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Policy(提言・報告書) 産業政策、行革、運輸流通、農業 2022年度規制改革要望 ―人・地域・グリーン―

2022年9月13
一般社団法人 日本経済団体連合会

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Ⅰ.基本的考え方:Society 5.0実現に向けた残された課題

新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大から約2年半が経過し、ポストコロナを見据えた経済社会の制度構築が急務となっている。先の読めない情勢下、産業競争力の強化と持続的成長の鍵を握るのは「人」であり、あらゆる人材が活躍できる環境を整え、その価値創造力を最大化することが欠かせない。

そのためには、多様な人材の挑戦を阻害する規制・制度を徹底的に見直す必要がある。女性・高齢者・若者・外国人等の人材の育成・登用、型にはまらない働き方やライフスタイルの実践、スタートアップの創業、また、地方でのビジネス展開や経済合理性では測れない分野への進出等の場面で残る規制を撤廃し、「人」への投資をダイナミックに牽引すべきである。加えて、政府が掲げる地域活性化、グリーントランスフォーメーション(GX)の加速もSociety 5.0を実現するうえで欠かせない課題である。

そこで経団連は、会員企業・団体からの提案を踏まえ、Society 5.0の実現に必要な人の活躍促進、地域活性化、GXを3つの基軸として、規制改革要望63項目を取りまとめた。規制改革推進会議はじめ政府・関係各所においては、規制改革に全力で取り組むよう強く求める。

1.デジタル改革の積み残し

人の活躍を支える基盤とも言えるデジタル技術の活用については、コロナ禍において関連する規制・制度の見直しが進むとともに、昨年11月にはデジタル臨時行政調査会(デジタル臨調)が設置され、3年間の集中改革期間においてデジタル・規制・行政の改革に一体的に取り組むこととしている。ここでは約4万の法規制が検討対象となっており、着実な規制改革の実現に強く期待する#1

他方、一部働き方や税・公金に関する手続については、個別の議論も求められる。裁量労働制や年次有給休暇制度、在宅勤務手当の見直しでは、働き方の多様化やテレワークの推進に応じた十分な対応がされてこなかった。また、給与支払明細書等の電子化に向けた同意取得手続や扶養控除等申告書の提出撤廃は、業務効率化と生産性向上に貢献するにもかかわらず、政府からは導入に慎重な意見が返され、実現に至っていない。デジタル改革と歩調を合わせた迅速な結論と規制改革を求める。

2.多様な価値創造を実現する規制・制度改革
―人・地域・GX―

人々の価値創造力を最大化するためには、多様な人材が、多様な場所で、多様な形で活躍する姿を見据えた、より柔軟性の高い、ゴールベース規制の導入が鍵となる。

第1に、副業・兼業やキャリアパスの多様化が進むなか、副業の推奨や専門的知識を有する有期雇用労働者の活用を阻害する規制は撤廃すべきである。また、資格取得や資格者の配置について、知見・能力を十分加味せずに形式的な学歴や経験年数等を求める要件については、その意義を改めて問う必要がある。

第2に、日本における起業率は諸外国に比べて著しく低く#2、スタートアップ振興に向けて起業のハードルを下げる規制・制度改革が欠かせない。政府は「経済財政運営と改革の基本方針2022」(2022年6月閣議決定)において、スタートアップを5年で現在の10倍にする方針を掲げた。今後、公共調達における入札制限、外国人起業家の在留資格取得要件等について早急に見直し、「世界最高水準のスタートアップフレンドリーな制度」を実現すべきである#3

第3に、外国人が日本国内で活躍できる環境を整えることは、人口減少と高齢化が進む日本において不可欠な施策である。高度人材から現場人材まで、世界各国の優秀な人材を日本に積極的に誘致し、活躍・定着してもらううえで、在留資格「特定技能」の対象分野拡大と利便性向上、専修学校卒業生の「技術・人文知識・国際業務」の取得要件の緩和等が求められる#4

第4に、人の健康を支えるヘルスケア分野については、働き方・暮らし方の多様化に伴い、これまで以上に個々のニーズに対応可能なサービスへと変革する必要がある。診療・調剤のデジタル完結はもちろんのこと、遠隔での健康医療相談やヘルスケアデータを活用した健康管理の普及に向けて、医行為の該当性要件の緩和と明確化が必要となる。健康寿命を延伸し、人々が活躍し続けられる社会を実現することは、日本の成長に不可欠である。

こうした人々が活躍する場として特に期待されるのが、「地域活性化」と「グリーン成長」である。地域では、農地の転用許可基準の弾力化、地熱発電・無操縦者航空機はじめ新たなサービス領域の推進が課題となる。

また、言うまでもなくグリーン成長は日本の最重要課題の一つであり、あらゆる人材・企業が総力をあげて取り組む必要がある。2050年のカーボンニュートラル実現という野心的目標に向けて、バイオガスや水素ステーション、低炭素化を実現した環境配慮型コンクリート等の新たな技術・サービスの活用を円滑化するとともに、太陽光・風力等の再生可能エネルギーの普及を後押しする制度改善を急ぐべきである。

Ⅱ.2021年度規制改革要望【更新・再提出】

1.柔軟な働き方を実現する環境整備

No. 1. 年次有給休暇の取得義務の緩和
<要望内容・要望理由>

年次有給休暇(年休)は原則として業務上の傷病や産前産後、育児・介護休業中にも付与する必要がある。しかし、こうした休業等の実績に関わらず、基準日から1年間において5日間取得させることが使用者の義務とされている。

厚生労働省は、「この義務の目的は年休取得を確実に進めるために設けられたものであり、趣旨に鑑みれば長期休暇からの復帰後等においても他の労働者と同様に年5日の取得をする必要がある」としているが、年休の立法目的は心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障することであり、年休取得促進を図るうえでも大前提になる。一方で、例えば休業した労働者が事業年度の終了間際に復帰した後、年度内に5日間の年休を取得することは、実質的な労働日に占める休暇日の割合が過大となり、年休の立法目的にはそぐわない。

また、急な休業者や退職者については、発生時期を事前に予期できず、休業開始・退職前に5日間の年休を取得させることが困難な場合がある。特に計画的付与制度を活用する企業においては、一斉付与時期の前に休業・退職する社員の年休の取得への対応が難しい。例えば、退職日の2週間前に退職を申し出た社員に対して時季指定して5日間の年休を取得させることは、年休の趣旨に反するだけでなく、必要な引継ぎの阻害要因や過大な管理負荷要因となる。

そこで、上記のような休業から復帰する労働者については、基準日から1年間における勤務可能日数に応じて按分した日数での年次有給休暇の取得で足りることとすべきである。また、基準日から1年間の途中において突然休業を開始する労働者や退職する労働者については、5日間の年休を取得させられない場合も法違反とならないことを明確化すべきである。

なお、2021年度の「規制改革・行政改革ホットライン」回答において、厚生労働省は、「使用者にとって義務の履行が不可能な場合には、法違反を問うものではない」旨回答しているが、ここでは勤務可能日数が5日未満で物理的に取得不可能といった極端なケースが想定されており、実態に即した回答になっていない。また、「監督指導においても、法違反が認められた場合には、事案に応じ、原則としてその是正に向けて丁寧に指導し、改善を図っていただくこととしています。」との回答についても、そもそも急な退職等の例外的ケースでも法違反となってしまうこと自体を問題視した要望に対して回答になっていないことから、回答の再検討を求める。

<根拠法令等>
  • 労働基準法第39条第1~3項、第7項
No. 2. フレックスタイム制の柔軟化
<要望内容・要望理由>

労働基準法には、労働時間の弾力的な運用を可能とする観点から「変形労働時間制度」が設けられており、企業は実情に応じて「1箇月単位の変形労働時間制」「フレックスタイム制」等の制度を使い分けている。しかし、複数の変形労働時間制を同一労働者に同時に適用することは認められていない。

例えば、1箇月単位の変形労働時間制が適用される現場フロント業務と、フレックスタイム制(清算期間1箇月)が適用される現場後方業務を同一月内に兼務した場合、全て1箇月単位の変形労働時間制が適用されることとなり、実際に兼務で従事する従業員からは、後方業務の際の(同僚と同様に)フレックスタイム制の適用を望む声が多く寄せられている。同時適用の禁止は、現に兼務している多くの従業員の柔軟な働き方を阻害するばかりか、兼務に関心を持つ従業員が手を挙げる際の障壁ともなっている。

兼務による人材育成や活躍機会の拡大、オフピーク通勤や家事・育児等との両立を可能にする柔軟な働き方の提供は、企業にとって、従業員のエンゲージメントと生産性の向上に向けた喫緊の課題である。

そこで、従業員の多様な活躍と柔軟な働き方の両立を実現し、エンゲージメントを向上する観点から、フレックスタイム制の趣旨を損なわない範囲で、フレックスタイム制と1箇月単位の変形労働時間制とを併用を可能とすべきである。これにより、現行の労働基準法における労働時間規制の範囲において、働き方の多様化を進め、制度の趣旨を深度化させることが可能となる。

一例として、前月までに当月の各日の適用労働時間制度を確定していること、月の労働日の過半でフレックスタイム制を適用することを条件として両制度の併用を可能とし、1箇月単位の変形労働時間制度が適用される日においては、始業・終業時刻を使用者が指定することを認めることが考えられる(時間外労働の清算にあたっては、各労働時間制における月間の労働時間を適用日数により按分)。

なお、2020年度の厚生労働省の「規制改革・行政改革ホットライン」回答では「通常労働時間制度の適用者であっても、始終業時刻をその都度、事前に管理者の承認を得て変更することは可能」とされたが、フレックスタイム制と比較して過度な事務手続きが従業員にとって負担となり、場合によっては負担の重さが柔軟な働き方をする心理的ハードルになりうる。

また、2021年度は、「週単位で労働時間を規制し、労働者を保護するという労働基準法の労働時間規制の趣旨と相容れません」との回答を得たが、週単位での労働時間規制は通常労働時間制度におけるものである。フレックスタイム制や変形労働時間制度は、1箇月等の労使で定めた単位期間における週平均の労働時間をもって規制されるもので、両制度を併用した場合も、それぞれに週平均(7日間平均)の労働時間を算出して規制することは可能であるため、「労働時間規制の趣旨と相容れ」ないという回答は当を得たものではない。エンゲージメント向上に資する柔軟な働き方の促進に向け、将来を見据えた回答を改めて要望する。

<根拠法令等>
  • 労働基準法第32条の2、第32条の3
No. 3. 在宅勤務手当の「割増賃金の基礎となる賃金」除外項目への追加
<要望内容・要望理由>

新型コロナウイルス感染症の流行を契機に在宅勤務が普及する中、在宅勤務に必要な備品の購入費や通信費、光熱費等を手当として補助する会社が増加している。

労働基準法は、事業経営のために必要な実費を弁償するものは賃金に当たらないとしていることから、在宅勤務手当を「実費弁償」する場合は同法上の賃金に該当せず、割増賃金の基礎となる賃金から除外できると解釈されている。しかし、国税庁の「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」に例示された方法で実費を計算する場合、企業は個々の従業員の在宅日数の他、通信費・電気代、自宅の床面積、在宅勤務で使用した部屋の床面積を把握する必要がある。とりわけ、在宅勤務を行うすべての従業員から個人ごとに毎月変動する通信費・電気代を収集することは実務上困難である。

もとより在宅勤務手当は、家族手当や通勤手当等と同様に、労働とは直接関係のない個人的事情に基づいて支払われるものであり、在宅勤務により発生する光熱費は労働とは直接関係がない。このような同手当の性質を考えると、在宅勤務手当を「割増賃金の基礎となる賃金」に算入することは、他の手当てとの整合性を欠く。

また、在宅勤務手当が「割増賃金の基礎となる賃金」に算入されることで、社員間に不公平が生じる可能性もある。例えば、社内に在宅勤務が可能な社員と可能でない社員がいる場合、そのほかの条件をすべて同一と仮定すると、在宅勤務が可能な社員の方が「割増賃金の基礎となる賃金」が高くなり、両者間の公平性が保たれない。

そこで、実費弁償以外の在宅勤務手当についても「割増賃金の基礎となる賃金」から除外できるよう、行政解釈で明記すべきである。

例えば、家族手当や通勤手当と同様に日数に応じた支給ではなく、「1時間当たりの単価×在宅勤務時間」、「(光熱費の場合)1m2当たりの単価×在宅勤務に使用した部屋の面積×在宅勤務時間(日数)」等の計算による支給が考えられる。単価の設定については、マイカーでの通勤において距離単価を会社が独自に設定している例を踏まえ、在宅勤務についても会社独自の単価設定が認められてしかるべきである。

<根拠法令等>
  • 労働基準法第37条5項
  • 労働基準法施行規則第21条
No. 4. 企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大
<要望内容・要望理由>

労働基準法は、企画業務型裁量労働制の対象を「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査および分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段および時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務」と定めている。特に労働時間と成果が比例しない仕事に従事する労働者のエンゲージメント向上を図る上で、本制度は有用であると考えられる。

しかしながら、経済のグローバル化や産業構造の変化が急速に進み、企業における業務が高度化・複合化する今日において、現行制度の職務要件は労働者の業務実態と大きく乖離している。そのため、円滑な制度の導入、運用が困難であり、現状、適用労働者は極めて少ない。

そこで、働き手のエンゲージメント向上のためにも、「課題解決型提案営業」と「裁量的にPDCAを回す業務」を早期に対象に追加すべきである。具体的には、前者では例えば、ITシステムの開発提案業務の担当者が、法人顧客のニーズを把握し、顧客ごとに製品やサービスをカスタマイズして組み合わせ、開発提案する業務が対象となる。また後者では例えば、製造ラインの改善を推進する技術者が、改善計画の立案等に加えて実際に改善施策を試行する場合や、人事部門の働き方改革推進の担当者が、計画立案や試行結果の分析だけでなく実際に従業員等に説明し施策を実施する場合が対象となる。

昨年度も同様の要望を提出し、厚生労働省から「検討に着手」として、厚生労働省で開催している有識者検討会の中で、2021年6月に公表した裁量労働制実態調査の結果等も踏まえ、「裁量労働制が労使双方に有益な制度として活用されるよう、丁寧に検討を進めてまいります。」との回答を得た。

実態調査結果によると、8割以上の適用労働者が制度に満足しているなど、大部分の企業では労使双方にとって有益な制度として活用されている。しかしながら当該検討会では、裁量労働制の活用の幅を広げることに関する議論は乏しく、7月15日に公表された検討会の報告書においても、対象拡大についてはほとんど言及されておらず、拡大する具体的な業務の明示も無い。労働者の健康確保を前提としつつ、満足度の高い制度がより広く使われるよう、対象業務の拡大を確実に実現させるべきである。

<根拠法令等>
  • 労働基準法第38条の4

2.業務効率化等による働き手の生産性向上

No. 5. 給与支払明細書、給与所得の源泉徴収票の電子化に向けた本人承諾の見直し
<要望内容・要望理由>

所得税法では、給与支払明細書や給与所得の源泉徴収票を電子的に交付するためには、あらかじめ受給者(交付を受ける者)に対し、その用いる電磁的方法の種類および内容を示し、電磁的方法または書面による承諾を得なければならないとされている。

書面から電子的交付に移行する際、承認しない受給者が一定数存在することはやむを得ないが、意思表明しない従業員も「非承諾」と見做さざるを得ない。そのため、大半の受給者が電子的交付を望んでいる実態がありながら、意向確認に長期間を要し、企業単位での取り組みが進展しない。

そこで、書面から電子的交付への移行を、受給者が明示的に承認しない場合(未回答者の場合)は、承諾に準じる取扱いとし、受給者から書面での交付を望む意思表示があるまでの間、電子的交付を行えることとすべきである。この際、一旦電子的交付に移行した後に、受給者から書面での交付を望む意思表示があれば支払者(交付者)は従うとすることにより、受給者の選択は担保可能である。

これにより、企業実務のデジタル化の推進に寄与するとともに、現在意向確認にかかる企業側の手間や、電子的交付を望む大半の受給者側の承諾作業にかかる手間を削減することができ、働き方改革に寄与する。

なお、規制改革実施計画(2022年6月閣議決定)では、税制を一部、取り上げている。本要望が税制であることを以って規制改革として取り上げることができない理由はないと考える。

<根拠法令等>
  • 所得税法第226条第4項、第231条第2項
  • 所得税法施行令第353条、第356条
  • 所得税法施行規則第95条の2、第100条第4項
No. 6. 年初における所得税の扶養控除等申告書提出の廃止
<要望内容・要望理由>

給与所得者(以下、従業員)は、毎年1月の給与支払日までに、扶養状況の変更有無に関わらず、扶養控除等(異動)申告書を毎年提出しなければならない。

しかしながら、企業は、従業員に対し扶養の変化があれば都度自己申告させており、扶養状況を常に把握していることから、年初に改めて従業員に確認のうえ提出する意義は乏しい。従業員に申告忘れに気付かせる機会ではあるが、そうしたケースはほんの一握りに過ぎず、別途被扶養者側の情報との整合が図られ是正されるため、忘れたままになることは考えにくい。

当該申告書については紙で展開・回収する企業もあり、かかる事務が限られた期間に集中するため人的負担も大きい。

そこで、年初における当該申告書の提出を廃止すべきである。扶養状況に異動が生じた際の届出は継続させることを前提とする。

これにより、重複業務の削減や従業員、会社ともに時期を集中した事務負担の軽減が期待され、ペーパーレス化、リモート勤務の促進にも寄与する。

なお、規制改革実施計画(2022年6月閣議決定)では、税制を一部、取り上げている。本要望が税制であることを以って規制改革として取り上げることができない理由はないと考える。

<根拠法令等>
  • 所得税法第194条、第195条(給与所得者の扶養控除等申告書)
No. 7. 公金出納事務のデジタル化の早期実現
<要望内容・要望理由>

令和4年度税制改正において、eLTAXを用いた電子申告・申請の対象手続や電子納付の対象税目・納付手段の拡大等が進む一方で、地方税に該当しない公金(道路占用料、行政財産使用料等)については、依然としてその多くが紙媒体の納入告知書または納入通知書により徴収され、収納も金融機関窓口での納付が前提となっている。

規制改革実施計画(2022年6月閣議決定)では、公金納付のデジタル化に向けた検討体を政府内に立ち上げることとされている。地方公共団体に共通して活用できる基盤の整備を進めるに際しては、既に民間事業者は地方税についてeLTAXを活用していることから、新たなシステムを構築するよりは、eLTAXの対象範囲を地方税のみから公金へ拡大することが望ましい。また、その実現時期について、2022年度末までに確実に成案を公表すべきである。

これにより、企業実務のデジタル化の推進や働き方の柔軟化、バックオフィスの生産性向上が実現される。

<根拠法令等>
  • 道路法第39条
  • 道路法施行令第19条の2
  • 地方自治法第238条の4第7項
  • 各市町村条例等
  • 地方税法第747条の5の2
No. 8. 薬剤師の対人業務シフトに向けた対物業務の効率化
<要望内容・要望理由>

調剤・服薬指導に関する様々な規制が、薬局・薬剤師の対物業務の効率化や対人業務の拡充を阻んでいる。その一つとして、調剤業務は処方箋を受け取った同一薬局に従事する薬剤師しか許されておらず、処方箋を受け取った薬剤師は調剤等の対物業務に追われ、薬剤師の専門性を活かした服薬指導に十分な時間を割くことができない問題がある。

規制改革実施計画(2022年6月閣議決定)において、処方箋を受け取った薬局による、機械化の進んだ外部の薬局への調剤業務の委託を解禁する方向性が確定した。しかし、厚生労働省の主催する「薬局薬剤師の業務および薬局の機能に関するワーキンググループ」の取りまとめ(2022年7月11日)では、外部委託の対象となる業務は当面の間、一包化のみとし、委託先は当面の間、同一の三次医療圏内とするなど、調剤外部委託によるメリットが大きく削がれる要件が示されている。上記取りまとめにおいては、外部委託が法令上実施可能となった後、必要に応じて一包化以外の業務への拡大や距離制限の見直しを検討するとはされているが、これらの制限のもとでは、外部委託の効果を真に測定することは難しい。

そこで、外部委託の対象となる業務について、一包化のみではなく高齢者施設の入所者をはじめとする在宅医療に関する調剤も含めた上でメリット・デメリットや委託元・委託先薬局や患者の意見を把握し、その結果を踏まえて対象となる業務を順次拡大することとすべきである。また、実証実験の実施を含め、これらの対象となる業務の拡大に向けたプロセスをスケジュールと共に早期に示すべきである。委託元と委託先の間の距離制限・地域制限はそもそも設けるべきではなく、仮に上記取りまとめに基づいて規制を導入する場合には、メリット・デメリットの把握方法と見直しのプロセスをスケジュールも含めて早期に示し、制限を撤廃すべきである。

併せて、薬剤師の配置基準である、いわゆる処方箋の40枚規制についても、枚数による規制ではなく、業務プロセスやアウトカムによる評価とするなど、制度設計や規制の在り方を抜本的に見直すべきである。

これにより、調剤外部委託の活用が促進され、対人業務と対物業務の分担が進むことで、患者に相対する薬剤師は対人業務に集中し、より付加価値の高い服薬指導を提供したり、在宅薬剤師として活動するなど、地域医療の強固な一翼を担うことが可能になる。最終的には薬剤師と患者や家族の時間的・精神的・経済的制約を軽減することによって、社会全体が負う負担の軽減に繋がることが期待され、その社会的意義は大きい。

<根拠法令等>
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則第11条の8、第11条の11、第15条の12
  • 薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令第1条第1項第2号
No. 9. 有機廃棄物からエネルギーを生成する技術の社会実装に向けた規制の緩和
<要望内容・要望理由>

廃棄物処理法においては、廃棄物を、「国民の日常生活の中から排出されるものを中心とする」一般廃棄物と「事業活動に伴って排出され、量的又は質的に環境汚染源として問題とされるものからなる」産業廃棄物に区分している。

このうち、一般廃棄物についても安価かつ手軽に低環境負荷なエネルギーに転換することが可能となれば、有機廃棄物のこれまで以上の有効利用が見込まれる。すでに実際にゴミを分別することなく処理し、低環境負荷なエネルギーに転換する装置も開発されており、身近で発生するプラスチックや賞味期限切れの有機廃棄物を分別不要かつ低廉な費用でエネルギー化することが可能となっている。

しかし、この装置を実装する際、廃棄物処理法に基づく一般廃棄物処理施設の設置許可を取得する必要がある。

産業廃棄物に比較して、一般廃棄物は「量的又は質的に環境汚染源として問題」とされるものではないと考えられる。しかしながら、産業廃棄物のうち一部(燃え殻、紙くず、木くず、繊維くず、動植物性残さ、動物系固形不要物等)の処理施設については、施設の設置許可を不要としている一方で、1日当たりの処理能力が5t以上の一般廃棄物の場合には、処理物の如何に関わらず一律に施設の設置許可を必要としている。環境省が2021年度の「規制改革・行政改革ホットライン」で回答しているように、「生活環境保全上の支障を及ぼす恐れのある施設かどうか」によって規制の有無を分けているのであれば、産業廃棄物の処理施設に比して一般廃棄物の処理施設の規制が厳格であることは合理性に欠けると考えられる。

そこで、施設の設置許可の規制にかからない産業廃棄物の処理施設と同様に、一般廃棄物の処理施設についても施設の設置許可を不要とすべきである。

これにより、冒頭の廃棄物処理設備の普及が促進され、環境負荷の低減を図ることができる。

<根拠法令等>
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律第8条1項、15条1項
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令5条1項、7条
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行について(厚生省環784号)

Ⅲ.2022年度規制改革要望【新規】
― Society 5.0の実現に必要な人の活躍促進、地域活性化、GX ―

1.人の活躍促進

(1)多様な働き方・キャリアへの対応
No. 10. 転職再勧奨規制において副業が対象とならないことの明確化
<要望内容・要望理由>

職業紹介事業者は、早期離職の防止という観点から、その紹介により就職した者(期間の定めのない労働契約を締結した者に限る)に対し、当該就職した日から二年間、転職の勧奨を行ってはならないとされている。そのため、職業紹介事業者は、当該就職した者に副業の意欲があり、かつ、紹介先企業が副業を許容している状況においても、副業の勧奨が法令に抵触するリスクを恐れ、当該就職した者に対する副業の勧奨を控えている。

そこで、副業のように離職を伴わず、早期離職の防止の趣旨に反しない場合の勧奨については、規制の対象とならないことを、指針等で明確化すべきである。

これにより、副業が促進され、働き手のスキルアップや自己研鑽、社外での幅広い視野・経験の獲得が可能となるなど、わが国の労働市場における人的資本の向上につながることが期待される。

<根拠法令等>
  • 職業安定法33条の5
  • 「職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容の的確な表示、労働者の募集を行う者等の責務、労働者供給事業者の責務等に関して適切に対処するための指針」第5の5
No. 11. 専門的知識等を有する有期雇用労働者等の活用促進に向けた認定要件の緩和
<要望内容・要望理由>

専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法(以下、有期特措法)における第一種特例の適用を受けるには、年収要件や高度専門職の職種要件に加え、第一種特定有期雇用労働者が就く特定有期業務が5年を超える一定期間内に完了する業務(以下、プロジェクト)という要件が課せられている(同法4条2項1号)。また、プロジェクトは、第一種計画に内容と開始および完了の日を定め、申請書へ記載する必要がある。

しかし、新規事業立ち上げ業務等の場合、開始日前に、完了の日を特定することが難しいことがあるため、第一種特例の認定を受ける阻害要因となり、高度な専門性を有する人材の活用機会が制限されている。例えば、新規事業の場合、新規立ち上げにおいて求められる人材と、立ち上げ後、事業を展開していくフェーズで求められる人材が異なるケースがある。新規立ち上げフェーズにおいて、事業立ち上げの完了日の特定が難しいために第一種特例を活用できないと、企業として高度な専門性をもつ有期契約労働者を構成員とする有期プロジェクトを進めることが出来なくなるともに、有期雇用を前提として高度な専門性を活用できる仕事をしたいと考えている人材にとって、働く機会が減少することが危惧される。

そこで、第一種特例の適用にあたり、プロジェクトの完了の日を定めることが適さない業務について、プロジェクトの完了となる条件を示すことを条件に、完了の日を10年を超えない範囲で、例えば5年~10年というような定め方を認めるべきである。

これにより、これまで期間を定めることができないことを理由として第一種特例の申請を見送っていた業務がプロジェクトと認定されるようになれば、高度な専門性を有する人材の活躍の場がより一層広がることが期待できる。

<根拠法令等>
  • 労働契約法18条
  • 専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法4条2項の1
No. 12. 労働基準法令の制定・改正時における「公聴会」開催の廃止
<要望内容・要望理由>

労働基準法第113条は、「この法律に基いて発する命令は、その草案について、公聴会で労働者を代表する者、使用者を代表する者および公益を代表する者の意見を聴いて、これを制定する」と規定している。本規定に基づき、同法施行令や同法施行規則の制定・改正にあたっては、公労使から意見聴取を行う公聴会を経なければならない。

しかしながら、労働基準法および同法に基づく命令の制定・改正にあたっては、公労使が参画する労働政策審議会労働条件分科会で審議が行われている。また、行政手続法第39条第1項により、命令等を定める際には当該命令の案を公示して広く一般の意見を求める「意見公募手続(パブリック・コメント制度)」も存在する。こうした状況下において、公聴会を開催する実質的な意義は失われており、労働安全衛生法や労働者災害補償保険法等、労働基準法以外の労働基準関係法令に類似の規定はみられない。

そこで、労働基準法第113条に基づく公聴会の開催を廃止すべきである。

<根拠法令等>
  • 労働基準法第113条
No. 13. 本社一括届出(36協定届)の要件緩和
<要望内容・要望理由>

労働基準法をはじめとする労働関係法令は、場所的観念等に基づく事業場を単位として適用されるため、行政機関への申請や届出は事業場毎に行うことが原則である。

他方、労働基準法第36条第1項に基づく「時間外労働・休日労働に関する協定届」(36協定届)については、企業における届出事務の簡素化を図る観点から、本社を管轄する労働基準監督署に事業場の分をまとめて届け出る「本社一括届出」が可能となっている。

しかしながら、本社一括届出を利用するには、「事業の種類」「事業の名称」「事業の所在地(電話番号)」「労働者数」「労働組合の名称又は過半数代表者職名・氏名」「過半数代表者の選出方法」以外の項目が各事業場で同一でなければならない。具体的には、「業務の種類」や「時間外労働をさせる必要のある具体的事由」「休日労働をさせる必要のある具体的事由」等が各事業場で異なる場合、本社一括届出の要件を充足しない。このため、事業場毎に異なる機能・役割を持たせた上で、最適な働き方を模索する企業にとっては、依然として行政手続の届出負担を軽減できない状況にある。

そこで、36協定届の本社一括届出について、事業場毎に協定項目が異なる場合にも活用できるよう、要件を緩和すべきである。

規制改革実施計画(2022年6月閣議決定)では、「厚生労働省は、労働基準法上の労使協定等に関わる届出等の手続について、労使慣行の変化や社会保険手続を含めた政府全体の電子申請の状況も注視しつつ、『本社一括届出』の対象手続の拡大等、より企業の利便性を高める方策を検討し、必要な措置を講ずる」(令和4年度検討開始)とされた。本社一括届出の対象手続の拡大に限らず、既存の対象手続の要件緩和も視野に入れ、早期に検討を開始するよう求める。

<根拠法令等>
  • 労働基準法第36条第1項
No. 14. 人材開発支援助成金の申請方法の簡素化・明確化
<要望内容・要望理由>

企業が雇用する労働者に、職務に関連した専門的な知識および技能を習得させるために一定時間以上の訓練を実施する場合、申請により助成金を受給することができるが、以下のように、申請のための業務負荷が重く、非効率である。

【具体例】
実施計画届、支給申請の手続きが煩雑である。

  1. 例1:同じ研修内容でも講師が異なれば、計画単位、申請単位を分ける(書類を分ける)必要がある。
  2. 例2:支給申請に際しては、研修受講者1人1枚の詳細な受講記録および自署が必要である。

そこで、同一研修内容であれば講師が異なる場合でも1単位での申請を可能とすることや、実施状況報告書において、複数受講者が同一報告書に記載できる様式への変更等の手続きの簡素化を求める。

これにより、助成金活用の企業の拡大による円滑な労働移動の推進につながると考えられる。

<根拠法令等>
  • 雇用保険法65条
  • 雇用保険法施行規則125条
  • 人材開発支援助成金 支給要領
  • 一般訓練コース(0500計画届の提出、0600計画届の確認、0700支給申請書の提出、0800支給要件の確認)
  • 特定訓練コース(0500計画届の提出、0600計画届の確認、0700支給申請書の提出、0800支給要件の確認) 等
No. 15. 雇用保険の事業所非該当申請認可の弾力的運用
<要望内容・要望理由>

労働保険の被保険者に関する事務手続きは、各事業所に担当者を配置して、それぞれの事業所単位で所轄ハローワークとの間で行うことが原則である。

事業所規模が小さく、担当者を配置できない等の事情がある場合は、「雇用保険事業所非該当承認申請」を提出・承認を受けることで、本社および支社等が一括して手続を行うことができるとされている。

しかし、上記承認申請は、各事業所の従業員規模が大きいことを主な理由として受理されない場合があり、企業の集中的な処理の阻害要因になっている。

そこで、電子申請を前提に、企業が雇用保険業務を本社等で集中システム処理を行う場合には、1社1事業所での事務処理を可能とすべきである。

これにより、官民一体となった事務効率化の一層の進展が実現する。

<根拠法令等>
  • 雇用保険法4条、6条
  • 雇用保険法施行規則3条
  • 雇用保険に関する業務取扱要領(令和4年7月1日以降)22051-22060 2 事業所非該当の取扱い
No. 16. 建設分野における監理技術者等の活躍に向けた制度運用の柔軟化
<要望内容・要望理由>

国土交通省の「監理技術者制度運用マニュアル」において、建設工事の適正な施行を確保するため、監理技術者等(主任技術者、監理技術者、特例監理技術者、監理技術者補佐)は、所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあることが求められている。他方、建設業を取り巻く経営環境の変化等に対応するため、国土交通省の通知(平成28年国土建第119号)により、親会社およびその連結子会社の間の出向社員を出向先の会社が工事現場に監理技術者等として置く場合、当該出向社員と当該出向先の会社との間に直接的かつ恒常的な雇用関係があるものとして取り扱う等の特例が設けられている。

そこで、昨今、企業間の協業や組織再編等で資本関係の複雑化が進み、加えて監理技術者等の人材確保が課題となるなか、新たに通知等を発出して、雇用関係の取扱の特例を、①親会社およびその持分法適用会社の間の出向、②同一持株会社の連結会社間の出向にも拡充すべきである。

これにより、監理技術者等の資格保有者が資格を活かして活躍できる機会が増加するとともに、建設業者にとっては、監理技術者等の人材確保がより柔軟に行えるようになることが期待できる。

<根拠法令等>
  • 建設業法第26条
  • 監理技術者制度運用マニュアル2-4
No. 17. 電気主任技術者の確保に向けた資格制度の見直し
<要望内容・要望理由>

電気主任技術者については、従来からの課題である高齢化に伴う離職率の増加、少子化による入職率の減少に加え、再エネの主力電源化により、発電・需要設備の保安点検を担う人材不足が一層加速することが見込まれている。政府においても、遠隔監視はじめスマート保安技術を活用した配置要件の見直し等、様々な検討を進めているが、第三種電気主任技術者の入職者数が伸び悩む中、再エネ設備等の高圧電気設備の外部委託点検を受託可能な人材を増やす不断の努力が求められている。

高圧電気設備の扱いに関する知識・経験のある資格者としては、電気主任技術者の他、電気工事士が該当する。現行制度では、経済産業省が定める認定校(工業高校等)を卒業した場合に限り、第一種電気工事士がその実務経験を以って第三種電気主任技術者の資格・免状を取得することが可能となっているが、認定校卒業者でない場合は、合格率10%程度の資格試験に合格する以外に、第三種電気主任技術者資格を取得する道はない。また、電気主任技術者の資格・免状を取得したのち、外部委託点検を受託するためには、最低でも3年間の実務経験が求められており、保安点検を担う人材を育成するうえで時間的な制約も大きいのが実情である。

そこで、①認定校以外を卒業した第一種電気工事士の資格・免状取得者についても、実務経験年数5年または実務経験年数3年かつ電気主任技術者講習を受講することにより、第三種電気主任技術者の資格・免状を取得できるようにすること、②第三種電気主任技術者が、必要な講習(現行の講習および特別講習)を受けることにより、外部委託点検の受託に必要とされる実務経験の年数要件を、現行の3年から半年程度に短縮化すること、を求める。

これにより、電気主任技術者の不足に対応するのみならず、電気工事士のキャリアパスの多様化、若手電気主任技術者の入職拡大等が期待でき、人の活躍促進に資する。加えて、電気主任技術者一人当たりの担当物件数増を進める施策と併せ、再エネ推進を支える電気主任技術者の不足の解消に資する。

<根拠法令等>
  • 電気事業法の規定に基づく主任技術者の資格等に関する省令
  • 電気事業法施行規則第52条の2第1号ロの要件等に関する告示(平成15年経済産業省告示第249号)
No. 18. オフサイト水素スタンドにおける保安統括者の経験要件の緩和
<要望内容・要望理由>

カーボンニュートラルの実現に向けて、水素燃料自動車の普及が期待される中、水素スタンドの設置にあたり、保安統括者の確保が急務となっている。

現行の高圧ガス保安法および一般高圧ガス保安規則においては、水素スタンドごとに保安統括者を一人選任しなければならない。保安統括者の要件として、可燃性ガスの製造に関し6か月以上の経験を有する者という要件が課されており、この要件を満たす保安人員を手配することが困難な状況が生じている。

そこで、高圧ガス保安法に基づく保安統括者の要件について、少なくともいわゆる「オフサイト式」の水素スタンドについては、製造経験6か月以上の要件を撤廃すべきである。

「オフサイト式」の水素スタンドでは、原料である天然ガス等から化学反応により水素を精製するプロセスが当該サイトで行われることはない。したがって、保安統括者について製造経験6か月以上の要件は不要である。

これにより、水素スタンドに従事できる保安統括者の数が拡大し、水素スタンドにおける保安統括者の確保が容易となり、人件費の削減にも資する。その結果、水素スタンドの普及が促され、カーボンニュートラル実現に不可欠な水素社会の実現に繋がると期待される。

<根拠法令等>
  • 高圧ガス保安法第27条の2第1項、第3項
  • 一般高圧ガス保安規則第64条第2項 四、五
No. 19. デジタル教材作成時の著作物利用に関する規制緩和
<要望内容・要望理由>

変化の激しい時代に自ら価値を創造できる人材を育成するためには、現在の一元的な教育カリキュラムを改め、個々の学生・生徒や、学びなおしを求める社会人等が置かれている個別の状況やニーズに則した、きめ細かいカリキュラムを提供することが求められる。しかしながら、例えば著作権法上、他人の作品等を用いて主会場で行った授業を録音・録画したデータについて、後日、副会場に改めて送信する場合には補償金の支払いが必要となり、個別カリキュラムの提供に支障が生じている。

こうした現状下、EdTech#5の推進を図る観点からも、著作権者に対する当然の配慮は踏まえつつ、著作物の広範な利用を促進するために現行の制度を見直す必要がある。具体的には、オンデマンド配信も有効な手段であるオンライン授業の特性を勘案し、一定の期限等制限を設けつつ、「同時中継」でない場合も補償金の支払いを不要とすべきである。

これにより、対面授業とオンライン授業を併用する場合、本会場・副会場の双方において時間割を柔軟に設定できるため、各会場の実情に合った講義を提供することが可能となる。また、リカレント教育において、大学生・大学院生への講義を別途夜間の時間帯にオンデマンドで視聴可能にすることによって、大学の教員の負担を増やすことなく社会人の学びなおしを促進できる。さらに、企業の実務担当者による夜間の講義を大学生・大学院生に昼間時間帯に視聴可能にすることで、実学的かつ最新の講義を受講することが可能となる。

<根拠法令等>
  • 著作権法35条3項(学校その他の教育機関における複製等)
(2)スタートアップの躍進
No. 20. スタートアップの更なる活用に向けた公共調達制度の見直し
<要望内容・要望理由>

官公庁や地方公共団体による調達では、情報システムの導入からネットワーク敷設までなど、構成要素全体を1つの調達範囲として公募するため大規模化することが多い。しかし、スタートアップは資金面や実績面が乏しいために入札参加者資格の等級評価が低く、求められる成果物を提供する技術等を有している場合でも、現在の官公庁調達では予定価格上限額が300万円以下のDランクの調達にしか参加できない。

そこで、すでにJ-Startup企業#6は等級にかかわらず全ての政府調達案件に入札可能ではあるが、さらに能力あるスタートアップの入札参加を促進するため、J-Startup地域版企業に対しても同等の入札参加者資格緩和措置を講じ、等級にかかわらず300万円以上の入札に参画できるようにすべきである(例として、3,000万円程度の案件への入札を想定)。そのうえで、J-Startup企業およびJ-Startup地域版企業に対して、公共調達で有利になるような加点評価を行うべきである。

これにより、スタートアップが創意工夫を生かした独自のサービスの提供が可能になるとともに、その組み合わせによって社会変化へのタイムリーかつアジャイルな対応を実現できる。公共調達を通じて行政がスタートアップの顧客となることで、売上高の拡大やスタートアップへの信用の付与につながり、補助金等の支援なしに事業継続が可能というスタートアップの自立が期待され、スタートアップの成長に資する。

<根拠法令等>
  • 会計法第29条
  • 競争参加者の資格に関する公示 別記4・別記5
  • 技術力ある中小企業者等の入札参加機会の拡大について(平成12年10月10日政府調達(公共工事を除く)手続の電子化推進省庁連絡会議幹事会決定)
No. 21. サービスオフィス利用に対する借地借家法の例外的措置の創設
<要望内容・要望理由>

サービスオフィス(事業活動に必要となる、受付や会議室、オープンスペース利用を含む各種サービスが付帯した個室付オフィス)の契約形態は賃貸借契約か施設利用契約のいずれかとなる。

初期投資抑制の観点から開業や業務拡大時の拠点確保に適している一方、セキュリティが確保された個室タイプの執務スペースを利用する場合は借地借家法に基づく賃貸借契約となり、借主は保証金を支払う必要がある。保証金は一例として賃料の半年分から1年分に相当し、企業の与信力によって異なるため借主がスタートアップの場合、大企業よりも高額になる場合がある。更にはリーガルコスト、短期間での再契約の必要性も発生し、こうした金銭的・業務的負担が拠点確保の障壁となっている。実際に保証金の預け入れによる運転資金の減少がボトルネックとなり拠点開設を断念せざるを得ないケースも生じている。

そこで、対象事業者のスタートアップへの限定(例:中小企業基本法に基づく中小企業者、かつ創業10年以内の非上場企業を対象とする)、専有面積の制限、居住用以外の利用用途といった一定の要件を条件に、個室利用であっても借地借家法上の「建物の賃貸借」から除く特例を設け、施設利用契約によるサービスオフィス利用を認めることを明確化すべきである。

これにより、保証金や厳重なリーガルチェックが不要となり、基本的に自動更新契約となるため、賃貸借契約と比して非常に小さい負担で拠点確保が可能となる。創業期の限られたリソースでスムーズな拠点確保を実現するには、賃貸借契約より施設利用契約が適しており、リソースを本業に集中できるようにすることで、広くスタートアップ振興に寄与する。

<根拠法令等>
  • 借地借家法第26条~第40条
    (参考:東京地裁 平成26年11月11日判決 ウエストロー・ジャパン#7
No. 22. スタートアップ拠点形成に向けた外国人起業家の在留資格取得要件の緩和
<要望内容・要望理由>

日本が世界有数のスタートアップ拠点を形成するためには、優れた外国人起業家を積極的に誘致することが欠かせない。とりわけ日本の大学・大学院の研究成果等を事業化する予定であったり、日本のプライム上場企業より一定の出資を受けているなど有望な外国人起業家については、優遇措置を設けることで、起業・成長しやすい環境を提供することが有効である。

現行制度下で外国人が日本で起業するには、在留資格「経営・管理」の取得が必要であり、その要件として、①国内に申請する事業経営のための事業所が存在すること、②その経営・管理に従事する者以外に、日本に居住する2人以上の常勤職員が従事すること、③資本金の額又は出資の総額が500万円以上であることなどが求められている。また、実際の起業に先立つ起業準備期間については、経済産業省の外国人起業活動促進事業のもと、在留資格「特定活動」の取得が可能となっており、対象地方公共団体の承認を受けることなどが要件に定められている。

しかし、スタートアップの多数を占めるIT関連事業においては、開発やサービス提供においてオフィスに常駐する必要性が乏しく、①の事業所要件は実態に即していない。こうした状況から、国家戦略特別区域においてはコワーキングスペースを事業所とみなす規制の特例措置を設けているが、活用地方公共団体は福岡市、仙台市、京都府に限られている。上記要件③の資本金についても、多くの日本人によるスタートアップの設立時資本金が500万円を下回っているなかで、有望な外国人起業家に過度な負担を強いている状況にある。

また、経済産業省の外国人起業活動促進事業については、起業準備に該当する事前市場現地調査や法人設立手続等を除く活動が認められない。そのため、来日する外国人起業家は、資本金500万円に加え準備活動中の生活・活動資金を入国までに用意する必要がある。仮に起業準備期間中に生活資金が不足した場合でも、一時的な通訳・翻訳業務等により生活資金を取得することはできず、融資や第三者からの資金提供等を受けられない場合には帰国を迫られることになる。

そこで、経済産業省が選定する「J-Startup地域版企業」に選ばれていること、あるいは日本の大学・大学院と事業提携を行っていること、プライム上場企業より一定の出資を受けていることのいずれかを要件として、①国家戦略特区と同様にコワーキングスペースを事業所とみなす要件緩和、②最低資本金500万円から300万円への引き下げ、③外国人起業活動促進事業における起業準備期間の資格外活動(週28時間以内の就労)の容認、を行うべきである。

これにより、より多くの有望な外国人起業家が日本で活躍可能となり、日本のスタートアップ振興に資する。

<根拠法令等>
  • 出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(法別表第一の二の表の経営・管理の項の下欄に掲げる活動)
  • 経済産業省「外国人起業活動促進事業に関する告示」
  • 出入国管理及び難民認定法第19条
  • 出入国管理及び難民認定法施行規則第19条
No. 23. 役職員の株式保有に関する規律の見直し
<要望内容・要望理由>

近年、スタートアップを含む各企業において、株式報酬や持株会等、役職員に株式を保有させることによりその勤労意欲を向上させ、社内人材の活躍につなげる取り組みが進められている。しかし、金融商品取引法等の一部の規定がそのような取り組みの拡大を妨げているため、以下の通りに見直すべきである。

  1. ① 株式報酬の交付に係るインサイダー取引規制の適用除外
    上場会社等が株式報酬として1億円以上の株式の交付を行う場合、当該交付がインサイダー取引規制上の重要事実に該当する。そのため、当該重要事実の公表前においては、自己株式の処分等のコーポレートアクションに支障が生じうる。
    そこで、株式報酬としての1億円以上の株式の発行であっても、例えば流通株式時価総額に比して発行価額が僅少である場合等、投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微である場合には、インサイダー取引規制上の重要事実に該当しないこととすべきである。

  2. ② 自己株式の処分による株式報酬におけるインサイダー取引規制の適用除外
    自己株式の処分はインサイダー取引規制における「売買等」に該当するため、上場会社等が役員・従業員に報酬として株式を交付する場合や、株式交付信託の受託者に株式を交付する場合において、当該会社の取締役が公表前の重要事実を知っているときは、株式報酬としての自己株式の処分がインサイダー取引に該当してしまうこととなり、株式の交付が困難となる。
    しかしながら、インサイダー取引規制の趣旨は、証券市場の公正性と健全性に対する投資者の信頼を保護する点にあるところ、株式報酬の支給のために自己株式の処分を行う場合には、会社法に基づく決議を適正に経て行う限り(役員報酬制度は、取締役会の決定に基づき事業報告で開示された報酬の決定方針に定められた範囲内で行われる)、投資者の信頼を害する危険性は小さい。また、株式の割当てに際しては会社法の手続きの他、有価証券届出書・通知書・取引所への適時開示が行われていることからも同様に危険性は小さいものと考えられる。
    さらに、2017年7月に施行された、株式報酬制度の株式報酬等の柔軟な活用を可能とするための開示府令・取引規制府令の改正にて、インセンティブ報酬を阻害しないようにするという観点から、インサイダー取引の未然防止のための法規制である役員等の売買報告書の提出制度等の対象から、役務の提供の対価として生ずる債権の給付と引換えに株式の交付を受ける場合について、ストック・オプションと同様に除外されたこととも整合的と考える。
    そこで、株式報酬として譲渡制限付株式を交付する際に行われる自己株式の処分については、インサイダー取引規制上の「売買等」から除外すべきである。

  3. ③ 持株会による買付けの上限額の引上げ
    持株会による株式の買付けがインサイダー取引規制の適用を受けないようにするためには、各役員・従業員の1回当たりの拠出金額が100万円未満でなければならない。しかし、当該規定の制定時に比べ、株式投資による資産形成の重要性が高まっていることから、持株会を通じて、インサイダー規制の対象とならない自社株式の取得を、1回100万円以上行いたいというニーズが高まっている。
    そこで、持株会による株式の買付けがインサイダー取引規制の適用を受けない拠出金額の上限を、現状の1回当たり100万円未満から引き上げるべきである。

  4. ④ 拡大従業員持株会の会員範囲の拡大
    現行法上、上場会社又はその被支配会社の従業員が当該上場会社の株式の取得することを目的とする通常の従業員持株会だけでなく、非上場会社の従業員が、当該非上場会社と密接な関係を有する上場会社の株式の取得することを目的とする持株会(拡大従業員持株会)も認められている。しかし、通常の従業員持株会と異なり、拡大従業員持株会の会員の範囲は実施会社(非上場会社)の従業員に限られており、その被支配会社の従業員は会員となることができない。そのため、例えば実施会社が分社型会社分割を行う場合等には、一部の従業員が持株会の会員資格を喪失してしまうこととなり、これが拡大従業員持株会の利用拡大の妨げとなっている。
    そこで、拡大従業員持株会の会員の範囲に、実施会社の被支配会社の従業員も含めることができるようにすべきである。

  5. ⑤ 持株会による株式の売付けに関する売買報告書提出の免除
    上場会社等の主要株主が当該上場会社等の株式の売買を行った場合、原則として売買報告書を国に提出する必要がある。例外として、持株会による買付けに関しては報告書の提出を免除される一方で、売付けについては提出を免除されないため、持株会の管理者に負担が生じている。しかし、従業員等が持株会を退会する際に持株会名義で売買単位未満の株式の売却をするにあたり、その合計が売買単位に達した場合であっても、その単位数は通常僅少であるため、報告書を提出する意義は乏しい。
    そこで、持株会を通じた株式の売却について、少なくともその単位数が僅少である場合には、主要株主等売買報告書の提出を免除すべきである。

これらの要望が実現することで、企業における株式報酬や持株会の利用が広がり、人の活躍促進に資する。

<根拠法令等>
  • ①・②:金融商品取引法166条
  • ③:金融商品取引法166条6項12号・取引規制府令59条1項4~8号
  • ④:金融商品取引法166条6項12号・取引規制府令59条1項6号
  • ⑤:金融商品取引法第163条1項・取引規制府令30条1項2~6号
No. 24. 株式報酬の活用促進に向けた有価証券届出書の開示規制の緩和
<要望内容・要望理由>

新株発行や自己株式処分(以下、新株発行等)における有価証券届出書の開示規制は、有価証券の発行者が、事業内容、財務内容、有価証券の発行条件等を投資家に開示する、重要な制度である。一方で、有価証券届出書の開示規制は、株式報酬制度導入の阻害要因となっている。投資家保護の法目的を損ねない範囲で、以下の通り、株式報酬の活用促進に向けた有価証券届出書の開示規制を緩和すべきである。

  1. ① 譲渡制限付株式報酬の募集に係る有価証券届出書の提出不要の特例に係る制度の見直し
    2019年7月の府令改正により、譲渡制限付株式報酬の発行に際して一定の要件を満たす場合に、有価証券届出書の「提出不要の特例」が設けられた。しかしながら、付与対象者の死亡や発行会社の組織再編等のイレギュラーな事象による譲渡制限の解除があった場合には、「提出不要の特例」の要件を満たさないことから、提出不要の特例の利用件数は限定的である(譲渡制限付株式報酬を導入した企業1,374社のうち、「提出不要の特例」が利用され、臨時報告書によって開示がなされたのは、81社に留まる(2022年6月末時点))。
    そこで、譲渡制限付株式報酬を一層活用しやすくするために、上記のようなイレギュラーな事象による譲渡制限の解除があった場合にも「提出不要の特例」を認めるべきである。

  2. ② 譲渡制限付株式報酬の募集に係る通算規定の適用除外
    譲渡制限付株式報酬を発行した場合、「提出不要の特例」を満たさない場合で、発行額が1億円以上の場合には、有価証券届出書の提出が必要になる。ここで、株式報酬の額が1億円未満の場合でも、割当決議から遡って1年以内に払込期日が到来した募集・売出しがあった場合で、当該募集・売出し行為に関して有価証券届出書を提出していないものがある場合には、その金額も通算して1億円以上となれば、有価証券届出書の提出が求められる(通算規定)。
    こうしたことから、例えば、5,000万円~1億円未満の株式報酬を付与する会社には、「通算規定」が適用され、年度により提出書類が異なることになる(例えば、1年目は有価証券通知書、2年目は有価証券届出書を提出)。
    単年度において1億円未満の金額の譲渡制限付株式を発行するという実態が変わらないにも関わらず、年度毎に提出書類が異なるのは、手続が煩雑であり、実務上の負荷が大きい。
    そこで、ストック・オプションの発行と同様に、譲渡制限付株式の発行においても、「通算規定」の適用を除外すべきである。
    これにより、譲渡制限付株式報酬制度の安定的な運用が可能となり、その導入促進に寄与する。

  3. ③ RSUを活用する場合等の有価証券届出書の提出免除
    RSU(譲渡制限株式ユニット)は、一定の在籍期間後に株式を付与される権利であり、実際に株式を付与する際に、会社から取締役等に株式が移転するもので、米国のIT企業等で導入が進んでいる。RSUは、ストック・オプションのように権利行使価額との差額ではなく、権利確定時の株価全額を付与対象者が享受できるため、企業価値向上に向けたインセンティブ効果が高い。また、譲渡制限付株式と比べると、取締役等に対して権利確定前に株式を移転する必要が無く、権利が確定しなかった退職者等から株式を取り戻す必要がないといった利点もあり、日本でも、導入のニーズが高まっている。
    そこで、RSUの導入円滑化に向け、新株発行等における、有価証券届出書の開示規制を緩和すべきである。

    【RSUの類型1:権利確定に合わせて新株発行等を行う場合】
    発行する株式が譲渡制限付株式ではないことが一般的であり、その場合、発行価額が1億円以上となる場合には、有価証券届出書の提出が求められる。取締役等が一定期間経過後に株式を取得できる仕組みであるストック・オプションの発行において有価証券届出書の提出を免除する規定の趣旨を踏まえ、RSUについても、同様の規定を創設すべきである。

    【RSUの類型2:信託銀行が企業から株式を取得する場合】
    企業から金銭を信託された信託銀行が契約に基づいて当該企業の新株発行等を引き受けて株式の取得を行い、その後、権利確定時に在籍している取締役等の対象者に株式を交付する場合、その新株発行等の相手方が取締役等ではなく信託銀行となるため、発行価額が1億円以上となる場合には、有価証券届出書の提出が求められる。信託を活用したRSUの仕組みであるものの、信託は導管に過ぎず、取締役等が一定期間経過後に株式を取得できる仕組みであることは変わらないことから、この場合も、ストック・オプションと同様に、有価証券届出書の提出を免除する規定を設けるべきである。
    また、RSUのみならず、信託を活用した株式報酬スキームにより新株発行等を行う場合に、インセンティブ報酬の効果があれば、幅広く有価証券届出書の提出を免除する規定を設けることを検討すべきである。

これらの要望が実現することで、企業における株式報酬の利用が広がり、人の活躍促進に資する。

<根拠法令等>
  • ①:金融商品取引法施行令第2条の12
  • ②:企業内容等の開示に関する内閣府令第2条第5項第2号
  • ③:金融商品取引法第4条1項、金融商品取引法施行令第2条の12
No. 25. 地方公共団体の支出負担行為に関する確認作業の民間委託促進
<要望内容・要望理由>

地方公共団体の事業の効率化に向けて、業務の民間企業へのアウトソーシングが一つの選択肢となるが、実現に際しては様々な課題と障害がある。特に、地方公共団体の会計管理者の役割として地方自治法で規定される、支出負担行為に関する確認については、補助的な業務の民間委託が可能であるものの、その業務範囲は各地方公共団体の判断に委ねられている。

しかし、この補助的な業務の定義が不明瞭であるために、民間委託できる範囲を地方公共団体で決めきれず、実際には、支出負担行為確認書類の整理・仕分け・事前チェックといった最小限の業務しか委託できていない。さらに、委託先でチェックを終えた書類に間違いがないか、地方公共団体職員が確認作業を行う必要があるため、民間委託をしても事務効率が上がらないといった課題がある。

そこで、補助的な業務の範囲を明確にすること、また、民間委託を行う場合に委託先の適切な作業状況の監理等が行われることを前提に、地方公共団体職員による再度の確認・照合作業が不要である旨を、地方自治法第245条の4第1項等の規定に基づく技術的助言等によって明確にするべきである。その通達が出された場合は、監査委員の毎月例日の検査(法235条の2)等によって、適切に支出負担行為の管理が行われることが前提となる。

これにより、地方公共団体サービスを維持したまま組織のスリム化と業務効率性向上が図られ、ひいては民間に新たな雇用の機会を生み出し、地域経済の活性化が期待される。

<根拠法令等>
  • 地方自治法第170条の6、第171条、第235条
No. 26. 法人登記時の公証人による定款認証の撤廃
<要望内容・要望理由>

法人(株式会社)の設立にあたっては、登記に先立ち、公証人による定款認証が求められている(会社法第30条)。2020年に「法人設立ワンストップ・サービス」が開始した後も、この定款認証については別途の予約・面談が必要であり、手続の完全ワンストップ化・デジタル化の阻害要因となっているほか、資本金の額等に応じて3~5万円の手数料が発生するなど、起業家にとって時間・費用双方の観点で負担となっている。

法務省は、定款認証については、①定款の存否、定款の記載内容全体について明確性を確保し、会社法等の関係法令違反の有無を確認することで、定款や法人格の存立にまつわる紛争を予防する機能、②定款作成の意思の真正性を確保し、不正な起業・会社設立を抑止する機能、③定款認証の際に実質的支配者となるべき者の把握を行う機能を有するとしている(規制改革推進会議第7回スタートアップ・イノベーションワーキング・グループ提出資料、2022年4月14日)。

このうち、①については、会社法等の関係法令に適合したモデル定款の早期導入が有効である。また、定款は法人設立後は公証人による認証なしに変更することが可能であるため、定款認証が十分な紛争予防機能を担っているとは言い難い。②については、そもそも代理人による手続が認められているほか、公証人法施行規則第13条の4に定める反社会的勢力の排除については、法人銀行口座を開設する際に同勢力との関係性に係る確認が行われており、反社会的勢力の排除に係る研修等を受けていない公証人にその責を担わせるのは合理的とは言えない。③については、発起人の電子署名による本人確認と改ざん防止措置を担保することで実現可能となる。

そこで、法人設立時にモデル定款および電子署名を利用することを要件として、公証人による定款認証を不要とすべきである。

<根拠法令等>
  • 会社法第30条
  • 公証人法施行規則第13条の4
No. 27. 出勤日数の変動に伴う通勤費を考慮した標準報酬月額の随時改定の対象拡大
<要望内容・要望理由>

現行の標準報酬月額の制度は、通勤手当の単価等の変更、標準報酬月額の差が2等級以上生じる等の要件を満たす場合、随時改定の対象としている。

しかし、通勤費が実費払いで、労務の提供地が企業とされている場合、勤務日数の変更により標準報酬月額の差が2等級以上生じたとしても、固定的賃金の変動とみなさないため、随時改定の対象とはならない。

このため、全国どこからでも働けるようにするなど、従業員の多様な働き方を尊重する企業において、従業員の出勤日数の大幅な変動を実費払いの通勤費で対応する場合、通勤費の増減を標準報酬月額に適切に反映できない状況となっている。働き方の実態と乖離した標準報酬月額をもとに、従業員や企業が年間を通じて社会保険料を支払うことになるのは合理性に欠ける。

そこで、通勤費を実費払いで対応し、出勤日数が大幅に変動したため、標準報酬月額の差が2等級以上生じた場合であっても、固定的な賃金の変動に含まれると解釈し、随時改定の対象に加えるべきである。

これにより、実際の出勤日数の状況を反映した標準報酬月額の算定が可能となる。「経済財政運営と改革の基本方針2022」(2022年6月閣議決定)で「多様な働き方の促進」が掲げられる中、従業員が様々な働き方を選択しやすくすることで、企業において多様な人材が活躍できる環境を実現することが期待される。

なお、2017年4月20日の規制改革推進会議第14回投資等ワーキング・グループで、標準報酬月額に関する議論が行われた頃と比較して、人事業務のデジタル化がより一層進んでいる。将来的な課題として、報酬額の変化を的確に反映し、従業員と企業の納得感を高めるために、月毎の報酬額に応じて社会保険料を毎月算出する仕組みの検討が必要である。

<根拠法令等>
  • 健康保険法43条
  • 厚生年金保険法23条
  • 健康保険法及び厚生年金保険法における標準報酬月額の定時決定及び随時改定の取扱いについて(昭和36年1月26日保発第4号 厚生省保険局長から、各都道府県知事あて通達)
  • 「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の一部改正について」(令和3年4月1日付健康保険組合あて厚生労働省保険局保険課通知)
No. 28. 医療分野でのクラウド利用加速に向けた先進技術の活用
<要望内容・要望理由>

クラウドを用いて医療機関にサービスを提供する事業者は、そのサービス提供にあたって、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を参照・遵守している。そのため、クラウドを用いて医療機関にサービスを提供する事業者が安価かつ安全にサービスの提供を行おうとしても、使用する認証方法は当該ガイドラインに記載されている方式#8に限定されてしまい、サービスの安価かつ安全な提供に支障が生じている。また、毎年認証の登録更新が必要であるために、コストがかかっている。

一方、医療機関側でもクラウドを用いた業務効率化サービス等を利用しようとする場合に当該ガイドラインにおける認証方式に基づいて毎年証明書を発行しなければならず、手間と費用が発生している。

TLSクライアント認証は従来から用いられている方法であり、特定の端末からアクセスされていることを保証するシステムであるものの、①ユーザー単位の認証ではなくPCにログインできれば誰でも操作可能なこと、②端末内に認証情報を保存するためマルウェア等に侵入された場合に脆弱であること、③利用端末すべてに対して定期的に証明書の更新が必要であるため医療機関側のオペレーションコストが甚大となること、④主要なクラウドサービスで原則対応しておらず、現在一般的に主流となっている技術の活用に制限が生じること等の課題がある。

他方で、ハードウェアキー(FIDOセキュリティキー等)を活用した2段階認証等では、端末認証は固有のキーデバイスを所持しており、なおかつ所有者が直接操作していることが確認できる。加えてオンライン上でのユーザー認証も実施できるため、より簡単にセキュリティレベルの高い認証が実施可能であるなど、技術の進歩によって代替手段も講じられるようになってきている。

そこで、上記ガイドラインの該当箇所について、「TLSクライアント認証や、これと同水準で端末を適切に認証できる手法により認証を実施すること」等、手法の選択肢の拡大を認める記載とすべきである。

これにより、医療分野における先進技術の活用が一層進展し、業務の効率化とコスト削減を図ることが可能となる。

<根拠法令等>
  • 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5.2版(令和4年3月)48頁
(3)外国人材の活躍促進
No. 29. 在留資格「特定技能」の対象分野(鉄鋼業)の追加
<要望内容・要望理由>

鉄鋼は建設、産業機械、自動車、造船等、幅広い産業で利用されており、社会インフラに欠かせない素材である。その製造プロセスでは、原料調達・加工から製鋼・圧延等の各生産工程のほか、梱包・出荷・運搬等、様々な技能作業があり、大手高炉メーカーをはじめ鉄鋼企業では、それら企業のグループ会社のほか、協力会社が現場での様々な技能作業を担っている。

特に、国内の鉄鋼業界の従事者約21万人のうち、協力会社の従業者は約14万人を占めている。とりわけ協力会社においては、新規の採用で定員を充足できない状態が続いており、生産性向上や国内人材の確保のための取り組みを行っても、なお必要な人材を十分に確保することが困難な状況にある。協力会社の人材不足はその製造プロセスの遂行を中心として、鉄鋼生産全体に大きな影響を生じさせ、結果的に鉄鋼のサプライチェーンの円滑な維持・発展や各鉄鋼需要産業への適切な供給責任という面からみて、大きなリスク要因を生じさせる恐れがあることから、協力会社における安定的な人材確保は、鉄鋼業界全体にとって喫緊かつ重要な経営課題となっている。

そこで、特定技能制度に定める特定産業分野に「鉄鋼業」を追加するべきである。これにより、鉄鋼業界の安定的な人材確保につながると期待される。

<根拠法令等>
  • 出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の特定技能の項の下欄に規定する産業上の分野等を定める省令(平成31年法務省令第6号)
No. 30. 在留資格「特定技能」の対象分野(コンビニエンスストア)の追加
<要望内容・要望理由>

コンビニエンスストアは災害対策や公共料金の支払い、宅配便の荷物の発送等多様なサービスを提供しており、日常の生活に不可欠な社会・生活インフラとしての役割を担っている。東京や神奈川、大阪をはじめとする都市部等を除いた地方部における人材不足は深刻であり、タウンワークでの求人数に対する応募数は2022年2月時点で約0.6倍である。生産性向上や国内人材の確保のための取り組みを行ってもなお人材を確保することが困難な状況にあり、人材不足によって安定した店舗運営ひいては地域のインフラ機能にも大きな影響が生じる恐れがある。

そこで、特定技能制度に定める特定産業分野にコンビニエンスストアを追加するべきである。これにより、コンビニエンス業界の安定的な人材確保につながると期待される。

<根拠法令等>
  • 出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の特定技能の項の下欄に規定する産業上の分野等を定める省令(平成31年法務省令第6号)
No. 31. 在留資格「特定技能2号」の対象分野拡大
<要望内容・要望理由>

特定技能制度は、人手不足が深刻な特定の産業分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れる制度であり、2019年の開始から3年が経過している。

現行制度では、技能水準等の要件により、特定技能1号(14分野)、特定技能2号(2分野)に分けられている。特定技能2号は、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格として、建設業、造船・舶用工業の2分野に限定して認められている。また、特定技能2号では在留期間の上限はなく、家族の帯同が可能となる。一方、特定技能1号については、通算で上限5年までの在留であることから、受入れ企業が中長期的な視点に基づく人材育成をすることができない。また、制度開始から3年以上が経ち、在留期間上限の5年に近づく外国人が2024年には現れることになる。

そこで、建設業、造船・舶用工業分野以外でも、一定の技能水準を条件として特定技能2号に移行できるよう早期に制度整備すべきである。

これにより、企業による中長期的な人材育成が可能となるとともに、日本で技能を向上させた特定技能外国人が日本国内でさらに活躍する環境を整備することができる。

<根拠法令等>
  • 出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の特定技能の項の下欄に規定する産業上の分野等を定める省令(平成31年法務省令第6号)
No. 32. 特定技能所属機関による定期届出頻度の見直し
<要望内容・要望理由>

政府が閣議決定した「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」において、特定技能制度の活用を更に促進する姿が示されている。その実現には、受入れ企業側に課されている書類作成業務などの負担軽減が必要である。

現在、特定技能外国人を受入れている企業には受入れ状況・活動状況や支援計画の実施状況に関する届出などを四半期ごとに提出することが義務づけられている。例えば、支援計画の実施状況に関する届出については、日本語学習の機会提供や相談又は苦情への対応実施の有無などを記入するなど、一人あたり3枚の書類を届出対象人数に応じて作成しなければならない。特定技能を活用する企業によっては書類の作成に2、3日かかることもあり、受入れ企業の大きな負荷となっている。とりわけ特定技能の活用が期待されている中小・小規模事業者にとっては四半期に一度の報告義務は過大な負担である。当該報告義務に係る負担が懸念となり、特定技能制度の活用をためらう企業も存在することから、特定技能外国人の受入れを阻害する要因の1つとなっている。

そこで、定期届出の提出頻度を四半期ごとから半年ごとに見直すべきである。

これにより、受入れ企業の書類作成の負担が軽減し、特定技能制度の活用促進が期待できる。

<根拠法令等>
  • 出入国管理及び難民認定法施行規則 第19条の18第5項
No. 33. 専修学校卒業生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」取得に係る要件緩和
<要望内容・要望理由>

在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、大学等を卒業した27万人の外国人材が幅広い分野で活用している資格である。その取得にあたっては、「従事しようとする業務に必要な技術又は知識に関連する科目を専攻して卒業していること」が求められている。

このうち大学および高等専門学校の卒業生について、出入国在留管理庁は、その教育機関としての性格を踏まえ、業務と専攻との関連性を「従来より柔軟に判断」している旨を明らかにしている。一方、同じ高等教育機関である専修学校の卒業生については、専門士あるいは高度専門士の称号があれば在留資格が許可されるものの、その業務と専攻の内容に「相当程度の関連性を必要とする」こととしている(出所:出入国在留管理庁「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」)。このため、専修学校卒業生については、在留資格の取得審査が厳格で、実際の職務内容も専攻から乖離しないよう厳しく制限されている。

例えば、ホテル業に関する専修学校の専門課程を卒業した場合、ホテルの宿泊部門のうち、訪日外国人客への接客を伴うフロント業務には従事可能でも、客室管理・料飲部門・宴会部門への従事は認められておらず、ホテル業で普及しているマルチタスクも許可されない。また、コンビニエンスストア業においては、店舗運営管理や通訳・翻訳を主たる業務として許可された場合、店舗で勤務している場合に当然必要になるレジ接客、品出し等の業務(加盟店主や店長であっても必要に応じて実施するもの)が認められない。サービス現場等で業務のマルチタスク化が進むなか、専修学校の卒業生は、日本人や大学等を卒業した外国人と異なる配置やキャリアパスを強いられているのが実情である。

一方で、専修学校と同様に、高校等卒業後約2年間の修業年限を有する高等専門学校の卒業生や、短期大学を卒業した短期大学士については、在留資格「技術・人文知識・国際業務」の取得時に業務と専攻との関連性を柔軟に判断することが認められている。短期大学と専修学校は、その入学資格についても「外国において、学校教育における12年の課程を修了した者」等と基本的に等しく、修了後にはいずれも大学への編入学を認められているなど、日本の学校教育制度において同等の扱いとなっている。

そこで、専修学校卒業生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」取得にあたり、高等専門学校や短期大学の事例も踏まえ、業務と専攻との関連性要件を緩和し、柔軟に解釈すべきである。

これにより、専修学校を卒業した外国人材に一層の活躍の機会を提供することが可能となり、多様な人材の活躍促進に資する。

<根拠法令等>
  • 出入国在留管理庁「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」
  • 学校教育法第132条
  • 学校教育法施行規則第150条
No. 34. 在留資格「技能実習」における申請書類の簡素化
<要望内容・要望理由>

外国人の技能実習を行うためには、出入国在留管理庁長官と厚生労働大臣から実習計画の認定を受ける必要がある。現在、同計画の認定事務は、外国人技能実習機構(OTIT)が担っており、団体監理型では申請手続で最大55種類の書類を書面で提出することが求められている。

このうち、「技能実習計画認定申請書」、「技能実習計画」、「入国後講習実施予定表」、「実習実施予定表」については、申請者は、受け入れる実習生1名ごとに正本・副本を各1部ずつ綴じて提出する必要がある。複数の技能実習生を同一職種・同一スケジュール・同一事業所で受け入れる場合、氏名以外の記載内容は基本的に同一となるにもかかわらず、受入れ企業において当該同一書類の印刷・製本(1名あたり12ページに及ぶ)に時間を費やしているのが現状である。

そこで、提出書類の内容が氏名を除き同一である場合に限り、「技能実習計画認定申請書」「技能実習計画」、「入国後講習実施予定表」、「実習実施予定表」については、受け入れる実習生の一覧表を添付することで、正本・副本各1部にて足ることとすべきである。

これにより、官民双方において書類業務が効率化され、各社内での受入れ環境の整備やOTITが取り組む不適切事例の監査等、より重要な対応に時間を割くことが可能となる。

<根拠法令等>
  • 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律
  • 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則
(4)健康を支えるヘルスケアサービスの多様化
No. 35. 遠隔健康医療相談に係る医師要件の緩和
<要望内容・要望理由>

現行の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下「同指針」という)では、遠隔健康医療相談における「患者個人の心身の状態に応じた医学的助言」は、医師が応対する遠隔健康医療相談(医師)においてのみ可能とされる。医師以外の者が応対する「遠隔健康医療相談(医師以外)」では、看護師等医師以外の医療従事者等が、医師が監修・作成したマニュアルを用い、医師の指示下で医学的に質の高いサービスを提供することは可能であっても、「患者個人の心身の状態に応じた医学的助言」を提供することはできない。

その結果、一般的な医学的情報の提供しかできないため、相談者の望む十分な回答ができず、応対の質・相談者満足度を向上させられないという状況が生じている。また、応対者は「患者個人の心身の状態に応じた医学的助言」に該当しないよう、過度に慎重な表現へと推敲するといった事態が生じているとの指摘もある。

同指針の見直しに関する検討会では、「遠隔健康医療相談(医師)」と「遠隔健康医療相談(医師以外)」を区別する理由として、医師が持つ医療・医学の知識を根拠としている。一方で、看護師も医学的判断および技術に関連する内容を含んだ専門教育を受け、一定の医学的な能力を有していることを踏まえ、一定の医行為(診療の補助)については、その能力の範囲内で実施できるか否かに関する医師の医学的判断を前提として、看護師も実施することができることとされているが、同検討会でこのことは勘案されていない。看護師が一定の医行為(診療の補助)を実施できるとされていることについては、遠隔健康医療相談においても考慮されてしかるべきである。

そこで、同指針において、医師の指示の下で医療従事者等が遠隔健康医療相談を実施する場合の取扱いを明確化し、「遠隔健康医療相談(医師)」(またはそれと同等のもの)として認められている「患者個人の心身の状態に応じた医学的助言」を、「遠隔健康医療相談(医師以外)」においても可能とすべきである。

これにより、医師不足の状況下で看護師等の活躍の機会を拡大しつつ、遠隔健康医療相談サービスの質を向上することが可能になる。

<根拠法令等>
  • 厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(平成30年3月(令和4年1月一部改訂))
No. 36. 遠隔健康医療相談で実施可能な行為の拡大
<要望内容・要望理由>

「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下「同指針」という)では、「患者からの症状の訴えや、問診などの心身の状態の情報収集に基づき、疑われる疾患等を判断して、疾患名を列挙し受診すべき適切な診療科を選択する」こと(以下「同行為」という)は、医行為である「オンライン受診勧奨」に当たるとされている。

しかし、厚生労働省通知による医行為の解釈(=「当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断および技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為」)に照らせば、単に患者(相談者)の個別的な状態に応じた医学的な判断の上で疾患名を列挙したり、適切な診療科を案内したりする行為は、場合によっては病状悪化のリスクがある経過観察や非受診の勧奨とは異なり、「人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為」には該当せず、すなわちオンライン受診勧奨ではなく遠隔健康医療相談の範疇に留まると考えられる。

そこで、同指針を見直し、同行為を遠隔健康医療相談として、看護師等においても実施可能とすべきである。

これにより、相談者の適切な受診行動、ひいては疾患の早期発見等が可能となり、国民の健康増進につながる。さらに、不適切な診療科選択の減少や重症化の回避によって、国の課題である医療費適正化に寄与するとともに、医療機関側から見ても、対応可能な診療科に沿った患者の早期の受診やスムーズな診療が可能になる。

<根拠法令等>
  • 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(医政発第0726005号 平成30年3月(令和4年1月一部改訂))
  • 医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(医政発第0726005号 平成17年7月26日)
No. 37. 医療情報の保護に関するガイドラインの見直し
<要望内容・要望理由>

個々人のニーズにあわせた、いわゆるパーソナライズドヘルスケアサービスの需要が高まる中、その推進に向けて、現行の「医療情報の保護に関するガイドライン」、いわゆる3省2ガイドライン(以下、「ガイドライン」という)を以下とおり充実させるべきである。

  1. ① 「外部サービス」から「医療機関」へのデータ連携の明確化
    ガイドラインには、「医療機関」から「外部サービス」へのデータ連携についての記載はあるものの、「外部サービス」から「医療機関」へのデータ連携についての記載がない。明確な記載がないことによる不安は、医療機関・外部サービス提供者双方がパーソナライズドヘルスケアサービスを活用する際、リスクをとって踏み込むことを躊躇する可能性があり、ひいては国民の利益を損なう恐れがある。
    そこで、データ連携に関する国としてのユースケースを公表し、ユースケースに付随してパーソナル・ヘルス・レコード(PHR)等の外部サービスから医療機関へのデータ連携にかかる考え方、要求事項を明記すべきである。具体的には、PHR等の外部サービスから医療機関へデータ連携を許容する条件について、用途、データ項目、システム面でのセキュリティ対策要件等をガイドラインに記載すべきである。
    これにより、個人のデータを医療機関を含むヘルスケアサービス事業者に円滑に提供することが可能となり、パーソナライズドヘルスケアサービスの推進が期待される。その結果、未病・予防といった病気になる前の対策が可能となり、個人に裨益することはもちろん、国としての社会保障費の抑制につながる。

  2. ② ネットワークセキュリティの要求の明確化
    ガイドラインにはネットワークセキュリティに関する要件や前提条件等の記載がないため、利用者である医療機関等にとって要求水準が厳しいと推測され、結果として医療機関側もサービス利用に消極的となるおそれがある。現状のままでは、サービス内容に独自性を発揮したい小規模ベンダーの参入が困難になるほか、医療機関側も通信環境の再構築にかかるリスクを過大に評価し、サービス利用に消極的になることが懸念される。
    そこで、暗号化や相互認証における要求事項を再検討し、国としてのユースケースや取り扱うデータ種別等に応じて遵守すべき要求事項を定義し、公開すべきである。
    これにより、それぞれの事業者が自身の提供するサービスで、最低限どこまでのセキュリティ対応が必要かが明確となり、データを提供する医療機関等に対しても、その対策を明確に示すことが可能となるため、安心してデータの提供が可能となる。その結果、様々なパーソナライズドヘルスケアサービスの開発・利用が進むことが期待される。

<根拠法令等>
  • 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第5.2版
  • 医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン
No. 38. ヘルスケアアプリ等の開発における倫理指針の適用範囲の明確化
<要望内容・要望理由>

人を対象とする生命科学・医学系研究については、個人情報保護法を遵守したうえで、さらに「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(生命・医学系指針)の適用が求められている。一方、同指針が対象とする「生命科学・医学系研究」の定義が幅広く、企業によっては同指針を適用する研究の範囲に違いが生じており、ヘルスケアアプリ等の開発や効果検証において機会損失が発生している。

例えば、適切な受診や検査といった行動変容を促すことを目的とするような個人向けヘルスケアアプリの開発において、当該ヘルスケアアプリを介して取得した歩数や医療機関の受診状況の情報を用いて研究を実施する場合に、同指針が適用されるのかどうかは企業によって判断がわかれるところである。

そこで、ヘルスケアアプリ等開発時のデータの取り扱いに関し、「生命・医学系指針」が対象とする「生命科学・医学系研究」の範囲を明確化し、周知徹底すべきである。その際、特に、個人向けヘルスケアアプリ等から取得されたデータを用いた研究の該当性について明確化を求める。

これにより、ヘルスケアアプリ等の開発が促進され、それらを活用した個人による健康管理・予防行動の推進とともに、疾患の早期発見や適切な受診による健康寿命の延伸が期待される。

<根拠法令等>
  • 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針 第1章 第2 (1) ア、第3
No. 39. 疾患の予防を目的としたヘルスケアデータの解釈・生活改善提案の実現
<要望内容・要望理由>

高齢化に伴い、慢性疾患・生活習慣病が社会的に深刻化しており、例えば認知症患者による資産額は2017年時点で143兆円に達し、2030年には215兆円を超えるとされている(出所:第一生命経済研究所「Economic Trend」、2018年8月)。認知症に限らず、脳卒中や糖尿病、パーキンソン病等、免疫システムの制御不全が引き起こす慢性疾患・生活習慣病が社会に与える影響は大きく、介護保険・医療保険等の社会福祉に対する負担も増加している。こうした背景を踏まえると、生活習慣の改善による未病段階での疾患予防を行う仕組みを構築することは、日本経済・社会の持続可能性に重要な役割を果たす。

このような状況において、スマートウォッチや遺伝子検査サービス、腸内細菌叢検査サービス等、先端技術を活用したイノベーションが創出される一方で、日本では生体データの解釈を行うことが医師法の対象となる医行為に該当する可能性があるとされており、更なるイノベーションを起こすうえで大きな障害となっている。また、イノベーションや新しい価値創造につながる研究開発をも萎縮させる恐れがある。

ヘルスケアサービスの活用により健康に対する意識を高め、予防策をとることは国民の命や健康を害さない非侵襲の行為であり、医師法で規定されている「医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある」侵襲行為とは区別されるべきである。また、ウェアラブルデバイスで取得されたデータや血液や尿検査等健康診断レベルの検査結果の情報について、一般企業もデータの解釈に基づいて生活習慣の改善や予防策を提案するサービスができるようにすべきである。

そこで、医師法における診断行為となる、疾患の治療を目的とした「検査結果の解釈」と、疾患の予防を目的とした「データの解釈・生活改善の提案」を法的に分け、後者を一般企業でも行えるようにすることを要望する。

これにより、ヘルスケア領域においてもデータを活用したイノベーションが促進され、国民生活の向上に広く寄与することが期待される。

<根拠法令等>
  • 医師法第17条
  • 歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(医政発第0726005号 平成17年7月26日)
  • 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針
  • 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針ガイダンス
No. 40. データベース研究の生命・医学系指針におけるインフォームド・コンセント規定の見直し
<要望内容・要望理由>

人を対象とする生命科学・医学系研究においては、携わる全ての関係者が遵守すべき事項が「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(生命・医学系指針)に規定されている。将来への様々な研究への利用を目的としたデータベースやバイオバンク等においては、同意取得時点では将来の具体的研究は決まっておらず、また、データベースやバイオバンクから試料・情報を提供して研究が行われる場合、多くのデータベース・バイオバンクや研究を実施する研究者等が個々の研究対象者に対し、具体的研究目的が決まった時点で再同意を取得することは困難である。

しかし、生命・医学系指針におけるインフォームド・コンセント(IC)規定「他の研究機関に既存試料・情報を提供しようとする場合」では、将来の研究に関して包括的に同意を得ていた場合でも、立ち上がる研究ごとに具体的な研究内容を示し、繰り返しICの手続きを実施することが求められており、データベースやバイオバンク等の積極的な活用を妨げている。

そこで、データベースやバイオバンク等を活用した研究において、生命・医学系指針におけるIC規定について、将来の研究への利用・提供について包括的な同意が取得されている場合には、通知または公開で既存試料・情報を利用・提供可能となるよう以下の通り見直すべきである。

  1. ① 他の研究機関に既存試料・情報を提供しようとする場合において、「自らの研究機関において保有している既存試料・情報を研究に用いる場合」と同様に、既に同意を得ている研究の目的と相当の関連性があると倫理審査委員会において合理的に認められる場合には通知又は公開で提供可能な旨を規定すべきである。

  2. ② 「同意を受ける時点で特定されなかった研究への試料・情報の利用の手続」について、「研究者等」の手続きだけでなく「他の研究機関に対して既存試料・情報の提供を行う者」の手続きについても記載すべきである。

これにより、データベースやバイオバンク等の活用が促進され、生命科学・医学や医療技術の進展を通じて、国民の健康の保持増進、患者の傷病からの回復、生活の質の向上への貢献が期待される。

<根拠法令等>
  • 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針 第4章 第8 1 (3)、第8 7
No. 41. 医療機器の装着・測定における医行為該当性の明確化
<要望内容・要望理由>

在宅診療や遠隔診療が普及するなか、検査機器の進歩(機器の装着・測定の簡便化)に伴い、それらの機器を用いた検査に関しても、患者本人、ケアギバー等によるリモートでの実施が期待される。

例えば、近年ホルター心電計は小型化・装着方法の簡便化が進み、本人もしくは家族等ケアギバーによる装着であっても正確な測定が可能となっている。しかし、ホルター心電計の装着は、医師法における医行為に当たると解釈される場合もあるため、患者もしくは家族等ケアギバーによる装着ができず、医師等による機器の着脱のためだけに患者本人の来院が必要となり、患者のみならずケアギバーにとっても大きな負担となっている。

また、介護現場においては、血圧測定等原則として医行為に該当しないと考えられるものが通知されているものの、記載されていない行為については解釈が曖昧となり、介護士等によるケアの提供に関し、施設ごとの運用のばらつきも懸念されている。

そこで、一般人の使用による危害の恐れが小さい医療機器については、患者が来院せず、本人もしくは家族、介護士等のケアギバーが装着・測定することについて、医行為に該当しないことを通知やガイドライン等において明確化すべきである。

これにより、患者やケアギバー、医療従事者の負担軽減につながる医療機器の開発が促進され、持続可能な医療介護提供体制の構築につながると期待される。

<根拠法令等>
  • 医師法第17条
  • 医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(医政発第0726005号 平成17年7月26日)
No. 42. 治験の円滑化に向けた説明文書および同意文書の標準化
<要望内容・要望理由>

治験は人々の健康と医療の向上に資する新たな医薬品の開発に不可欠なプロセスである。治験で用いられる被験者への説明文書の作成は治験責任医師の責務とされており、治験依頼者は、治験ごとに必要な情報を盛り込んだ説明文書および同意文書の雛形を治験責任医師に提供している。この雛形は、治験依頼者ごとに多種多様であり、実施医療機関においても独自の雛形を規定している場合も多い。

そのため、治験依頼者と治験実施医療機関の間で、文書の修正・確認作業に大きな負荷がかかっており、治験の実施が遅れる要因のひとつになっている。加えて、医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP省令)や個人情報保護法の改正等説明文書および同意文書の内容に影響を与える改正が行われた場合は、改正に準拠した雛形の改訂を個々に行う必要が生じている。

また、今後普及が進むと思われる医療機関への来院に依存しない臨床試験(DCT)においては、動画や音声等の電磁的なツールを使用した被験者への説明・同意取得方法であるeConsentの活用が想定されるところ、多種多様な雛形に合わせたカスタマイズは、紙と比べて一層煩雑となり、DCT推進の阻害要因にもなりうる。

そこで、治験における説明文書および同意文書の標準的な書式を策定し、ガイダンス等に示すことを求める。

これにより、治験依頼者と治験実施医療機関の間における文書作成の負荷が軽減され、治験の円滑化が図られることで、新たな医薬品をより早く患者に届けることが可能となる。新たな医薬品の早期普及によって、より多くの人がより健康な状態で活躍する社会の実現に貢献できる。

<根拠法令等>
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第80条の2第1項、第4項、第5項
  • 医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP省令) 第9条、第10条、第32条第1項、第50条、第51条
  • 「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」のガイダンス 第9条ガイダンス1、第32条第1項ガイダンス2、第50条ガイダンス、第51条ガイダンス
No. 43. 治験審査の集約化による研究開発の迅速化
<要望内容・要望理由>

治験は人々の健康と医療の向上に資する新たな医薬品の開発に不可欠なプロセスである。日本は欧米と比較し小規模な医療機関が多く、治験に必要な実施医療機関数も多くなる傾向にある。治験の安全性・有効性と倫理性を審査する役割を持つ治験審査委員会(IRB)審査は、治験の開始、継続の適否や実施計画書の変更等、治験の開始から終了に至るまで必要になるが、実施医療機関毎に行われることが多く、それに関わる人・費用・時間の負担が大きくなっている。また、実施医療機関毎に設置されたIRBによる審査は質や迅速性も一律に担保されておらず、治験実施に時間を要する原因にもなっている。

平成20年の医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP省令)の改正により、複数の実施医療機関のIRB審査を1つのIRBに集約することが可能となっている。しかし、IRBの集約化は、実施医療機関にとって、自施設に設置しているIRBの審査収入減少につながる等の理由により、十分に進んでいない。

そこで、ガイダンス等において、治験毎に1つのIRBで審査を行うことを原則化するなど、IRBの集約化を促進すべきである。

これにより、IRB審査にかかる負担を軽減でき、治験の円滑化・効率向上が進み、早期の医薬品開発における国際的競争力向上も期待される。新たな医薬品の早期普及によって、より多くの人がより健康な状態で活躍する社会の実現に貢献できる。

<根拠法令等>
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第80条の2第1項、第4項、第5項
  • 医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP省令) 第27条
  • 「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」のガイダンス 第27条第1項ガイダンス
No. 44. 遺伝子組換え生物等の使用等における申請手続きの迅速化
<要望内容・要望理由>

遺伝子組換え生物等の使用等にあたっては、生物多様性の確保を図るため、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」により講ずるべき措置等が定められている。研究開発段階における第二種使用等(拡散防止措置を講じて行うもの)においては、省令および告知に執るべき措置が定められていない場合には、あらかじめ文部科学大臣の確認を受けた拡散防止措置を執らなければならない。大臣への確認申請において、現状では、新規申請だけでなく簡易な変更申請であっても、申請から承認まで時間を要し、また、その間に進捗状況の把握ができず承認時期も見積もれないことから、承認後に実施可能となる研究開始時期の見込みが立たず、日本における感染症の診断法やワクチン開発、あるいは、新しい医薬品の研究開発等の遂行・イノベーション創出の障害となっている。

また、軽微な変更においては報告のみで確認申請・承認は不要であるが、対象の項目が限定されている。

そこで、研究開発段階における遺伝子組換え生物等の第二種使用等拡散防止措置確認申請を迅速化するために、以下の対応を講ずるべきである。

  1. ① 変更申請について、軽微変更報告に実験管理者等の変更を含めるべきである。また実験室の追加変更等簡易な変更申請は2~3週間を目途に承認することを求める。新規申請については、毎月の審議が可能となるよう、現行の不定期の委員会開催に加えて、書面審議の活用を求める。
  2. ② 文部科学省ホームページ(ライフサイエンスの広場)等において、審議に要する期間の目安や、次回審議日程の確実な提示等、計画的な研究遂行にあたり参考となる情報を提供すべきである。
  3. ③ また、例えばe-Gov電子申請のようにシステム申請を可能とすることを求める。
  4. ④ 将来的には、申請、審議状況確認、審査結果の通知まで、申請に関わる手続きをデジタル化によりワンストップで実施できる仕組みの構築を求める。

これにより、日本における計画的な研究が促進され、一層の科学技術・イノベーション創出の振興が期待される。さらに、申請手続きのデジタル化は、リモートワークによる感染症対策や手続きの効率化、働き方改革にもつながる。

<根拠法令等>
  • 研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令 別表第一(第四条関係)
  • 研究開発段階における遺伝子組換え生物等の第ニ種使用等の手引き 軽微変更報告様式:住所等変更に係る事務連絡
No. 45. 介護報酬に関わる人員基準、加算・減算要件の解釈・運用の統一と周知
<要望内容・要望理由>

介護保険給付対象サービスに係る人員基準や加算・減算の要件は厚生労働省の基準省令や通知で示されているが、その解釈や運用は保険者(各地方公共団体)により異なる場合が多い。そのため、複数の地方公共団体にわたる事業所を抱える法人内で混乱のもととなっており、介護職員の負担増につながっている。また、それぞれの事業所を所管する地方公共団体(多数にわたる)の全てに解釈・運用を確認することは困難であり、事業所を指導している会社内部でも対応に苦慮する場面がある。

例えば、各保険者(地方公共団体)による実地指導の機会や、事業者の照会に対する地方公共団体の回答において実際に以下のような見解・取扱いの違いや不統一があった。

  1. ① 職員が育児・介護休業法による短時間勤務制度等を利用する場合の常勤換算上の扱いについて
    令和3年度介護報酬改定において、全サービスについて、「週30時間以上の勤務で常勤換算での計算上も1(常勤)と扱うことを認める」とされている。ある地方公共団体は、「グループホームでの介護従事者の日々の人員配置においても週30時間勤務者を常勤換算上1と扱ってよい」との見解を示している。他方で、グループホームについてはこれを認めない地方公共団体もある。

  2. ② 特定施設入居者生活介護での医療機関連携加算の要件について
    指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準によれば、(i)協力医療機関等に対して利用者の健康状況について月に1回以上情報を提供すること (ii)情報提供日前30日以内において特定施設入居者生活介護を算定した日が14日未満の場合は算定できない、との要件が示されている。ある地方公共団体は実地指導の場で「情報提供日は介護報酬請求月と同一月でなければならない」との解釈(明文にない要件)を示し、当該要件の不備を理由に過誤調整(返還)を指示した。他の地方公共団体からはそのような解釈を示された例はない。

これらの解釈・運用の違いは、省令や通知の文面からは読み取れず、事業者にとって予測困難である。また合理的理由(例えば地域の実情に応じた弾力的扱い等)を見出し難いものがある。

こうした介護保険制度に関わるローカルルールについては、規制改革推進会議でも既に議論されており、「規制改革実施計画」(2022年6月)において、介護分野におけるローカルルール等による手続負担の軽減に向けた実施事項として、国や地方公共団体に対する要望を随時提出できる専用窓口を設けることが明記された。

そこで、新設される専用窓口においては、文書負担以外の各地方公共団体での解釈・運用の違いといった、「合理的理由を見出しがたいローカルルール」についても事業者からの声を聴き、改善を進めるべきである。

とりわけ、規制改革推進会議の答申(2022年5月公表)でも触れられている「法令、審査基準等の根拠を明確にしていない、理解不足又は誤った解釈により制度が運用されている等の不適切な事例」として事業者から照会があった場合には内容を精査し、不適切である旨の指摘や不適切な解釈・運用に代わる対応の提示を国として行う等の対応を進めるべきである。

<根拠法令等>
  • ①令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(2021年3月19日)
  • ②-(i)指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚告19別表の10の注11)
  • ②-(ii)指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービスおよび特定施設入居者生活介護に係る部分)および指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年老企第40号第2の4(11))

2.地域活性化

No. 46. 第1種農地の農地転用許可基準の弾力化
<要望内容・要望理由>

農地法において、第1種農地の農地以外への転用が例外的に認められる基準の1つに、「農業従事者の就業機会の増大に寄与する施設」がある。この施設のために農地転用許可申請を行う場合、農林水産省通知の規定により、雇用計画、および申請者と地元地方公共団体の間での雇用協定の添付が求められる。

この雇用計画では、当該施設において新たに雇用されることとなる者に占める農業従事者の割合が、概ね3割以上となることが確実だと判断される内容が必要となる。しかし、申請者が、雇用協定の段階でこのような内容を提示することは実務上困難である。

例えば、マルチテナント型の物流施設を建設する場合、申請者である施設開発事業者が当該施設を建設し、施設運営者(当該施設従業員の雇用主)がテナントとして入居するケースが多い。この場合、建物竣工まで約3年程度の期間を要することから、農地転用許可の申請時点ではテナントが確定しなかったり、確定しても従業員の雇用条件は検討段階であったりすることがほとんどである。また、人口減少や高齢化が進む中で、大規模物流施設等多くの雇用者が必要な施設の場合や、施設に入るテナントの営業内容が高齢者の希望しないものである場合には、3割以上の雇用を確保することは実質的に難しい。

そこで、当該施設において新たに雇用されることとなる者に占める農業従事者の割合が概ね3割以上(同通知にある「特別基準」が設定されている場合にあっては、当該特別基準、以下同)になることが確実でなくても、雇用計画に3割に満たなかった場合の是正措置を併記し、是正措置が実現した場合は、その雇用計画を農地転用許可申請の要件を満たすものとすべきである。是正措置としては、①農業従事者の割合が3割以上になるように、物件所在の地域に隣接する市町村の農業従事者まで雇用対象を拡大する、②そもそもの農業従事者数が少なく①も難しい場合は、施設所在地方公共団体と協議のうえ、適切な雇用割合を決める等が考えられる。

これにより、大型施設の建築が進み、多くの雇用創出と税収増加の観点から、地方創生に寄与することが期待される。

<根拠法令等>
  • 農地法第4条第6項第1号ロ
  • 農地法施行令第4条第1項第2号イ
  • 農地法施行規則第33条第2号
  • 農地法の運用について(技術的助言)
No. 47. 地方産品の試飲・試食等企業主催イベントに関する食品衛生法の緩和
<要望内容・要望理由>

企業が産直市や日本酒有料試飲会等を開催し、飲食イベントでカクテルを作ったり、生ビールを注いだり、調理済食品を食器に盛って販売する場合、食品衛生法の「飲食店営業」に該当し営業許可が必要となるとともに、食品衛生法施行条例「営業施設の基準」を基に都道府県が別途定める基準に沿った施設を設置しなければならない。これは手続面(現地保健所等の事前相談、図面等書類準備、現地調査対応、手数料)でも経済面(専門会社による仮設区画、給排水設備、照明、空調等の設置解体工事)でも、企業に重い負担を課すこととなっている。

しかし、性格が類似している地域の祭りの屋台等では、地方公共団体の判断により営業許可は不要で、営業届等で済む場合がある。企業イベント等で飲料物や加熱調理済の軽食等のみを提供する場合でも、祭りの屋台と同等の施設で、飲料・食品の保管温度に十分に配慮し、調理済食品のみを提供するなど交差汚染が発生しづらい環境では一般的に衛生上のリスクが低く、祭りの屋台と同様に、食品衛生法施行令において届出でよいとされる「公衆衛生に与える影響は少ない営業」であると考えられる。

そこで、食品衛生法施行令で営業許可が必要とされている「飲食店営業」から「企業が主催するイベント等で公衆衛生への影響が少ない調理を行う食品販売業の場合」を除くとともに、同施行令で届出でよいとされる「公衆衛生に与える影響が少ない営業」に加えるべきである。

これにより、企業が観光資源発掘や地方産品の販路拡大に資するイベントを開催する際に、経済的・時間的負担を軽減し、地方の魅力をPRするチャンスの拡大が期待される。

<根拠法令等>
  • 食品衛生法第54条、第55条、第57条
  • 食品衛生法施行令第35条、第35条の2
No. 48. 無操縦者航空機の試験的商用飛行の実現
<要望内容・要望理由>

過疎化が進む離島や山岳部では、物流サービスの持続可能性の確保が深刻な課題となっている。そのようななか、政府が閣議決定した「空の移動革命に向けたロードマップ2021」において、2024年度にいわゆる「空飛ぶクルマ」による初期的な荷物輸送の実現を目指すことが示された。この目標達成に向けては、無操縦者航空機の社会実装に向けた試験飛行を加速させる必要がある。

現行制度では、無操縦者航空機は「操縦者が乗り組まないで飛行することができる装置を有する『航空機』」と定義されており、ドローン等無人航空機とは航空法上の取り扱いが異なる。耐空証明のない無操縦者航空機は、航空法第11条の但し書によって、国土交通大臣の許可を受けた場合に限り試験飛行は許可されるものの商用飛行は許可されない。耐空証明を取得するためには膨大な飛行試験が必要となることから、離島や山岳部等にエリアを限定し商用に利用しつつ飛行試験を可能にすれば社会実装を進めやすくなる。なお、ドローン等の無人航空機は、耐空証明なしでも商用飛行が可能であり、社会実装に向けた試験飛行が進んでいる。無操縦者航空機と機体の重さがそれほど変わらない農薬散布用無人ヘリコプターについても、2015年の通知「空中散布を目的とした無人ヘリコプターの飛行に関する許可・承認の取扱いについて」により、商用の試験飛行が許可されている。

そこで、①耐空証明のない無操縦者航空機が、離島や山岳部等安全性が担保された場所において、試験的に物流用途の商用飛行ができるようすべきである。例えば、2015年の通知「空中散布を目的とした無人ヘリコプターの飛行に関する許可・承認の取扱いについて」を参考にして、無操縦者航空機について試験的商用飛行が可能となる条件、手続等を通知で示すことが考えられる。

加えて、②自作航空機に関する試験運行等の許可申請で定める承認手続(4か月ごとに更新)について、試験運行を加速させるために承認期間の拡大(4か月から米国並みの2年)や、離発着場を一定程度の広範なエリアに設定した飛行を許可するよう求める。

これにより、無操縦者航空機を活用した物流等サービスの社会実装が加速すると同時に、試験飛行の物流により離島や山岳部での暮らしの改善も期待される。なお、無操縦者航空機はいわゆる「空飛ぶクルマ」の原型であり、これを早期に社会実装化することは、政府が「空の産業革命に向けたロードマップ2021」において掲げる“空”モビリティ施策の強化の礎となる。

<根拠法令等>
  • 航空法第11条、第87条
  • 平成14年3月29日制定国土交通省航空局安全部航空機安全課発行通達(国空機第1357号)
No. 49. 国有林野を活用した地熱発電事業における、再生可能エネルギー発電事業計画認定条件の緩和
<要望内容・要望理由>

地熱発電をはじめとする再生エネルギー導入のため国有林野を開発し、再生可能エネルギー発電事業計画の認定を得る場合、国との間で貸し付け等の協議を開始していることを証明する書類(以下、証明書)を申請の際に添付すれば、再生可能エネルギー発電事業計画は一旦認定される。

しかし、この証明書は契約を確約するものではなく、認定の翌日から180日が経過するまでに国有林野貸借契約がない場合は、認定が取り消されてしまう。この貸借契約の正式な締結までには、資金調達の協議や審査、保安林解除範囲の特定等が必要になるが、そもそも仮の事業計画の認定では、銀行等と資金調達の協議すら開始できないのが実情である。

180日経過すると取り消すという制度は、太陽光発電事業で賃貸借契約あるいは地権者の合意がないまま認定を取得し、取得した認定を転売したりすることを防ぐ趣旨である。地熱開発では、契約前から事業者が地権者(今回の場合は国)と協議を行い、同意を得て蒸気噴出確認等を自費で行うなど契約を前提とした投資を行っており、そのようなリスクは考えにくい。

そこで、国有林野を活用する地熱発電事業について、再生可能エネルギー発電事業計画認定を得るために証明書を添付して申請した際は、認定を取得できるとすべきである。

<根拠法令等>
  • 再生可能エネルギー電気の促進に関する特別措置法第9条第1項
  • 風力発電・地熱発電に係る国有林野の貸付等手続きマニュアル
No. 50. 一般送配電事業者の地域福利増進事業等における所有者等関連情報の利用に関する本人同意手続きの廃止
<要望内容・要望理由>

一般送配電事業を営む各社では、事業を進めるにあたって、関係する土地の土地所有者等関連情報(以下、「関連情報」という)を取得し、所有者との任意交渉のうえで、地域福利増進事業である一般送配電設備を建設する。その関連情報の取得に際しては、国や地方公共団体を除き、本人の同意を得る必要がある。

しかし、人口減少等の社会情勢の変化から所有者不明の土地(以下、「不明土地」という)が増加しており、居住者がなく所有者が不明の登記上の住所に書面を送付しても、宛先不明で同意なしとみなされてしまう。また、居住者がいる場合でも、意思表示がなされないケースもあるなど、本人同意の取得が困難な状況もある。以上から、同意取得手続きを経て、関連情報の提供がなされることは少なく、所有者探索と事業計画の変更に多大な時間とコストがかかっている。

十分に探索を行ったうえで所有者が判明しなかった場合、土地の使用権に係る裁定申請(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法第10条)を経て、有期限での利用が可能となることもあるが、不明であった土地所有者が現れた場合、その利用期間の更新について改めての交渉が求められる。送電線等の設備用地は半永久的な土地利用が必要であり、リスクを回避する観点からは、裁定申請は活用されにくい状況にある。

このため、関連情報が得られない場合には、当該地を外すため事業計画の変更を余儀なくされることがあり、低コストかつ円滑な送配電事業推進の支障となっている。

そこで、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法を改正し、公益性の高い一般送配電事業者の実施する地域福利増進事業においては、関連情報取得にあたり土地所有者の同意手続きを廃止すべきである。なお、地域福利増進事業は、不特定多数の事業者・個人が使用できる事業制度ではなく、関連情報の取得・利用にあたっては、会社名称や社印、個人情報の管理措置の提出と地方公共団体の受理・承認が必要であることから、同意手続きを廃止しても、関連情報の悪用等は阻止できるものと考える。

これにより、送配電網の整備において、所有者不明土地の利用が円滑化され、再生可能エネルギー等の導入拡大、ひいてはカーボンニュートラル目標の達成に資することが期待される。

<根拠法令等>
  • 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法第39条第3項
No. 51. にぎわいある街づくりに向けた道路占用に係る手続のワンストップ化
<要望内容・要望理由>

道路を占用して路上に飲食施設等を設置しようとする際、指定区間内の国道では、歩行者利便増進道路制度に基づき、オンライン上で公開された道路占用許可基準および道路使用許可基準の確認事項を満たす場合、申請者は道路管理者および都道府県警察へ事前相談を行うことなく、道路占用許可および道路使用許可を「道路占用システム」によりオンラインで一括申請することができる。

他方、指定区間内の国道を除く、地方公共団体が管理する道路(指定区間外の国道、都道府県道、市区町村道)は、「道路占用システム」の対象とされていない。政府は「デジタル社会の実現に向けた重点計画」において、「民間事業者等が社会経済活動を行うために地方公共団体に対して行う申請・届出等については、原則として、既存の共通機能であるe-Gov等を活用した行政手続のオンライン化・標準化を図ること」としており、同計画内で、地方公共団体が優先的にオンライン化を推進するべき手続として定める道路占用許可申請についても、e-Govを利用したオンライン化の促進を検討している。

そこで、①デジタル庁や国土交通省が中心となり、地方公共団体における道路占用許可申請について、e-Govを利用した標準化した形での手続のオンライン化の早期実現を図るべきである。その上で、②「道路占用システム」とe-Govのシステム間直接連携等により、指定区間内の国道とその他の道路を同時に占用しようとする場合も、2つのシステム上でそれぞれ手続を行うのではなく、1つのシステム上でワンストップに行えるようにすることで、利便性を向上させるべきである。

これにより、道路占用に係る手続がオンライン上でワンストップサービスとなれば、飲食店等が屋外客席を設置することがより容易になり、オープンスペースの活用が進み、にぎわいのある魅力的な街づくりに貢献することが期待できる。

<根拠法令等>
  • 道路法第32条
  • 道路交通法第77条、第78条
  • デジタル社会の実現に向けた重点計画(2022年6月閣議決定)
No. 52. たばこ販売の出店距離規制の撤廃
<要望内容・要望理由>

コンビニエンスストア(以下、「CVS」という)は、食料品から嗜好品まで様々な商品を販売し、地域消費者の利便性向上に寄与している。

しかし、たばこの販売においては、たばこ事業法および施行規則によって、その所在地の区分に応じて既存たばこ販売店舗と25~300メートルの離隔を取る必要があり、必ずしも販売できるとは限らない。たばこはCVSの利益を支える主要商品であり、その販売が可能であるかは、CVSの出店候補地の選定において重要な判断要素となるが、すでにたばこ販売店が近隣にある場合、離隔基準を満たせず、出店ができないことがある。このため、CVSニーズの高い立地、商圏であっても、出店を果たせない候補地が全国に多々存在する。また、既設のたばこ販売店には、たばこ販売の許可を取得したものの販売実態がない店舗があり、CVSの出店を妨げている例もある。

そこで、たばこ事業法とたばこ事業法施行規則を改正し、出店距離規制を撤廃することで、CVSにおけるたばこ販売の自由度を高め、すべての利用者に利便性の高い店舗・サービスを提供できるようにすべきである。

これにより、CVSの出店は、都市部のみならず、地方や高齢者の買い物負担を軽減でき、出店エリアの利便性を向上させることとなり、地域活性化の推進に資することが期待される。

<根拠法令等>
  • たばこ事業法第23条第3項
  • たばこ事業法施行規則第20条第2項
No. 53. 社会的損失の抑止に向けた相続手続の効率化
<要望内容・要望理由>

わが国国内の年間死亡者が140万人を超え、なおも増加傾向にあるなか、相続人や行政・司法機関、金融機関等が行う相続手続に係る負担が大きな社会課題となっている。その一つに、相続手続に関する諸制度が書面を前提とし、本人意思の確認に捺印や対面を求められることがある。

例えば、戸籍証明書は未だ窓口・郵送で交付されるため、収集する相続人や提出先である金融機関等の事務負担が大きい。また、相続税申告や相続登記の申請等各種手続時に添付する遺産分割協議書は相続人全員の署名捺印を必要とするため、とりわけ相続人が多く、遠方に居住しているケースでは多大な労力が必要となる。そのほか、各関係機関において法定相続人であることを確認する際、相続人・被相続人の戸籍証明書一式を都度提出する必要があり、相続人側、関係機関側双方で都度提出・確認の手間を要している。

そこで、相続手続を効率化すべく、各種書類や制度について次の通り早期に見直すよう求める。①手続に必要な戸籍・除籍・改製原戸籍謄抄本#9を電子的に交付すべきである。②遺産分割協議書や遺言内容についてマイナンバーカードの電子署名機能を用いた電子的な作成を容認すべきである。③マイナンバーカードを用いた法定相続人の認証および、同意を前提とした関係機関でのデータ参照を可能とすることで、相続手続全体のワンストップ化とワンスオンリーを実現すべきである。なお、法定相続人のオンライン認証は、公的個人認証(JPKI)を利用した民間サービスで行えるものとすることが望ましい。

これにより、相続人や各関係機関における相続手続の負担が大幅に軽減され、デジタル技術によるサポートや行政側からの通知により、被相続人や相続人の知識不足に起因する無用のトラブルや手続漏れの防止も可能になる。また、資産承継準備の環境整備が進むことで、資産凍結や相続トラブルといった社会的損失の抑止にも資する。2024年4月の相続登記の義務化を視野に入れ、手続のデジタル化によって相続人や関係機関の負担を軽減すべきである。

<根拠法令等>
  • ① 戸籍法第10条の3
  • ② 民法第968条、第969条、相続税法施行規則第1条の6第3項第1号、不動産登記令第13条、第19条
  • ③ 戸籍法第10条の2第3項、相続税法施行規則第16条第3項、不動産登記規則第247条

3.グリーントランスフォーメーション(GX)

No. 54. グリーン成長実現に向けた事業者間連携に関する独占禁止法上の留意点の明確化
<要望内容・要望理由>

グリーン成長の実現に向けては、研究開発、設備の投資・運営、物流など様々な分野において、事業者間の連携による取り組みの必要性が高まっており、グリーン成長の実現に向けた連携の多くは促進されるべきものである。しかし、そのような連携(その準備・検討段階における情報交換活動を含む)が独占禁止法違反とならない条件や具体例は不明確であり、法的不確実性があることが事業者間連携の障害となるおそれがある。

そこで、公正取引委員会は、グリーン成長の実現に向けた事業者間連携に関し、それが独占禁止法違反となるかどうかを事業者が容易に判断できるような明確な条件や具体例を示し、こうした事業者間連携が促進される事業環境を整備すべきである。

<根拠法令等>
  • 独占禁止法第2条第6項・第3条(不当な取引制限)、第2条第9項・第19条(不公正な取引方法)等
No. 55. 投資法人の投資対象拡大を通じた脱炭素化の推進
<要望内容・要望理由>

GXの推進に向け、脱炭素関連資産への投資を促進するために、投資家に安定的な投資機会を提供することができる投資の受け皿を作ることが必要であり、投資法人を有効に活用することが考えられる。

しかし、現在は、投資法人の投資対象に、再生可能エネルギー発電施設は組み入れることができるものの、その他の脱炭素関連資産(例えば二酸化炭素の回収・貯留装置、蓄電池等)を組み入れることはできない。

GXの推進に向け、「脱炭素関連資産」を投資法人の投資対象に加えるべく、「投資信託及び投資法人に関する法律」等を見直すべきである。なお、脱炭素関連資産については、現在技術開発中で実装に至っていないものも多いが、今後の技術の進展等も踏まえ、事業者のニーズや当局の政策的観点から、何を「脱炭素関連資産」として規定するかを検討すべきである。

<根拠法令等>
  • 投資信託及び投資法人に関する法律第2条1項・12項
  • 投資信託及び投資法人に関する法律施行令第3条
No. 56. 都市バイオガス設備の運営に係る規制緩和
<要望内容・要望理由>

食品廃棄物から得られたエネルギー資源の有効利用のため、主に都市部に所在する建物内の食品廃棄物をリサイクルする、バイオガス設備の運用が検討されている。具体的には、建物所有者の保有するバイオガス設備を用いて、当該建物で営業する事業者が排出する食品廃棄物を一括してリサイクルし、発生したバイオガスを発電や発熱に利用するとともに消化液を肥料として活用することが想定されている。

バイオガス設備の運用に際しては、廃棄物処理法第7条により、一般廃棄物の収集運搬および処理に関する業の許可(以下、業許可という)が必要となるが、処理、運搬の事業者が多数いるといった事情により、新たに許可をしないこととする地方公共団体もあるなど、業許可を得ることが困難な状況である。

また、廃棄物処理法第9条の8に規定される、環境大臣による再生利用認定制度の認定を受ける方法もあるが、同法施行規則第6条の2において、食品廃棄物は同認定の対象外である「通常の保管状態の下で容易に腐敗し、又は揮発する等その性状が変化することによってその生活環境の保全上支障が生ずるおそれがあるもの」と判断されている。加えて、同法施行規則第6条の3において、同認定の要件として「燃料として使用される再生品を得るためのものでないこと」とされているため、バイオガスの生成は認定の対象外とされる懸念がある。

しかしながら、廃棄物処理法第3条に規定される通り、事業者は排出する廃棄物について排出事業者責任を負い、その処理を委託する場合は業許可を持つ処理業者に委託する必要があるとされているため、一般廃棄物処理にかかる一般的な事情に基づき、地方公共団体が、事業系一般廃棄物の処理にかかる業許可について判断する現行制度は合理性に乏しい。

さらに、食品廃棄物の冷蔵室等による分別保管、専用車による運搬や脱臭装置の設置といった適切な収集、運搬、保管を確保できる状況においては「生活環境の保全上支障が生ずるおそれ」は無いと判断できるため、食品廃棄物を上記認定の対象とすることは可能であると考えられる。また、バイオガス発電・発熱はクリーンな方式として注目されており、カーボンニュートラルの実現に貢献するものである。

そこで、事業系一般廃棄物の処理にかかるもので、かつ、廃棄物処理法第7条および同施行規則第2条の2、第2条の4に定める業許可の基準を満たす場合においては、地方公共団体による業許可がなされるべきである。さらに、適切な収集、運搬、保管の確保が可能で「生活環境の保全上支障が生ずるおそれ」は無いと判断できる状況においては、食品廃棄物であっても再生利用認定制度の対象とするよう要件を緩和し、バイオガス設備の柔軟な運用を可能とすべきである。

これにより、適切な食品廃棄物の処理および有効利用が促進され、日本における食品廃棄物の有効利用やカーボンニュートラルの推進が期待できる。

<根拠法令等>
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律第3条、第7条、第9条の8
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則第2条の2、第2条の4、第6条の2、第6条の3
  • 再生利用認定制度申請の手引き(廃棄物の処理及び清掃に関する法律第9条の8及び第15条の4の2に基づく廃棄物の再生利用に係る特例制度の申請要領)
No. 57. 郊外型水素スタンドにおける貯水槽設置要件の緩和
<要望内容・要望理由>

カーボンニュートラルに向けた水素社会の実現のため、燃料電池自動車等の燃料となる水素を供給する水素スタンドの設置拡大が図られている。

現行の一般高圧ガス保安規則では、圧縮水素スタンドに用いられる蓄圧器には散水装置の設置が求められている。郊外型スタンドでは、防消火設備として防火水槽の設置が求められており、防火水槽を通じて散水装置に水を供給することが必要とされ、上水道から散水装置への水の直接供給が認められていない。

一方、都市型スタンドでは、温度上昇防止措置を講じることを要件に、貯水槽を介さずに上水道から散水装置に水を直接供給することが認められる。貯水槽の設置には広い場所を必要とし、設置コストもかかることから、貯水槽の設置が郊外型の水素スタンドの設置の障壁となっており、水素スタンドの普及に遅れが生じている。

そこで、現行一般高圧ガス保安規則に基づき都市型スタンドに求められる要件と同等の安全措置を講じることを前提に、郊外型水素スタンドの散水装置についても、上水道からの水の直接供給を認めるべきである。

これにより、郊外型スタンドにおいても貯水槽が不可欠ではなくなるため、水素スタンドの設置場所として可能な場所の選択肢が拡大するとともに、初期投資の負担軽減のみならず、貯水槽の点検が不要となり点検工程の効率化等にもつながり、スタンドの普及促進につながる。

<根拠法令等>
  • 一般高圧ガス保安規則第7条の3第1項、第2項
  • 高圧ガス保安法令関係例示基準資料集(高圧ガス保安協会)59の3、31
  • 「高圧ガス保安法及び関係政省令等の運用及び解釈について」(内規)(基本通達20200715保局第1号)
  • 「一般高圧ガス保安規則の機能性基準の運用について」(基本通達20180323保局第14号)
No. 58. 脱炭素社会に向けた環境配慮型コンクリートの活用の促進
<要望内容・要望理由>

セメントを産業副産物に置換する等により、製造時の低炭素化を実現した環境配慮型コンクリートの開発が進んでいる。このうち、セメントを使用しないコンクリートについては、建築基準法第37条の定める指定建築材料として認められていない。そのため、セメントを使用しないコンクリートを、建築物の基礎や主要構造部等の部分に使用する場合、建築基準法第20条により、建築物ごとにその構造方法について国土交通大臣の認定を受ける必要がある。

そこで、建築基準法第37条第1項第2号に掲げる、建築材料ごとの安全上、防火上、衛生上必要な品質に関する技術的基準を定めた平成12年建設省告示第1446号を改めて、コンクリートにセメントを不使用の場合も評価の対象とすることにより、セメントを使用しないコンクリートを指定建築材料として利用することができる道を拓くべきである。

これにより、セメントを使用しないコンクリートが指定建築材料として国土交通大臣の認定を受ければ、建築物への活用が促進され、建築材料の低炭素化が進むことが期待できる。とりわけ、高さが60メートル以下の建築物については、セメントを使用しないコンクリートを用いる場合も、建築物ごとの構造方法への国土交通大臣の認定が不要となるため、手続の大幅な簡素化が期待できる。

<根拠法令等>
  • 建築基準法第37条
  • 建築物の基礎、主要構造部等に使用する建築材料並びにこれらの建築材料が適合すべき日本工業規格又は日本農林規格及び品質に関する技術的基準を定める件(平成12年建設省告示第1446号)
No. 59. 非化石系軽油代替燃料の製造(混合)承認義務等の緩和
<要望内容・要望理由>

陸上輸送や空港・港湾・工場といった事業場で事業者が利用する軽油については、温室効果ガス排出削減に資する代替燃料として、非化石系燃料であるバイオディーゼル等の軽油代替炭化水素油(以下、軽油代替炭化水素油)が注目され、排出削減を目指す事業者から利用拡大が望まれている。2050年のカーボンニュートラルを見据え、中長期的な技術開発が必要とされる一方、短期的に温室効果ガスの排出削減に資する方策も、近年のSDGsの流れからも必須である。

軽油代替炭化水素油は、既存の流通・車両のシステム・インフラをそのまま利用できる性質を備えており、一部製品は欧米で既に流通が拡大している。しかし地方税法においては、軽油代替炭化水素油は軽油とは異なる区分とされるため、現状これらを軽油と混和する場合、また、自動車用燃料として譲渡(販売)・消費する場合には、都道府県知事の事前承認申請が必要とされる。そのため、個別の供給施設を設ける、給油の際は一旦タンクを空にするなどの対応に迫られ、流通コストや手間が追加の負担となっている。

そこで、揮発油等の品質の確保等に関する法律等関係法令に基づく安全性確保や、租税回避行為につながらないことを前提に、軽油の定義とは別途、「軽油代替炭化水素油」関連項目を新設し、現在混和・譲渡・消費時に必要とされている手続きを簡素化するべきである。

これにより、現在流通の支障となっている地方税法上の製造(混和)、自動車用燃料としての譲渡(販売)・消費の事前承認義務等の課題を解決することができ、流通コスト低減、給油(軽油との混合利用など)の利便性の向上などにより、温室効果ガス排出削減につながる軽油代替燃料の普及に資する。

<根拠法令等>
  • 地方税法第144条
  • 地方税法第144条の32 第1項第1号、3号、4号
  • 地方税法施行規則第8条の41、42、43
No. 60. 容量市場における蓄電池の扱いの改善
<要望内容・要望理由>

脱炭素社会の実現に向け蓄電池の導入拡大が期待される中、導入促進のためには設備の持つ能力が事業価値として評価され、収益を獲得できる市場環境の整備が重要である。

蓄電池の導入の促進が期待される中、蓄電池が収益を得られる市場のひとつである「容量市場」においては、現在、「発動指令電源」の一種とされる蓄電池には、一律3時間の運転継続時間が条件として設定されている。

他方、蓄電池は、種類によってそれぞれ最適な稼働時間が異なっており、一律3時間の運転継続時間を求められることは、種類の特性に応じて効率的に能力を発揮することが困難な場合もある。

このように、容量市場における蓄電池の位置づけに不明確さが残る中、電源の特性を効率的に発揮できていない現状とあいまって、蓄電池に対する大規模な投資判断につながりにくいのが現状である。

そこで、容量市場における蓄電池の扱いについて、

  1. ① 容量市場における「電源種別」の項目に単独で蓄電池の区分を新設することにより、蓄電池の位置づけを明確化すべきである。
  2. ② 蓄電池の運転継続時間を細分化している英国の容量市場も参考に、日本の容量市場における蓄電池に求められる運転継続時間を、例えば1時間ごとに細分化し、選択可能とすべきである。

これにより、事業者の蓄電池設備への大規模な投資の後押しにつながり、容量市場に多様な蓄電池設備の参入が促されることとなり、日本全体の蓄電池の導入の拡大が期待できる。

<根拠法令等>
  • 電気事業法第28条の41
  • 容量市場メインオークション募集要綱(対象実需給年度:2024年度)p10 3.(5)
No. 61. 非化石証書および非化石価値取引市場の改善
<要望内容・要望理由>

事業の使用電力を再生可能エネルギー100%で賄うことを目指す国際イニシアティブ「RE100」においては、加盟企業に一定の基準(「Technical Criteria(技術基準)」)を満たすことを求めている。同基準内の再エネの定義については、新たな再エネが電力系統に追加されることを重視する観点から、設備の運転開始から15年以内であることを条件とする改訂案が提案されている(2023年3月に改訂予定)。

しかしながら、日本の非化石価値取引市場では、非化石証書の入札の際に需要家が設備の稼働開始年等の情報を選択して調達することができないため、案の通りに改訂が実現した場合に、当該非化石証書が、RE100が定める再エネの定義に該当しないリスクが生じることとなる。

また、非化石証書の有効期限は証書を取得したX年度中とされている。企業としては、X年度に必要な証書の量を確実に確保する必要があるが、証書の価値を翌年度に繰り越せないため、年度内の購入量について慎重にならざるを得ない。翌年度5月に行われるX年度の最終オークションが証書の不足分を補填する機会にはなるものの、未約定となるリスクがある。

そこで、

  1. ① 日本の非化石証書取引市場における入札の際に、トラッキング情報として「稼働開始年」等を需要家が選択して調達できるようにすべきである。
  2. ② 非化石証書の有効期間を、「X年度およびX+1年度」まで延長すべきである。

これにより、需要家は、非化石証書を国際的に評価される形で入手できる機会が広がり、日本企業の国際競争力の維持・強化に資する。また、非化石価値取引の活性化によって、発電事業者にとっても、証書収入の増加が期待できるようになる。

<根拠法令等>
  • 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法第9条
  • エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律第7条
  • 地球温暖化対策の推進に関する法律第26条
No. 62. 屋上への太陽光パネル設置時における架台の下部空間の有効活用
<要望内容・要望理由>

カーボンニュートラルの実現に向けて再生可能エネルギーの更なる導入を図るうえで、太陽光発電設備の設置の場所として、建築物の屋上は重要な選択肢のひとつである。

しかし、建築物の屋上に太陽光発電設備を設置する際、太陽光パネルを支える架台の下部の空間を屋内的用途(居住、執務、作業、集会、娯楽、物品の陳列・保管・格納等)に供すると、当該発電設備および架台が建築物の主要構造部に該当するとみなされ、下部空間が床面積として容積率の計算対象等に算入される。そのため、例えば既に建物の屋上にある電気・空調等の設備機器の上部の空間に、太陽光パネルを事後的に設置することなどを断念せざるを得ない場合がある。

そこで、通常屋外に設置される電気・空調等の設備機器や、屋上庭園・休憩スペース等の上部の空間に太陽光発電設備を設置する場合、防火・安全上問題がないことを前提に、建築基準法上の容積率における床面積の計算対象等から除外すべきである。

これにより、太陽光発電設備の屋上設置の更なる推進に繋がる。

<根拠法令等>
  • 建築基準法第2条第5号
  • 建築基準法施行令第2条第1項第3号
  • 「既存建築物の屋上に太陽電池発電設備を設置する際の建築基準法の取扱いについて」(技術的助言)(国土交通省住宅局建築指導課長通知第1152号)
No. 63. 風力発電所における保安通信施設要件の緩和
<要望内容・要望理由>

現在、離島等の僻地で小規模の風力発電所を導入する際、電気の供給と保安に必要な電力保安通信用電話設備とともに、電力保安通信線として企業が独占使用可能な専用ネットワーク回線(専用線)を設置することが求められている。しかし、僻地等で小規模発電所を設置する場合、専用線の使用料金が中継点の数に応じて課金されるケースが多いため、維持コストが増嵩する傾向にある。

専用線を利用しなくても、一般回線やインターネット回線、携帯回線等の複数回線を利用できれば、震災等の災害時に全回線が同時にダウンする可能性は極めて低いものと推定され、逆に回線混雑が生じた場合は系統から切り離すなど安全性確保のための措置を講じることで、災害への対応力を高めることが可能となる。

また、情報伝送装置で使用される出力制御用の通信回線についても、電力保安通信線と同様、専用線の利用が事実上前提となっているケースがあり、専用線の利用のため、維持コストが増嵩する傾向にある。

そこで、①専用線の利用を求められる電力保安通信線について、携帯電話やネット回線等の一般回線で代替できるように現行の要件を緩和すべきである。また、②出力制御用の通信回線に関しても、一般回線や携帯電話、ネット回線で対応できることを明文化すべきである。

当該要件の緩和に伴い維持コストが低減することによって、へき地等における小規模発電所の設置、ひいては電力の地域分散の進展が期待される。また、風力発電所の設置促進により再生可能エネルギーの活用が進み、CN2050への寄与も大いに期待できる。

<根拠法令等>
  • 電気設備に関する技術基準を定める省令 第50条2
  • 電気設備の技術基準の解釈 第135条、第136条、第225条
以上

  1. 経団連「Society 5.0の扉を開く―デジタル臨時行政調査会に対する提言―」(2022年4月公表)参照
  2. 例えば2019年~2020年の開業率について、米国9%、英国12%、フランス12%、ドイツ9%に対し、日本は5%。また、周囲に起業家がいる人の割合について、米国39%、英国33%、フランス33%、ドイツ24%、中国46%に対して、日本は19%(出所:中小企業庁「2022年版中小企業白書」)
  3. 経団連「スタートアップ躍進ビジョン ~10X10Xを目指して~」(2022年3月公表)参照
  4. 経団連「Innovating Migration Policies ―2030年に向けた外国人政策のあり方―」(2022年2月公表)参照
  5. 教育(エデュケーション)と技術(テクノロジー)の融合によって教育のあり方を変えていくこと
  6. 優れたスタートアップとして経済産業省に選定されたスタートアップ
  7. バーチャル秘書サービス、電話応答サービス等の付加的サービスの法的性質については、「法的には本件契約と別個独立の契約か,そうでないとしても建物賃貸借契約としての本件契約に付加された付帯サービスにすぎないものであって,本件契約の基本的な法的性格の判断に影響を及ぼすものとはいえない」と判示
  8. 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第5.2版(令和4年3月)では、「オープンなネットワークにおいて、IPsecによるVPN接続等を利用せずHTTPSを利用する場合、TLSのプロトコルバージョンをTLS1.3以上に限定した上で、クライアント証明書を利用したTLSクライアント認証を実施すること」と記載
  9. 戸籍法の改正により戸籍の様式等が変更される際、新しい様式の戸籍に書き換えられる前の戸籍

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