Policy(提言・報告書) 総合政策  経団連 夏季フォーラム2019 総括文書

2019年7月19日
一般社団法人 日本経済団体連合会
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夏季フォーラム2019では「創造社会“Society 5.0”の実現と激動の国際情勢への対応」を統一テーマとして掲げ、議論を行った。

具体的には、米中関係のリスクを含む内外の政治経済情勢への対応、Society 5.0 for SDGsの実現に向けた取り組み、競争力強化・イノベーション創出に向けた人材育成の方策などについて討議を重ねた。併せて、わが国エネルギーシステムの現状と先行き、地方創生をさらに促進するための施策などについても幅広く検討した。

本フォーラムにおいて、以下のとおり認識を共有した。これらの共通認識を踏まえ、今後、経団連として活動を展開していく。

1.内外経済情勢と今後の対応

国際情勢は急速に変化しており、混迷を極める中において、日本が取るべき方策を見極めることは容易ではない。政府による外交を十分に注視しつつ、経済界の立場からそのあるべき姿を模索し、必要に応じて提言していく。保護主義的な動きに対して、民間経済外交をこれまで以上に推進し、ルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序の構築に向け取り組む。

同時に、日本経済の先行きリスクとして、海外経済の下振れや、消費税率引き上げ後の需要変動などを注視し、必要に応じて対応する。また、国民の将来不安の払拭や企業マインドの改善を促し、個人消費・設備投資の拡大へと繋げていくため、経済構造改革の推進、とりわけ財政再建および給付・負担面を中心とする社会保障制度改革などの取り組みに、経済構造改革会議において注力していく。

2.創造社会“Society 5.0”の実現とそれに向けた人材育成

成長戦略推進の柱となるのがSociety 5.0の実現である。AI、IoT、ブロックチェーンをはじめとする技術革新が急速に進んでいる。これは単なる技術革新にとどまらず、産業や社会のあり方に根源的な変革をもたらそうとしている。革新技術を活用し、多様な人々が創造力を発揮することで、さらに良い方向に創造していく社会がSociety 5.0である。

その実現のためには、イノベーションの一層の加速など、多面的な取り組みが必要であり、その一環として人材育成も重要となる。初等・中等教育から高等教育さらにはリカレント教育を通じて、Society 5.0時代に求められる基礎的リテラシーやチャレンジ精神を身につけていく必要がある。また、個々人の働き方や雇用などのあり方も変革していかなければならない。

今後、新たな成長の柱としてのSociety 5.0 for SDGsを実行フェーズに移すべく、デジタルトランスフォーメーション会議や採用と大学教育の未来に関する産学協議会、関係委員会の連携により、個別分野に関する検討を一層深めていく。

3.エネルギー政策

わが国は資源に乏しい孤立した島国であり、S+3E(安全性+安定供給・経済性・環境性)のもとで、再生可能エネルギー、原子力、化石燃料のベストミックスを実現していくことがエネルギー政策の根幹である。さらに、Society 5.0を見据え、3D(脱炭素、分散化、デジタル化)を目指したイノベーションを推進しながら、インフラの次世代化や各種制度の見直しに取り組み、エネルギーシステムの全体最適を実現すべきである。併せて、わが国の省エネ・低炭素型技術の国際展開を通じ、主体的にSDGsに貢献しながら、日本の経済成長につなげていくことが重要である。

今後、建設的な意見発信により抜本的な改革を促しつつ、成長戦略として、持続可能なエネルギー政策の実現を推進していく。

4.地方創生

わが国が持続可能な成長を遂げていくためには、国土全体の均衡ある発展を目指す必要がある。国内の各地域がそれぞれの特徴を活かしながら地域経済に活力を取り戻し、まち・ひと・しごとの創生との好循環を確立することで真の地方創生を実現する。その第一歩は、企業間あるいは企業と自治体の間での協力を深め、強化することである。

今後、デジタルトランスフォーメーションを踏まえた協業、地域基幹産業の生産性向上、地方創生の担い手づくり、人口減少に対応したまちづくりなどを進める。

以上