Policy(提言・報告書) 経済政策、財政・金融、社会保障  平成26年度診療報酬改定に関する要請

平成25年11月15日

厚生労働大臣
 田村 憲久 殿

健康保険組合連合会会長  平井克彦
国民健康保険中央会理事長柴田雅人
全国健康保険協会理事長小林 剛
全日本海員組合組合長大内教正
日本経済団体連合会会長米倉弘昌
日本労働組合総連合会  会長古賀伸明

平成26年度診療報酬改定に関する要請

平成26年度診療報酬改定にあたって、下記のとおり意見をまとめましたので、現下の厳しい国民生活の状況や保険者の財政についてご理解いただき、改定率及び改定の基本方針の策定に適切に反映されるよう、強く要請いたします。

わが国の経済・社会情勢は、アベノミクスに基づく金融緩和政策等により景気が持ち直しつつありますが、賃金が伸び悩むなかで物価が上昇傾向にあるなど、国民生活は依然として厳しい状況にあります。また、過去12年間(平成12年度~24年度)の名目GDPが7%以上減少したのに対し、同時期の国民医療費は約28%も増加するなど、デフレ不況が長引くなかで、急増する医療費負担が国民生活を圧迫し続けてきました。今後はさらなる少子・高齢化の進展により、現役世代を中心に社会保障負担は一層増加するものと予測されます。

こうしたなかで医療保険財政は、高齢者医療制度に対する支援金・納付金の増加等により危機的な状況に陥っており、健保組合は毎年保険料率を引上げているにもかかわらず5年連続の巨額な赤字、また、協会けんぽも大幅に保険料率を引上げて、既に負担は限界にある状況です。さらに、国民健康保険においては、厳しい財政状況が続いており、支援策の強化が余儀なくされています。

一方で、先頃公表された医療経済実態調査をみると、医療機関の経営状況は、病院、診療所、薬局とも安定しており、他産業と比較しても、例えば一般診療所(医療法人・無床)は、業種別の利益率比較で上位にある業種と同等の利益率を計上しています。加えて、開業医を中心に医師の給与は概ね増加傾向にあります。これは、過去3回の改定において、日本経済がデフレ状況に苛まれていたにも関わらず、診療報酬本体がプラス改定されてきたことを如実に表しています。

また、26年度からの消費税率引上げに伴って国民の負担が増加するなかで、さらに診療報酬が引上げられ、国民や事業主の保険料負担が一段と増加することになれば、消費や賃金の伸びを大きく抑制し、足もとの経済再生の動きにブレーキをかける懸念もあります。

従って、26年度の診療報酬改定率をプラスとすることは、国民の理解と納得が得られません。これまで賃金・物価の伸びを上回る改定が行われてきていることや、年間1兆円以上の医療費の自然増があることを踏まえるとともに、現下の賃金・物価の動向、保険者の財政状況、医療機関の経営状況等を考慮して改定するという本来あるべき原則に基づいた対応を行うべきです。

併せて、これまでの改定でしばしば行われてきた薬価・特定保険医療材料改定分(引下げ分)を診療報酬本体の引上げに充当するやり方を取り止め、薬価等改定分は国民に還元する必要があります。このため、診療報酬全体では、マイナス改定とすべきです。

26年度改定にあたっては、限りある財源を効率的かつ効果的に配分することを主眼に、高度急性期から急性期、亜急性期、慢性期に至る病床の役割を明確化したうえで機能に応じた評価を行うとともに、一般病床における長期入院の是正による入院期間の短縮、社会的入院の解消、主治医機能の強化による外来受診の適正化、後発医薬品の使用促進等、全体としての医療費の適正化を図っていくことを基本方針とすべきです。

26年度の診療報酬改定が、医療保険制度の持続性の確保と差し迫る超高齢社会に向けた医療提供体制の構築を指向したものとなることを期待します。