Policy(提言・報告書) 総合政策  新内閣に望む -Society 5.0 for SDGsに向けて-

2018年10月3日
一般社団法人 日本経済団体連合会

経済界はデジタル革新の波を捉え、生産性向上、企業収益拡大に一層注力し、経済の好循環を力強く回していく。新内閣には、日本経済を次なる成長のステージに引き上げるべく、以下要望する。

第一は、Society 5.0を中核とする成長戦略の強化である。最新のデジタル技術を活用しながら社会課題を解決し、価値を創造する社会を目指して、「未来投資戦略2018」の着実な実行、より一層の進化を加速して頂きたい。これを通じて、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成を図り、グローバルな社会課題の解決に官民挙げて貢献すべきである。

第二は、構造改革の推進である。まず、2019年10月の消費税率10%への引き上げは、確実に実現すべきである。また、国民的な議論を喚起し、人生100年時代に相応しい雇用・労働市場改革、「新経済・財政再生計画」に沿った社会保障の持続可能性確保や財政健全化に真正面から取組むべきである。同時に規制改革、税制改革、地方の行財政改革を通じて「日本を一番ビジネスしやすい国」へと変革し、国内企業の競争力強化はもとより、外資誘致や高度外国人材、一定の専門性/技術を有する外国人材の受入れ促進にも繋げて頂きたい。

第三は、自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化に向けた経済外交の展開である。TPP11を主導し、EUとの EPAに 署名したわが国こそ、保護主義的・市場歪曲的措置の弊害とグローバルなルール形成の必要性を、説得力をもって訴えることができる。両協定の早期発効に加え、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)や日中韓FTAの早期かつ高いレベルでの実現を目指すとともに、WTO改革・現代化を推進すべきである。先般、日米間で交渉開始に合意した物品貿易協定(TAG)については、日米間の貿易・投資の更なる拡大を実現し、ひいては公正なルールに基づく自由で開かれたインド太平洋地域における経済発展に資するものとなることを期待する。

このため、新内閣には、安倍総理の力強いリーダーシップのもと、経済界との連携を図りつつ、下記に掲げる具体的政策課題に果敢に挑戦し、成果を上げて頂きたい。

1.成長戦略の強化

  1. (1) Society 5.0の実現
    1. 分野横断的施策の推進
      ア)イノベーションの促進、イ)イノベーションエコシステムの構築、
      ウ)デジタル技術・データ活用の促進、エ)サイバーセキュリティの強化
    2. 重要分野の検討
      ア)デジタル・ガバメント、イ)物流、ウ)防災、エ)ヘルスケア、
      オ)観光、カ)農業
  2. (2) 労働生産性向上に資する働き方改革の実行と多様な人材の活躍支援
    1. 働き方改革関連法の周知徹底
    2. 女性活躍とダイバーシティ・インクルージョンの推進
    3. 若年社員・高齢社員の活躍支援
    4. 仕事と生活の両立支援
    5. 高度外国人材・一定の専門性/技術を有する外国人材の受け入れ
    6. 人材の育成とキャリア形成の支援
    7. 大学改革の推進
  3. (3) 地方創生
  4. (4) 都市機能の充実
  5. (5) エネルギー・環境政策の構築(エネルギー基本計画の着実な推進、
    パリ協定に基づく長期戦略の策定、適切なプラスチック資源循環戦略の策定)
  6. (6) 消費の喚起

2.構造改革の推進

  1. (1) 財政健全化(2019年10月の消費税率10%への引き上げは、自動車関係諸税
    の抜本改革や住宅にかかる予算・税制上の万全の対策等、総合的な政策
    パッケージを講じた上で、確実に実現)
  2. (2) 社会保障改革
  3. (3) 規制改革
  4. (4) 法人税改革(とりわけ平成31年度税制改正では研究開発税制の拡充等)

3.経済外交の展開

  1. (1) 保護主義的・市場歪曲的な措置への対処(グローバルなルールの形成)
  2. (2) WTO改革・現代化の推進
  3. (3) わが国主要経済パートナーとの関係強化(経済連携の推進等)
  4. (4) 官民連携による質の高いインフラ整備の促進

4.国家的イベントの成功

  1. (1) 東京オリンピック・パラリンピック等
  2. (2) 万国博覧会誘致

5.震災復興の着実な推進と新しい東北の創生、近時の災害を踏まえた
防災・減災・国土強靭化の強力な推進

以上