが行われれば、回復基調にある我が国経済の足かせとなるおそれがある。

また、東日本大震災後の状況変化により、当初の見積もりを超える税収がある一方、徴収されたまま一般会計に留保され温暖化対策に活用されていない税収や、エネルギー特別会計に繰り入れられても使用されず、翌年に繰り越されている税収もある。

そもそも地球温暖化の防止を経済成長と両立させつつ実現するための鍵は技術である。しかし、地球温暖化対策のための税は、逆に技術開発の原資を奪うばかりか、エネルギー効率が相対的に低い他国へ生産を移転させ、地球全体では却って温暖化を助長し、国内産業の空洞化につながる懸念がある。

地球温暖化対策のための税は、課税の廃止を含め、抜本的に見直すべきである。少なくとも平成26年4月に予定されている二段階目の税率引き上げは凍結すべきである。

(7) 住宅・都市・土地税制

  1. 各種特例措置の延長・拡充等
    住宅投資は内需の柱として経済や雇用に対して極めて大きな波及効果を有する。また、わが国が持続的な成長を遂げるには、民間のノウハウや資金を活用し、土地や建物の有効利用、流動化を図りつつ、都市・地域を活性化させることが不可欠である。かかる観点から、以下の税制措置を講じるべきである。

    1. 新築された住宅に対する固定資産税の減額措置の延長
    2. 住宅及び土地の取得に対する不動産取得税の課税に関する特例の延長
    3. 認定長期優良住宅等に対する課税の特例の延長
    4. 居住用財産の買換え特例、譲渡損失の繰越控除等の延長
    5. マンション建替えに係る特例の延長・拡充
    6. 住宅取得等資金の贈与に係る特例の拡充
    7. PFI等民間活力の活用促進に資する税制の拡充

    また、国家戦略特区について、所要の税制措置を検討すべきである。

  2. 地価税、法人の土地譲渡益重課制度、特別土地保有税の廃止
    土地バブルの抑制という政策目的が失われていることから、課税が停止されている地価税および法人の土地譲渡益重課制度、特別土地保有税(徴収猶予中の税を含む)を速やかに廃止すべきである。本制度の廃止は、事業者の予見可能性を向上させ、不動産取引の活性化につながる。

(8) 印紙税の廃止

近年、インターネット電子商取引が一般化し、経済取引のペーパーレス化が著しく進展する中、紙を媒体とした文書のみに課税する印紙税は合理性が失われている。平成25年度税制改正において、不動産譲渡契約書、建設工事請負契約書に係る印紙税の軽減措置の延長・拡充、受取書に係る免税点の引き上げが行われたが、十分とは言えない。印紙税は遅くとも消費税率の10%への引き上げ時点で廃止すべきである。

(9) 原料用途免税の本則非課税化

ナフサに係る石油石炭税の免税・還付措置、鉄鋼・コークス・セメント製造に係る石油石炭税の免税措置については「当分の間」とされているが、企業が事業計画を立案する際、依然として不確定要因が存在するという点で、現行制度は十分とは言えない。そもそも諸外国ではこれら原料に課税している例はなく、国際的なイコール・フッティングを実現するためにも、一段の対応を行う必要がある。ナフサに係る揮発油税も含め、原料用途免税を本則非課税化すべきである。

(10) 年金税制の改善

公的年金の給付水準は今後、低下が避けられず、自助努力により老後の所得を確保する必要性が高まっている。また、厚生年金基金制度の改正も予定されている。年金税制の改善を通じ、企業年金制度を一層、普及・拡充させる必要がある。

かかる観点から、退職年金等の積立金に係る特別法人税については、平成25年度末で課税の凍結期限を迎えるが、課税の再開などあってはならず、速やかに廃止すべきである。

確定拠出年金については、拠出限度額の制約等が各企業の実情に応じた多様な制度設計を困難にしており、拠出限度額の大幅な引き上げ、拠出限度額内でのマッチング拠出の完全自由化、退職一時金からの資産移管方法の弾力化を図るべきである。さらに、公務員などへの加入対象者の拡大、資産の中途引き出し要件の緩和等を図り、国民の間でより幅広く活用される確定拠出年金に改善すべきである。

確定給付企業年金については、各企業年金の財政の健全性を早期に高める観点から、一括償却の容認等、過去勤務債務の償却方法の弾力化を行うべきである。

(11) 金融証券税制

金融所得課税については、平成25年度税制改正で損益通算範囲が上場株式等から公社債等まで拡大されることになった。今後も、高齢化社会における金融資産の効率的な運用、金融資本市場の活性化、企業の円滑な資金調達等の観点から、実務面の課題に十分配慮しつつ、さらなる一元化を推進すべきである。

NISA(日本版少額投資非課税制度 ISA:Individual Savings Accounts)については、平成26年から施行が予定されているが、非課税口座開設の柔軟化を行うなど、個人投資家の利便性をさらに高めるべきである。

個人投資家が受け取る配当については、法人・個人間における二重課税の調整を図る必要がある。

(12) その他

  1. 欠損金の繰越期間の延長および繰戻還付の復活
    平成24年度から、大法人につき欠損金の繰越控除が当期所得の80%に制限され、あわせて、繰越期間が7年から9年へと延長されたが、依然として諸外国に大きく劣後している欠損金の繰越期間を大幅に延長すべきである。
    一方、欠損金の繰戻還付については、法人税法に規定されながら、中小企業を除き、財源措置として停止されている。早期に復活させるべきである。

  2. 受取配当の益金不算入割合の引き上げ
    受取配当金への課税は、法人段階で課税済みの所得の分配に対する課税である。二重課税排除の観点から、法人の受取配当金における益金不算入割合を引き上げるとともに、負債利子控除を廃止すべきである。

  3. LLCに係る検討
    事業再編の円滑化の観点から、成長戦略に基づく税制措置に加え、日本版LLC、すなわち法人格を有し経済主体としての確固たる地位を備える一方、税制上は事業体として法人課税を受けることなく、直接その出資者段階でのみ課税(パス・スルー課税)が行なわれるという仕組みについて、幅広く検討すべきである。

  4. 連結納税および組織再編税制に係る検討
    連結納税については平成22年度税制改正で連結子法人の欠損金額の持ち込み制限の緩和が行われたが、さらなる利便性の向上を検討すべきである。例えば、連結納税を適用している法人が事業再編対象会社の株式を100%保有すると、その対象会社は強制的に連結納税に加入となり、原則として時価評価課税が行われるため、円滑な事業再編のハードルとなる場合がある。租税回避的な再編とは言えないなど一定の要件を満たす場合には、時価評価の適用除外とするなどの措置を講ずることが考えられる。
    また、企業の組織再編成を活発化させる観点から、税制適格要件のあり方について不断の検証を行うとともに、必要な見直しを検討すべきである。

  5. 完全子法人株式等に係る配当について源泉徴収の廃止
    100%グループ会社間の資金の移動をより円滑化し、また、企業の資金運用の効率化を図るため、全額益金不算入である完全子法人株式等に係る配当については、源泉徴収を廃止すべきである。

  6. 減価償却制度における損金経理要件の撤廃
    わが国法人税制は、これまで企業会計と密接に関係してきた。今後の会計制度の動向が課税ベースの拡大等、わが国法人税における課税所得計算に大きな影響を及ぼさないよう、例えば減価償却制度における損金経理要件の撤廃等、税制上の対応を図る必要がある。

  7. 特定の事業用資産の買換え特例の延長
    企業の円滑な事業再編等の観点から、特定資産の買換えに係る譲渡益の一定割合を繰り延べる本特例措置を延長すべきである。

  8. 海外投資等損失準備金の延長
    国際的な資源獲得競争が激化する中、資源・エネルギーの安定供給に向けたわが国企業による探鉱開発の促進の観点から、海外投資等損失準備金を延長すべきである。

  9. 当初申告要件の見直し
    平成23年12月改正により、控除可能な金額が当初申告の際に記載された金額に限定される「控除額の制限」がある措置について、修正申告又は更正の請求により正当額まで控除額を増額させることができることになった。しかし、課税庁による増額更正の場合は控除額を増額することができず、バランスを欠いている。増額更正の場合も控除額の増額を認めるべきである。

  10. 特定同族会社の留保金課税の廃止
    企業の経営戦略における自己資本の充実の観点から、特定同族会社の留保金課税は廃止すべきである。

  11. 交際費課税の緩和の検討
    消費の拡大、景気の下支えの観点から、交際費課税についてさらなる緩和を検討すべきである。

  12. 航空機燃料税の廃止・縮減
    航空機燃料税は、平成23年度税制改正で3年間の軽減措置が実現されたが、世界的にみて極めて稀な課税であり、オープンスカイにより激化する国際競争に必要なイコール・フッティングの阻害要因となっている。また、空港整備の財源として創設されたが、大規模な空港整備が終了した現在、その役割を終えている。平成26年度税制改正では適用期限が到来するため軽減措置を維持することが不可欠である。さらに今後は廃止もしくは大幅な縮減に向けた検討を行うべきである。

  13. 消費税の仕入税額控除制度の見直し
    消費税の仕入税額控除に係るいわゆる95%ルールが課税売上高5億円超の事業者において廃止されたことを受け、多大なコンプライアンス・コストが生じている。制度のあり方について、改めて検討を行う必要がある。例えば、仕入税額控除が全額可能となる課税売上割合を95%超の一定割合で再設定することが考えられる。少なくとも現行制度における事務負担を軽減するため、控除対象外消費税額等について損金経理要件を廃止する等、柔軟な対応を認めるべきである。
    また、仕入税額控除ができない非課税取引については、消費税率の引き上げに伴い、転嫁の難しさにより事業者の負担が拡大するとともに、業務の内製化を志向させる税の中立性の課題(セルフ・サプライ・バイアス)を拡大させることから、所要の措置を検討すべきである。

  14. 外国人旅行者に係る消費税免税制度の抜本的な見直し
    観光立国の推進は、成長戦略でも掲げられた通り、今後わが国が取り組むべき重要課題の1つである。外国人旅行客の増加および日本での消費拡大を通じて地域経済を活性化し、雇用を創出するため、出国時における購入物品の輸出確認後の返金方式の導入による輸出免税対象品目の拡充(化粧品、医薬品、飲食料品)や、同方式の導入に伴う手続の簡素化によるショッピングの利便性向上など、現行の外国人旅行者に係る消費税免税制度を抜本的に見直すべきである。

2.経済のグローバル化に対応した国際課税制度の整備

(1) BEPS

国際社会でBEPS(Base Erosion And Profit Shifting:税源浸食と利益移転)の問題が議論されている。OECDはこの問題に取り組むため、行動計画を公表し、7月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議で支持を受けた。

OECDが指摘する通り、グローバル化やデジタル化が進展する中で、現行の国際課税制度が経済実態に追いついていない面があるのは事実であり、その意味では、モデル租税条約や移転価格ガイドラインの改定、各国国内法制の整備を図ることは基本的に意義のあることである。わが国経済界としても、OECD非加盟国も含めた、共通の枠組み作りが進展することに期待している。

他方、行動計画は、多国籍企業に対し、関係する全ての政府に必要な税務情報を開示することを求めている。過度なタックス・プランニングとは無縁な企業も含め、一律にこうした義務が課されれば、事務負担が過剰となるばかりか、各国の課税当局がこれらの情報を調整なく自国に有利な方向で利用した場合には、かえって二重課税が発生するおそれもある。また、過度な租税回避防止規定の導入は企業の事業活動を阻害する。わが国企業の競争力の低下につながることのないよう、慎重な議論を行う必要がある。

(2) 租税条約の推進

わが国経済が持続的な成長を遂げるためには、TPPを始めとする経済連携協定を推進し、海外の需要を積極的に取り込んでいく必要があるが、租税条約ネットワークの拡充も重要な課題である。租税条約により国際的な二重課税の排除を行うことは、わが国企業の海外における安心かつ確実な事業展開に欠かせない。また、投資所得に係る源泉地国課税を軽減することは、海外からの資金還流および国内における再投資という好循環の実現に資する。

中国、インド、タイ、インドネシア、ベトナム、ブラジル、ドイツ、ロシア、シンガポール、韓国、マレーシア等との租税条約を改定するとともに、台湾、ミャンマー、チリ、アルゼンチン、ベネズエラ、コロンビア、ナイジェリア等の未締結国・地域との租税条約締結交渉を推進すべきである。その際、移転価格税制に係る対応的調整規定・仲裁規定、親子間配当および貸付金利息に係る源泉徴収の免除規定、使用料に係る源泉徴収の減免規定等を盛り込むことが重要である。サービスPE規定の導入については、源泉地国における課税範囲の拡大につながることから、慎重に対応すべきである。個別の条約では、使用料の定義規定の改善、PE規定の改善等も課題となる。

(3) タックスヘイブン対策税制の改善

  1. トリガー税率の引き下げ
    タックスヘイブン対策税制については平成22年度税制改正でトリガー税率の引き下げ(25%→20%)が行われたが、その後も世界各国で法人実効税率の引き下げが行われており、主要国がトリガー税率に抵触する可能性が再び高まっている。例えば、タイについては既に本年から法人実効税率が20%まで引き下げられており、英国、ベトナムについても2015年、2016年にそれぞれ20%へと引き下げられる見込みとなっている。
    日本企業の海外における正常な事業展開に影響を及ぼさないよう、また、租税負担割合の判定等に係る事務負担を軽減する観点から、現行のトリガー税率を少なくとも18%まで引き下げるべきである。あわせて、現行の適用除外基準についても、必要な見直しを行うべきである。

  2. 海外における組織再編成への対応
    わが国企業が多国籍企業を買収した場合には、機能統合によるシナジー効果の実現、ガバナンス強化等の観点から、買収後、さらに組織再編を実施し、資本関係を整理することが多いが、これら組織再編に係るキャピタルゲインが所在地国で課税されない場合、わが国タックスヘイブン対策税制におけるトリガー税率の計算上、非課税所得として加算され、適用対象となれば、課税対象金額にも算入され、意図せぬ合算課税が生じるおそれがある。このため、当初予定した組織再編を断念し、買収の目的を十分に達成できない事態が生じている。
    わが国企業の国際競争力の低下に繋がることのないよう、要件を満たす海外における組織再編については、英国における制度を参考に、一定期間、合算課税を猶予するなどの措置を講じるべきである。

(4) 帰属主義への移行

現在、政府において、外国法人に対する課税原則を国内法上、総合主義から帰属主義(AOA:Authorized OECD Approach)に改めることが検討されているが、これはOECDモデル租税条約の内容に沿うものであり、また、現行のわが国租税条約との整合性も図られることから、理解できる。

ただし、今回の改正が内国法人に及ぼす影響については、慎重に検討を行う必要がある。例えば、現在、政府では、外国法人についてPE帰属所得を国内源泉所得と位置付けることに対応して、内国法人についても国外PE帰属所得を国外源泉所得と位置付けることが検討されているが、内国法人が、これらの国外PE帰属所得の計算上、外国法人に課せられるものと同様のレベルで、移転価格税制における独立企業間価格等の考え方を取り入れつつ、精緻に内部取引の認識・測定、無償資本の配賦、文書化等を行わなければならないとするならば、事務負担が過剰となるおそれがある。

内国法人が国外源泉所得を計算するのは、全世界所得課税を前提とした外国税額控除制度においてその限度額を適正に求めるためである。これは、外国法人が課税所得・税額を適正に計算するために国内源泉所得を把握することとは性質・目的が異なるものであり、取り扱いが異なって然るべきである。したがって、費用配賦を含め現行の実務を極力尊重し、AOAの導入に伴う国外源泉所得の定義・計算方法の変更等、外国税額控除制度への影響については必要最小限とした上で、企業の実務に配慮した簡便な計算方法等を幅広く認めるべきである。また、施行に際しては十分な準備期間を設けるべきである。

(5) 国境を越えた役務の提供等に係る消費税

情報通信技術の普及・発展に伴い、デジタルサービスの提供が拡大しているが、国内におけるインターネットを通じたサービスの提供には消費税が課税される一方、国境を越えたインターネットによるサービスの提供には消費税が課税されておらず、国内事業者と国外事業者との間で競争上の不均衡が生じている。この問題は電子書籍の配信等のB to C取引に加え、広告配信サービス等のB to B取引において指摘されており、今後、消費税率が引き上げられると、弊害がさらに拡大する。

競争条件のイコール・フッティングを図る観点から、企業のコンプライアンス・コストに十分配慮しつつ、国境を越えたこれら役務提供等と消費税との関係について検討を行い、平成26年度税制改正において速やかに所要の措置を講じる必要がある。

(6) 移転価格税制の改善

移転価格税制については、国際的な二重課税を排除するため、事前確認制度および相互協議の一層の迅速化、効率化を行うとともに、国外関連者要件について、実際には支配権が及ばない株式保有比率50%の場合を除外し、50%超とする等の見直しを行うべきである。

無形資産の取り扱いについては、現在、OECDにおいて移転価格ガイドラインのディスカッション・ドラフト改定版が公表されるなど、国際的な議論が進められている。納税者の予見可能性を高める観点から、無形資産の定義、帰属等について明確化を行う必要がある一方で、わが国企業の進出先において、実態の伴わないかたちで過度に無形資産が認定され、課税関係が不安定にならないよう、慎重な議論を行う必要がある。

わが国課税庁による国内における移転価格税制の執行については、一層、納税者にとっての透明性、納得性を高めるべきである。

(7) 外国税額控除制度の見直し

外国税額控除制度における繰越限度超過額及び控除余裕枠の繰越期間は3年と短いため、期間の経過により国際的な二重課税が排除されない可能性が依然として残されている。企業の海外活動の制約とならないよう、繰越期間を延長するなど、適切な措置を講じるべきである。

(8) 外国子会社配当益金不算入制度の改善

平成21年度税制改正により外国子会社配当益金不算入制度が創設され、わが国企業が海外で獲得した利益を国内に還流させるための環境整備が行われたが、今後、資金還流をさらに促進するためには、制度の改善を検討すべきである。

例えば、持株割合100%の海外子会社からの配当については、全額益金不算入とすることが考えられる。また、外国企業、特に資源・エネルギー関連企業の株式取得においては、必ずしも益金不算入制度が適用される25%以上の持株割合を満たせない場合がある。一定の要件を満たす株式については、持株要件を緩和することも考えられる。

以上