Policy(提言・報告書) 環境、エネルギー  「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案等」への意見

2015年1月9日
経団連環境本部

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現行の固定価格買取制度には不合理があり、過剰な国民負担を発生させている。経済産業省が示した省令等改正案の内容は、不合理解消に向けた措置として概ね評価できるが、さらなる対応が必要である。

[該当箇所]

Ⅰ.新たな出力制御システムに関すること等について
3.遠隔出力制御システムの導入義務付け

[意見]

系統接続容量の計算前提は、供給余剰時の出力制御がきちんと実行できることである。その点、「遠隔制御システム」は重要なシステムである。太陽光等の接続拡大にあたっては、出力抑制の実効性、ハード・ソフトの整備状況を確認しながら、慎重に進めるべきである。

[理由]

遠隔制御システムについて「構築には一定の時間を要する見込み」とも記載されており、これが完成するまでは「電話にて前日までに出力抑制を依頼」することになる。実際に数十万件にも及ぶ再エネ事業者に連絡が取れるのか、連絡が取れたとして実際に出力抑制がなされるのかなど、出力抑制の実効性には疑問が残る。万一、制度が想定する出力抑制に実効性が伴わないまま太陽光等の接続を拡大した場合、系統不安定等の障害が発生する可能性がある。

[該当箇所]

Ⅰ.新たな出力制御システムに関すること等について
6.将来的に系統への接続が可能な枠が増加した場合の対応

[意見]

系統への接続可能枠が増加した場合、系統への接続条件を検討するにあたっては、物理的接続可能量だけでなく、国民負担についても勘案すべきである。
そもそも、接続可能枠があるからといって、再生可能エネルギーによる電力を石炭等の火力などに優先して活用するという給電ルールのもとで、接続可能量いっぱいまで接続する方針で臨むのではなく、現行の給電ルールのもとで、電力会社の接続可能量いっぱいまで接続することにより、どの程度のコストが発生するかを明らかにすべきである。そのうえで、国民負担の抑制と再生可能エネルギー普及のバランスが取れた接続ルール・給電ルールを整備すべきである。

[理由]

再エネ特措法でもエネルギー基本計画でも、再生可能エネルギーの導入拡大と国民負担の抑制が併記されている。それら二つの目的を両立させるため、現行ルールの下で接続可能量いっぱいまで接続することにより生じるコストを明らかにしたうえで、バランスの取れた接続ルール・給電ルールを整備することが重要である。

[該当箇所]

Ⅱ.変更認定に関すること

[意見]

「1.認定発電設備の出力の変更」および「2.太陽電池の基本仕様の変更」とも、2015年2月1日以降に申請される変更だけでなく、それ以前に申請された変更についても適用すべきである。

[理由]

運用改善の目的である「国民負担の適正化」を実現するためには、既に申請がなされたものについても対象とする必要がある。1月31日以前に申請された変更と2月1日以降に申請された変更で差異を設けることは公平性の観点からの問題もある。

[該当箇所]

Ⅲ.太陽光発電の調達価格の適用に関すること
2.平成27年4月1日以降における調達価格の適用等

[意見]

発電コストが最終的に確定する運転開始時の調達価格を適用すべきである。また、決定時期の変更は、2015年4月1日を待つことなく、速やかに実施すべきである。

[理由]

太陽光発電の設備コストが継続的に低下しているなか、調達価格の適用時点を「接続申込時」から「接続契約時」に変更することで、現行よりも発電事業者のコストと調達価格が近接する点は評価できる。しかし、発電事業者の過剰な利益を排し、設備製造事業者等の価格低減努力を調達価格に反映させる観点から、調達価格の決定時期は、設備の仕様やコスト構造が確定する「運転開始時」とすべきである。また、将来における国民負担を可能な限り抑制するため、変更は速やかに実施すべきである。

[該当箇所]

その他(調達価格等算定委員会への要請)

[意見]

2015年度の非住宅用太陽光発電の調達価格算定にあたっては、利潤上乗せ措置を予定どおり廃止するとともに、導入量を考慮した価格算定を実施すべきである。併せて、「発電設備設置・運転費用年報」に記載する土地・設備・工事に関する領収書・契約書の提出を義務化するとともに、年報に記載されたコストデータ・利益データを公開すべきである。また、最も効率の良い発電事業者の発電コストや設備の国際価格等の考慮も必要である。

[理由]

2014年9月以降、再生可能エネルギー発電設備の接続申込みに対し、複数の一般電気事業者による回答保留が生じるに至った背景の一つとして、非住宅用太陽光発電の調達価格が高い水準に設定されてきたため、太陽光発電の供給が急拡大したことがある。利潤のあり方を見直すともにコスト構造の透明化を図ることで、実際のコストを反映した調達価格を設定する必要がある。

[該当箇所]

その他(再生可能エネルギー普及方策の抜本的見直し)

[意見]

現行の固定価格買取制度の運用改善にとどまらず、再生可能エネルギーの普及方策の抜本的見直しを行うべきである。

[理由]

再生可能エネルギー普及方策としての現行固定価格買取制度には様々な不合理が含まれており、無用な国民負担を生じているため、再生可能エネルギー普及方策の可及的速やかな抜本的直しが必要である。

以上