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Policy(提言・報告書) 総合政策 当面の課題に関する考え方 (2022年1月)

2022年1月11
一般社団法人 日本経済団体連合会

1.日本経済の現状と見通し

日本経済は、このところ持ち直しの動きがみられる。個人消費は、これまで大きく低迷していたサービス消費を含め、回復基調が継続している。輸出や生産も供給制約の緩和に伴い、持ち直しの動きがみられる。

先行きは、行動制限の緩和や政府の経済対策の効果等により、個人消費の持ち直しを中心に、景気回復ペースの加速が期待される。ただし、変異株を含む感染再拡大や海外経済、資源価格の動向等を注視する必要がある。

Withコロナにおける社会経済活動の活性化に向けて、ワクチン接種の加速、治療薬の開発とともに、罹患者の早期治療を可能とする医療提供体制の整備、検査の拡充、ワクチン接種証明書の活用による国内経済の活性化や出入国制限の適切な緩和など、必要な施策を速やかに実現することが求められる。

2.ポストコロナを見据えた成長戦略

新型コロナウイルス感染症は、それ以前から進行していた格差問題や地球環境問題等に象徴されるような株主至上主義の限界を顕在化させた。足元の新型コロナの感染拡大抑制と経済活動の両立のための取り組みと並行して、あらゆるステークホルダーの包摂と協創によるサステイナブルな資本主義の確立を目指した成長戦略に取り組む必要がある。経団連としては、「。新成長戦略」に示したDXによる新たな成長、働き方の変革、地方創生、国際経済秩序の再構築、グリーン成長の実現を5つの柱とする2030年の未来社会像の実現に向けて、今すぐ実行可能なアクションから果敢に実行に移していく。

3.デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速によるSociety 5.0の実現

新型コロナウイルス感染症対策において、DXが極めて有効であることが世界各国で実証されている。行政手続きはもとより、医療、教育、産業等の各分野において徹底した規制改革とデジタル化・データの共有等を進め、強靭な経済社会を構築する。中長期的には、DXにより様々な社会課題を解決し、より人間的で幸福な社会、すなわちSociety 5.0を実現する。このため、DXにより新型コロナウイルス感染症を乗り越え、その先に築くべき新たな社会、Society 5.0を具体的に実現すべく、経団連として全力で取り組んでいく。併せて、2021年9月1日に発足したデジタル庁においても、こうした施策が実行されるよう、政府に働きかける。

4.グリーントランスフォーメーション(GX)に向けたエネルギー・環境政策の推進

2050年カーボンニュートラルに向け、経済と環境の好循環(グリーン成長)を創出し、グリーントランスフォーメーション(GX)を実現する。経団連として、「カーボンニュートラル行動計画」「チャレンジ・ゼロ」等の主体的取り組みを進めるとともに、官民連携・国際連携を図りながら、気候変動対策を推進する。資源価格や電力需給の動向を注視しつつ、脱炭素エネルギーの安価・安定供給を可能とする、高度でレジリエントなエネルギーシステムの構築に取り組む。再生可能エネルギーの主力電源化や安全性が確認された原子力発電所の最大限の活用を通じた電源の脱炭素化、電力投資環境の整備、送配電網の次世代化等を図る。

環境省、経産省と設立した「循環経済パートナーシップ」において、日本企業の循環経済への先進的取組事例を戦略的に発信するとともに、官民対話の開催を通じて、官民連携によるサーキュラーエコノミーの推進に取り組む。

5.働き方改革と人材育成

長期化しているコロナ禍において、雇用調整助成金等の活用が失業予防に寄与しているものの、結果として雇用保険財政のひっ迫を招いている。補正予算により一般会計から労働保険特別会計に2.2兆円が繰り入れられたほか、機動的な国庫繰入と激変緩和措置を講じた保険料率の引上げ等を盛り込んだ雇用保険法の改正案が今次通常国会に上程される見込みである。引き続き、制度の持続可能性と機動的な国庫繰入の実効性の担保を含む雇用保険財政再建に向けた検討を急ぐべきである。

また、働き手のエンゲージメント向上に着目し、働き方改革の深化を促すとともに、イノベーションの源泉となるダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みを加速する。その一環として、場所と時間にとらわれない働き方を推進すべく、テレワークを巡る人事評価・労務管理上の課題について検討するとともに、健康・福祉確保措置の徹底を前提とした裁量労働制の対象拡大等、自律的・主体的な働き方に適した新しい労働時間制度の実現を目指す。

「採用と大学教育の未来に関する産学協議会2020年度報告書」(2021年4月)を受けて、大学等と連携したリカレント教育の拡充、ジョブ型採用につながるインターンシップの試行など、2021年度アクションプランを実行し、産学連携でSociety 5.0を支える人材を育成する。また、学生のキャリア形成支援活動の各類型に対する理解促進などを通じ、新たなインターンシップの実施拡大を目指す。併せて、1月に公表する提言を踏まえ、新しい時代に対応した大学教育の実現に向けて、大学設置基準の見直し等を関係方面に働きかける。

6.春季労使交渉

今次春季労使交渉に向けて、経団連は会員企業等に対し、「2022年版経労委報告」の周知等を通じて、「人への投資」の観点や「成長と分配の好循環」実現への社会的な期待等も考慮しながら、自社の実情に適した対応を行う「賃金決定の大原則」に則って検討し、賃金引上げと総合的な処遇改善に取り組むよう呼びかける。とりわけ、収益が増大した企業には、賃金引上げに向けた積極的な検討を働きかける。

7.地方創生

地方創生に向けて、コロナ禍を機に普及したテレワーク等の新たな働き方の推進による地方への人の流れの創出、観光や農業など地域資源を活かした産業の付加価値創出、DXやGXの推進による魅力ある街づくりなどに取り組む。具体的には、「地域協創アクションプログラム」の10項目の実行に向けて、地方の経済団体、自治体、大学、スポーツ団体など、さまざまな主体との連携を強化し、人を惹きつける地域づくりを推進する。

また、大都市への過度な集中を是正し、わが国全体の強靭性を高める観点から、地方自治体の広域連携の推進に資する行政システムのあり方を検討する。

8.主要国との経済関係

新型コロナウイルス感染症の克服や経済の回復を早期に実現し、政府に自由で開かれた国際経済秩序の再構築ならびにグローバルな諸課題の解決に向け、緊密な国際協調を求めるとともに各国経済界との間での連携を推進する。

米国新政権下でのさらなる日米関係の強化に向けて、様々なレベルでコミュニケーションを緊密に行う。日EU・EPAならびに日英EPAに基づき、引き続きEU諸国ならびに英国との貿易投資の拡大を目指す。ロシアとの8項目の「協力プラン」の実現等に協力するとともに、ロシアにおけるビジネス環境の改善を引き続き働きかけていく。

最大の貿易相手国である中国、一段の成長が期待されるインド、多様な可能性を備えるASEAN等との経済関係を堅持し、さらなる発展に努める。関係国と連携し、自由で開かれたインド太平洋の実現を目指す。

9.ルールに基づく国際経済秩序の維持・強化

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う保護主義的な動きを阻止し、人権を尊重する経営を通じて信頼に基づく国際協調を推進することで、コロナの下での自由で開かれた貿易投資を実現する。その一環として、アジア太平洋地域における貿易投資に関するルールづくりを推進するため、1月に発効したRCEPの着実な実施及び運用に留意するとともに、引き続き、インドの参加を働きかける。CPTPPについては、貿易投資の自由化とルールの両面における高い水準の合意を維持する形で英国の加入の早期実現や米国の復帰を含む参加国の拡大を求めていく。日メルコスールEPAに関する共同研究会の立ち上げを関係各方面により粘り強く働きかける。また、提言「第12回WTO閣僚会議に期待する」(2021年9月)に基づき、延期となった同閣僚会議の早期開催、多角的自由貿易体制の機能強化を働きかける。さらに、コロナの影響で中断・遅延した海外インフラプロジェクトの再開に政府とも連携して取り組むとともに、質の高いインフラ輸出の拡大に向け、国内・各国の官民リーダーとの政策対話を通じて、協力関係の促進に取り組んでいく。

経済と安全保障の結びつきが強まる中、わが国の安全保障を確保しつつ、企業がグローバルに事業活動を展開できるよう、政府と連携して経済安全保障の確保に向けた取り組みを強化する。

10.防災・減災、国土強靭化

新型コロナウイルス感染症や近年の大規模自然災害を踏まえ、被災者・感染者の救済や地域の復旧はもとより、防災・減災、国土強靭化、事業の維持・継続に万全を期す。わが国経済社会のレジリエンスの一層の強化を図るため、政府方針の着実な実行を働きかけるとともに、あらゆる非常事態を想定した「オールハザード型」BCPの策定やサプライチェーンの強靭化など、事業継続に向けた企業の取り組みを促進する。

11.国家的イベントの成功

2025年大阪・関西万博、2027年横浜国際園芸博覧会など国家的イベントの成功に向けた取り組みに積極的に協力し、日本経済・社会の活性化につなげる。

以上

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