Policy(提言・報告書) 経済政策、財政・金融、社会保障  令和4年度診療報酬改定に関する要請

令和3年11月24日

厚生労働大臣  後藤 茂之 殿

健康保険組合連合会会長  宮永 俊一
国民健康保険中央会理事長原  勝則
全国健康保険協会理事長安藤 伸樹
全日本海員組合組合長松浦 満晴
日本経済団体連合会会長十倉 雅和
日本労働組合総連合会  会長芳野 友子

令和4年度診療報酬改定に関する要請

令和4年度診療報酬改定にあたって、下記のとおり医療保険者関係団体の意見を取りまとめたので、政府の決定において適切に反映されるよう、強く要請する。

新型コロナウイルス感染症は、我々の生活・雇用・労働・産業のあらゆる分野に甚大な影響を及ぼした。未知の脅威に対する医療従事者の献身的な活動をはじめ、検査・医薬品・ワクチン等も含めた新型コロナウイルス感染症への対応に関わる方々の尽力に心より敬意を表する。そして何より国民が感染対策の努力を重ねた結果、今秋から新規感染者数や重症者数が落ち着いてきてはいるものの、社会・経済の先行きは依然として不透明である。

一方、令和2年度は一時的に医療費が減少したが、賃金・物価の伸びを医療費の伸びが上回り、医療保険財政を圧迫する構図が長らく続いている。今後も少子高齢化は確実に進み、支え手が減少するなかで、まさに令和4年度から団塊の世代が75歳に到達し始める。コロナ禍においても地域医療構想で想定している人口構造と医療ニーズの変化は止まらない。

国民皆保険制度の長期的な持続可能性を高めつつ、医療提供体制を新興感染症にも強い効率的・効果的な仕組みへ再構築することや、高い水準の自然増を考えれば、令和4年度は診療報酬を引き上げる環境になく、国民の負担軽減につなげるべきであり、配分の見直しに主眼を置いたメリハリのある改定とする必要がある。薬価等については、イノベーションの推進にも配慮しながら、市場実勢価格の低下に伴う公定価格の引き下げ分を、長期的に上昇し続ける負担の抑制のために還元されなければ、国民の理解は得られない。

令和2年度の概算医療費は42.2兆円だった。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う受療行動の変容や感染予防策による呼吸器系疾患等の減少などにより、前年度比▲3.2%で過去最大の減少率となったが、すでに足下では医療費が増加基調に戻りつつある。

昨年2月以降、新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いとして、様々な特例措置が講じられた。また、補助金や交付金を通じて医療機関に対する支援も実施されてきた。

第23回医療経済実態調査の結果、令和2年度における医療機関の経営状況は、令和元年度と比べて、全体として収益が減少した一方で費用が増加し、損益差額が悪化したが、医療法人の病院は黒字を維持し、一般診療所、歯科診療所、保険薬局は依然として高い水準の黒字である。さらに、新型コロナウイルス感染症関連の補助金を含めた場合には、全体として損益差額は令和元年度から改善し、総じて医療機関の経営は安定している。今回追加された単月調査の結果から直近の状況をみると、令和3年6月の損益差額は、新型コロナウイルス感染症関連の補助金を含めず、令和2年6月と比べて概ね改善し、一般診療所の損益差額は令和元年6月を上回った。

こうした状況を踏まえ、改定にあたっては、まずは診療報酬と補助金・交付金の役割分担・効果を検証し、整理することが重要である。

未曾有の経験から、医療機能の分化・強化と連携を推進する必要性が改めて浮き彫りになった。入院では、急性期病床における医療資源の集約と、急性期から回復期、慢性期まで目に見えるかたちでの円滑な連携、外来では、幅広い疾患に対応できるかかりつけ医を起点とした安心で安全な医療の確保や、患者のニーズと技術進歩を踏まえたオンライン診療の推進等が最大の課題である。

限られた医療保険財政のなかで医療の質を高めるためには、総合的な対応が求められる。後発医薬品を患者が安心して使用できる環境のさらなる整備や有効性・安全性を前提に経済性も考慮した処方の推進策を講じつつ、創薬力の強化等のイノベーション推進、医療従事者の働き方改革や処遇改善等について、国を挙げた効果的な取組みを強く要請する。

以上