Policy(提言・報告書) CSR、消費者、防災、教育、DE&I  「次期教育振興基本計画」策定に向けた提言 -主体的な学びを通じ、未来を切り拓くことができる多様な人材の育成に向けて-

2022年10月11
一般社団法人 日本経済団体連合会

はじめに

政府の中央教育審議会(以下「中教審」)では、現在、「次期教育振興基本計画#1」(以下「次期計画」)策定に向けた検討を行っている。現行の第3期教育振興基本計画(以下「現行計画」)が策定された2018年(平成30年)以降、国内外の環境は極めて大きく変化している。これに伴い、教育や人材育成の内容・手段も大きな改革が求められている。

具体的には、第一に、新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延がSociety 5.0への変革の起爆剤となって、時間・場所を問わない遠隔・オンライン教育の重要性が広く認識された。世界と比べて周回遅れであることが露呈したデジタル化は教育界においても大きな課題である。第二に、ロシアによるウクライナ侵攻は、エネルギー安全保障への危機感の高まりやサプライチェーンの寸断等による価格の上昇など、企業のみならず国民の生活にも影響を与えているほか、これまでの自由で開かれた国際秩序をも脅かしている。国・地域などの多様性を尊重しつつ、社会課題の解決や人々のWell-beingの向上に貢献する人材の育成がより一層求められている。第三に、気候変動や生物多様性といった地球環境問題の深刻化や、行き過ぎた資本主義による格差の拡大等に直面し、「サステイナビリティ(持続可能性)」を強く意識した行動変容が世界的に求められている。サステイナビリティを巡る様々な課題について理解を深めることはもちろん、サステイナビリティを軸に様々な国際ルール形成が活発化しているなか、日本の国益や日本企業の国際競争力の強化の視点も踏まえて、国際ルール形成を主導できる人材の育成が急務となっている。第四に、日本政府は骨太方針2022等において、創造性を発揮して付加価値を生み出していく原動力は「人」であるとして、自律的な経済成長の実現のため「人への投資」の拡大が必要であり、文系・理系の枠を超えた人材育成の加速といった質の高い教育の実現や、社会全体での学び直し(リカレント教育)の促進、起業を支える人材の育成等を打ち出している。経済界においても、持続的な企業価値向上の観点から、「人への投資」への意識が高まりつつある。

変化の激しい時代にあって、生涯にわたって主体的に学び続け、グローバル感覚を身に付けつつ、未来を切り拓くことができる、多様な人材の育成は極めて重要な国家的課題である。次期計画は経済社会の変革を踏まえたものにする必要がある。そこで、中教審における次期計画策定に向けて、経済界として特に優先的に盛り込むべき基本的な考え方や施策等について、以下、提言する。

Ⅰ.教育振興基本計画の実効性向上

前述の通り、変化の激しい時代にあって、教育は極めて重要な課題である。今般の教育振興基本計画の改定にあたっては、世界的な潮流の変化を踏まえるとともに、当該計画を計画的かつ着実に実行に移していく必要がある。

教育をめぐる課題の改善にあたり、政府はもちろん、地方自治体、教育機関、さらには経済界など、社会全体で取り組むことが求められる。教育振興基本計画の内容を幅広く周知・実践するため、各都道府県は国の基本計画に基づき各都道府県の教育振興基本計画を策定し、様々な主体に周知するとともに、PDCAサイクルの確立を通じて計画の実効性を高めていくことが重要である。

1.優先課題や重点施策の明示

次期計画に盛り込む施策について、短期的な取り組み(速やかに取り組み成果を上げるべき施策)と中期的な取り組み(じっくりかつ着実に取り組むべき施策)とに分類するなど、優先課題を明確にし、施策にメリハリをつけるべきである。

そのうえで、文理分断からの脱却やデジタル人材の育成、グローバル教育・海外留学、教育DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進など、最優先で取り組むべき教育政策については、初等中等教育から高等教育に至るまでのタテの連続性を重視し、各教育段階で切れ目なく実施することが重要である。

2.「指標」および「目標値」の設定

現行計画は、5つの「基本的な方針」の下に「教育政策の目標」「測定指標・参考指標」「施策群」を整理しており、目標の達成状況をフォローしながら、施策の改善・充実を図ろうとした点について、評価できる。しかしながら、「測定指標」や「参考指標」のなかには、必ずしも目指すべき水準が示されていない指標もある#2。増加・向上といった目標では、計画実施前の状況から少しでも改善していれば目標が達成したとみなされ、大幅な改善に取り組むインセンティブが働きにくい面がある。

次期計画では、教育政策の目標との関連性をあらためて見直したうえで、重要な施策については、目標と施策の進捗状況を評価するための「指標」と「目指すべき水準(数値目標)」とを原則セットで掲げ、意欲的な水準をとすることが望ましい。なお、重要施策に関する指標について、数値データが現存しない場合には、把握すべき数値の定義を適切に明確化したうえで、新たに調査すべきである。ただし、施策の遂行にあたっては、目的と手段とを混同しないように留意することが肝要である。

経済界として、次期計画に掲げるべきと考える指標に関して、〔別紙1〕に整理#3した。そのうち「経済界が特に重要と考える指標」として、以下を挙げる(目標年度はいずれも2027年度)。

【経済界が特に重要と考える指標および目標値の案】  ( )内は現時点の水準

  1. (a) 学習者用デジタル教科書の整備率を90%(←2022年3月35.9%)
  2. (b) 遠隔・オンラインと対面とのハイブリッド型授業が実施可能な小中高等学校の割合を100%(←2022年1~2月調査69.6%#4
  3. (c) 文理を問わず、大学生・高専生全体に占める数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)履修者の割合を100%(←データなし)
  4. (d) 6ヵ月以上、海外に留学する大学生数を3万人(←2020年度約900人)
  5. (e) 大学等における起業家教育の受講者数を30万人に増加(←2020年度約3万人)

3.PDCAの確立と不断の見直し

現行計画は、新型コロナウイルス感染症の影響により調査の遅れや中止が発生し、進捗を踏まえた施策の改善・充実が機能しなかった。次期計画では、指標をベースに施策の改善・充実等に取り組めるよう、中教審において1~2年に一回程度、データ等をベースに進捗状況をチェックし、その後の環境変化も踏まえて、施策内容を見直す必要がないか、検証する機会を設けるべきである。なお、施策の検証にあたっては、数値目標の達成状況のみをチェックするのではなく、施策本来の目的が達成されているか評価し施策を適宜再検討することが重要である。

教育振興基本計画に関するフォローアップ体制を整備し、必要に応じて施策を見直すなどPDCAサイクルを確立する必要がある。

Ⅱ.次期計画に盛り込むべき理念・教育目標および基本的な方針

1.理念

先を見通せない変化の激しい時代においては、自らの頭で主体的に考え、実社会の中から課題を見つけ出し、想像力・創造力を発揮しながら、新たな価値を生み出していくことが重要である。そうしたなか、働き手は、キャリア形成を主体的に考え、必要な学び直しを自ら推進していくことが求められており、子どものうちから、自らの関心を広げて主体的に学び、創造性を発揮しながら行動していくことが肝要である。

しかも、グローバル化が進展し、かつ誰一人取り残されない包摂的な社会の実現が重要となるなかで、課題解決にあたっては、多様な個性や価値観・考えをもった集団において、他者と連携・協働することが求められている。教育の現場では、Society 5.0で活躍する人材やSDGsの達成に貢献する人材の育成に向けて、産学官等の連携による開かれた教育を推進するとともに、多様な価値観・考えを包摂しつつ、他者と協働しながら、一人ひとりのニーズにあった学習を推進していくことが重要である。

このような認識から、次期計画では、以下を理念として掲げるべきである。

【理念】

  1. (a) 主体性#5:主体的な学びの実現、学びの自分ごと化
  2. (b) 創造性:発想力・想像力を育み、新たな価値を創造する人材の育成
  3. (c) 多様性・公正性・包摂性:DE&I(Diversity, Equity&Inclusion)、誰も取り残されない教育
  4. (d) 連携・協働:他者とのコミュニケーション、産学官連携等、社会に開かれた教育

2.教育目標

グローバル化が本格化するなか、国内外の様々な主体と協調・競争しながら、SDGsの17のゴールに象徴される様々な社会課題の解決を通じて新たな付加価値を生み出すことが求められている。とりわけ資源の乏しいわが国では、人材は極めて重要な資源であり、教育が果たす役割は大きい。また、教育を通じて取得した幅広い知識や判断力等によって、心身ともに充実し、より心豊かに暮らすことができる状況に導く可能性が高まる。

教育はいわば「成長の源泉」であるとともに、社会課題を解決に導き社会全体のWell-beingを実現するための「基盤」であり、個人のWell-being向上に貢献する「道しるべ」となりうる。

このような認識から、次期計画策定にあたっては、以下の3つを同時に達成できるよう、今後の教育のあり方を検討すべきである。

【教育目標】 ①②③の同時達成を目指す

  1. ① わが国の持続的な発展や国際競争力の強化を実現する観点から、Society 5.0で活躍する人材の育成
  2. ② 国内外における社会的課題を発見・解決し、社会全体のWell-being向上を図る観点から、SDGsの達成に貢献する人材の育成
  3. ③ 創造性や付加価値創出の原動力となる、個人のWell-being向上

上記の3つは相互に密接に関連しており、同時達成を目指すことが求められる。例えば、経団連が提唱している「Society 5.0 for SDGs」は、デジタル技術を通じて社会課題を解決しながら、付加価値を創出していくという成長戦略でもあり、①と②は密接不可分である。また、個人のWell-beingの向上は、働き手一人ひとりの能力の発揮を通じて、社会課題の解決や企業の生産性向上に寄与し、わが国の持続的な成長につながるなど、①と②と③も関係する。

なお、Well-beingの定義は定まっていないものの、教育目標としての「個人のWell-beingの向上#6」について、本提言では、「好奇心をもって他者と協調しながら主体的に学ぶことを通じて、幅広い知識や判断力、他者や多様性等の尊重を身に付けるとともに、達成感を得る経験を積み重ねていくことで、人生を切り拓く意思や将来のキャリア意識等が醸成され、肉体的・精神的・社会的にも満たされた持続的な幸福感が増していくこと」としている。

3.経済界が求める教育政策の基本的な方針

教育政策の理念や目標を踏まえ、政府は、次期計画において、次の3つの基本的な方針を掲げて、教育政策に取り組むべきである。

  1. 〔A〕多様性を尊重し、主体性・好奇心・創造性を育む教育
  2. 〔B〕幅広い視野でイノベーションを創出し、未来を切り拓く力の育成
  3. 〔C〕新時代の学びのための基盤づくり
【方針〔A〕:多様性を尊重し、主体性・好奇心・創造性を育む教育】

企業は今、グローバル・ビジネスで打ち勝つため、他者を尊重し協調しながらリーダーシップを発揮できる人材や果敢にチャレンジする人材など、「主体性・積極性に富んだ人材」を求めているほか、課題設定力を有し創造力・発想力が豊かな人材や、高度な専門性や特定の分野での強みを持った人材など、いわゆる「尖った人材」の採用を強化する傾向にある。また、優秀な人材にアプローチするため、国境を超えた人材の獲得競争#7が活発化している。

これまで学校では、一律一斉型の授業を通じて、教員が同じペースで知識・技能を伝達する詰込み型の教育や協調性を過度に重視した指導が行われ、平均化された資質・能力を持った「金太郎飴」的な人材を育成する傾向にあった。このような教育では、イノベーションを創出しうる想像力・発想力が豊かな人材や高度な専門性を有する「尖った人材」を輩出しにくいどころか、横並び意識を重視した同調圧力によって「尖った人材」を潰してしまいかねない。

一方、人生100年時代を迎え、デジタル化の急速な進展により知識や技能の陳腐化が進むなか、働き手は、生涯にわたって主体的に学び続け、自らの強みや専門性を伸ばし、成長し続けていくことが求められている。「仕事と学びの好循環」の確立に向けて産学官が連携して取り組む必要があり、その核となるリカレント教育の充実が重要である。

これからは「主体性・積極性に富んだ人材」や、いわゆる「尖った人材」、「主体的に学び続ける人材」の育成に向けて、子ども時代から、好奇心をもって自らの関心事を追究し、主体的に学ぶことで、前向きに取り組む姿勢を身につけ、達成感を得る経験を積み重ねていくことが重要である。このような経験を通じて、人生を切り拓く意志や将来のキャリア意識等が醸成され、個人のWell-beingの向上につながっていくと考える。

主体的な学びを実現するにあたり、学校は、エドテック#8の活用により、学習者の習熟度に応じた個別最適な学びを実現することが重要となる。また、児童生徒に個別学習計画をつくるよう促し、子どもが自らの学びをマネジメントし、学びを自分ごと化する環境を整備していくことも求められる。

加えて、あらゆる人々が多様な個性・才能を発揮できるよう、子どもの頃から、一人ひとりの個性・才能を積極的に伸ばしていく必要がある。政府は、オルタナティブ教育を含む、学校や家庭以外での学びの機会の充実に取り組むべきである。また、不登校児童生徒や障害児、外国にルーツを持つ子どもなどを包摂する質の高い教育の保障は、あらゆる人々の可能性やイノベーションの萌芽を引き出し持続可能な社会の達成に貢献する。

「Society 5.0 for SDGs」の達成に向けて、初等中等教育から高等教育に至るまで、多様な価値観・考え等を持った人々を尊重・受容する意識を涵養することが求められる。このため、学習者が多様な他者と協働しながら、合意形成を図る機会を確保することが重要である。STEAM教育#9やPBL(Project Based Learning)等の課題発見・解決型学習を意識した協働学習では、課題発見・解決能力や創造力の向上が期待される。

【方針〔B〕:幅広い視野でイノベーションを創出し、未来を切り拓く力の育成】

経団連と国公私立大学のトップから成る「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」(以下「産学協議会」)では、これまでSociety 5.0に求められる能力と資質について議論し、Society 5.0の人材には、文理を問わず、リテラシー、論理的思考力、規範的判断力、課題発見・解決能力、未来社会の構想・設計力を身につけるとともに、それぞれが高度専門職に必要な知識・技能を修得する必要があることについて、産学の間で合意を得た。これらの能力は高等教育機関のみで育成できるものではなく、初等中等教育段階から育成する必要がある。

特にVUCA#10の時代に未来を切り拓く人材には、人文科学、社会科学、自然科学の幅広い知識を基に、社会の中から未知の課題を見つけ、その解決のために新たな価値を創造する力が求められる。

図表1:産学協議会におけるSociety 5.0に求められる人材像

【採用と大学教育の未来に関する産学協議会「中間とりまとめと共同提言」(2019年4月22日)、
経団連「Society 5.0 -ともに創造する未来-」(2018年11月13日)を基に経団連事務局にて作成】

また、Society 5.0において、プログラミング、データ活用が「読み書きそろばん」として国民的素養となることが見込まれる。このため、デジタル技術、データを駆使できるよう、子どもの頃から、データサイエンスや情報教育を習得することが必須と言える。

一方、デジタル化の進展も相まって、グローバル化の進行が著しい。こうした中で、グローバルな視野を持ち、異なる価値観・考えを持つ他者と協働できる人材の育成が重要となる。

【方針〔C〕:新時代の学びのための基盤づくり】

新時代の学びを推進するうえで、義務教育から高校教育、高等教育、リカレント教育に至るまで、産学官の連携・協働を強化し、オールジャパンで教育改革の実現を目指すことが重要である。経済界は、各企業における経営方針や人材・技術・ノウハウ等のリソースに照らして、効果的と考える施策に自主的かつ積極的に貢献していく。

一方、各学校は、地域、経済界、地方自治体等との連携・協働を強化し、広く社会に開かれた場所として、多様な経験・専門性を持つ人たちと触れ合う機会を創出し、社会や世界の問題を自分ごととして捉えられる教育を実践する必要がある。そのような観点から、学校(大学を含む)と企業とのマッチング機能の充実が不可欠である。

学校現場では、教員の長時間労働#11を是正すべく、教員の働き方改革や校務の効率化を進めているものの、小中学校における教員採用倍率の低下にいまだ歯止めがかかっていない。デジタル化など校務の効率化をより一層推進していくことに加えて、社会全体に教員が魅力のある職業であることが再認識され、学校現場でSociety 5.0に対応した学びを実践していくことが重要である。そのため、教職課程を見直し、ICTを活用した指導など教師一人ひとりの能力の向上に取り組むとともに、外部人材の活用など学校現場に参画する多様なルートを確保し、質の高い教育を実践することが重要である。

GIGAスクール構想#12により、小中学校における児童生徒一人一台端末整備がほぼ完了した今、教育DXを推進し、まずは全国の学校で、アナログとデジタル、対面とオンラインを効果的に組み合わせたハイブリッド型教育を実践できる環境を整備する必要がある。また、学習履歴等の教育データを蓄積・活用するシステムの構築によりデータ駆動型教育を行えるようになれば、あらゆる子どもたちの可能性を引き出す個別最適な学びが実現され、日本全体の学力向上が期待される。さらに、政府全体で証拠(エビデンス)に基づく政策立案の必要性が高まるなか、政府は教育データを活用し、PDCAサイクルの確立による、効果的な教育施策を実践していくことが求められる。

Ⅲ.優先的に取り組むべき教育政策の施策

本章では、可及的速やかに、優先的に取り組むべき施策を取り上げる。教育システムでは、高大接続をはじめ、教育段階間の陥穽に陥ることなくシームレスな学びを実現し、子どもたちの能力を着実に育んでいくことが重要である。

1.文理分断からの脱却

初等中等教育段階からのSTEAM教育や、高等教育における理系・文系に捉われない文理融合・リベラルアーツ教育を通じて、文理分断した教育からの脱却を図るべきである。これらの教育は、Society 5.0において欠かせない素養を身に付けるため、極めて重要である。特に、高校におけるSTEAM教育の推進や文系・理系のコース分けの是正に早急に取り組む必要がある。

(1) STEAM教育の推進

教科学習によって得られた幅広い知識・技能を基に、自ら課題を見つけ、解決し、新たな価値を創造していくうえで、PBL等の課題発見・解決型学習によるSTEAM教育の推進が重要となる。高校は、2022年度より設けられた「総合的な探究の時間」等を活用し、経産省「STEAMライブラリー」に掲載された教育コンテンツ等#13を参考に、STEAM教育に取り組むべきである。STEAM教育のテーマとしては、SDGsに対する理解を深めるとともに、「サステイナビリティ」に向けた実践力を高める観点から、気候変動や生物多様性、資源循環などの環境問題、気候変動問題と裏表の関係にあるエネルギー問題、持続可能な消費などの社会的課題を取り上げることが考えられる。

教員は、生徒の能力や関心に応じてSTEAM教育のテーマを設定し、ファシリテーターとして授業を組み立てる能力が求められることから、そのような能力が高められるよう、教職課程や教員研修の内容を大胆に見直す必要がある。また、経済界や大学、地方自治体等と連携して質の高いSTEAM教育を推進すべく、政府はそのようなSTEAM教育を実践する高校や教育委員会に対し、財政面等の支援を行うべきである。経済界としても、学校や教育委員会等との連携のもと、STEAM教育のコンテンツの提供や、子どもたちを指導・サポートする人材の派遣等に協力していく。

(2) 高校段階からの文系・理系のコース分けの是正

日本では、3校に2校の高校で、文系・理系のコース分けが実施され、文系コース選択者の中には、数学が苦手という理由で選択した者も少なくない。しかし、高校で数学を真剣に学ばなければ、大学で文理融合・リベラルアーツ教育を実践するのが難しい。

高校では、文理横断的な教育カリキュラムを開発し、多くの生徒が履修することを通じて、文系を選択しても自然科学の基礎知識が、理系を選択しても人文・社会科学の基礎知識が身につくようにし、大学では文理融合・リベラルアーツ教育を実践するための素地を形成すべきである。各高校は、自らの特色・魅力を踏まえ、学際的な学びに重点的に取り組む学科の設置を検討することが求められる#14

一方、早い段階からの文系理系のコース分けを是正するため、各大学は、入試制度改革を実施すべきである。幅広い大学で、文理を問わず、数学の試験や思考力、判断力、表現力を問う記述式試験の導入を検討することが必要である。また、個別入試で幅広い教科を課すことが難しい大学もあることから、そのような大学は、リメディアル教育として、入学後に数学等を必修科目として課すことが考えられるほか、大学入学共通テスト利用入試を活用できる環境を整備すべきである。さらに、学力だけでない、多様な能力やリーダーシップの素質、多様な経験などを総合的に評価する総合型選抜の実施が望まれる。

(3) 大学における文理融合・リベラルアーツ教育の推進

大学における専門教育は、高度に専門的な知識・技能を身につけるうえで欠かせないが、一つの専門領域を深く学修するためには、その基盤となる多様な学問を学修することも重要である。各大学は、文理の枠に捉われず、どの学生に対しても文理融合・リベラルアーツ教育の履修を求めるべきである。

高度専門人材の育成に向けて、文理融合・リベラルアーツ教育と専門教育を大学教育の両輪と位置づけ、大学等において双方の教育をバランスよく学修する環境を整備し、文理複眼の幅広い視野を修得する必要がある。各大学は、自らの特色・強みを活かし、ダブル・メジャー#15、メジャー・マイナー#16、学部・研究科等の組織の枠を越えた学位プログラムなど、複数の専攻分野を体系的に履修できる制度を推進すべきである。

指標:小中高におけるSTEAM教育の実施状況(←データなし)

2.デジタル人材の育成

Society 5.0にあって、①全ての国民が情報リテラシーを身に付けてデジタル技術を利活用できることに加え、②Society 5.0をリードするエキスパート人材を育成することが喫緊の課題である。日本の大学は理工系の定員比率が低いため、デジタル分野のエキスパート人材を育成する土壌を早急に整備すべきである。

(1) 小学校からの情報リテラシー教育

情報活用能力は現代の「読み書き算盤」と言える必須の能力である。OECDのPISA#172018における読解力低下の一因として、授業におけるデジタル機器の利用時間が短いことによる情報活用能力の不足が指摘されている。授業でのICTの活用にあたり、発達段階に応じた情報リテラシー教育を実施していく必要がある。

(2) 高校における情報教育

高校では、2022年度より「情報Ⅰ」が必修科目となったものの、公立高校では2割強の教員が情報の免許を持たず、代わりに他教科の教員が担任するなどの臨時的な対応をとっている。外部人材の活用や遠隔・オンライン授業による複数校指導等も含めて、教科「情報」を専門的に指導できる教員の確保が急務である。また、大学入学共通テストでは、2025年から「情報」が出題教科に加わる予定であるが、全ての大学で「情報Ⅰ」を入試に課すべきである。

経済界としても、人材・ノウハウの支援やデジタル教材の提供等を通じて、デジタル人材の裾野拡大に協力していく。

(3) 高等教育における数理・データサイエンス・AI教育

「AI戦略2019」に基づき、文理を問わず、大学・高専生全員がAIリテラシー教育を履修することが求められている。数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(リテラシーレベル)により、文部科学大臣の認定を受けた教育プログラムの数を増やすとともに、複数の大学・高専によるオンライン講座の共同開講等を通じて、全国の大学・高専でリテラシーレベルの数理・データサイエンス・AI教育プログラムを必須科目として実施すべきである。

また、数理・データサイエンス・AI教育はリカレント教育でも推進する必要がある。経済産業省と情報処理推進機構が開発したデジタル人材育成プラットフォームに、大学等や企業も参画し、オンライン教育コンテンツや社会の抱える課題解決に資するプログラムの開発等に取り組むべきである。

一方、デジタル分野をリードするエキスパート人材の不足が深刻であり、人材育成が急務である。デジタル分野を指導できる教員が少数であることに鑑み、産学官連携によるプラットフォームを構築し、デジタル分野のエキスパート人材の育成・活用に取り組む必要がある。

(4) 理系学生の拡大

日本では、理工系分野に進学する学生の割合が諸外国と比べて低く、しかも学部段階で理工系を専攻する女性の割合が7%にとどまっている。大学は、自らの特色・強みを踏まえつつ、デジタル・グリーン等の成長分野である理工系学部・研究科への再編を早急に実現すべきである。

高校段階における理工系選択に関して「理工系は女子に向かない」などのジェンダーバイアスにより、保護者や学校、社会からの圧力がかかる状況を改善する必要がある。経済界は、女性理工系人材のキャリアパスやロールモデルに関する情報発信を強化するとともに、中学・高校等で出前講座を実施し、企業で活躍する女性の理工系人材など多様なロールモデルに出会う機会の充実に取り組む必要がある。加えて、理工系分野を専攻する女子学生を積極的に採用していることをアピールし、さらに積極的な採用を検討すべきである。骨太方針2022に盛り込まれている、理工系分野に進学する女性を対象とした修学支援プログラムについては、幅広い関係者から理解が得られるよう、産学官で具体的な内容を検討する必要がある。

指標:

  1. ① 文理を問わず、大学生・高専生全体に占める数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)履修者の割合を100%(←データなし)
  2. ② OECDのPISA調査について、数学的リテラシー、科学的リテラシー、読解力とも世界1位(←PISA2018では、数学的リテラシー1位、科学的リテラシー2位、読解力11位)

3.グローバル教育・海外留学

Society 5.0では、多様な価値観を尊重し、地球規模の課題を俯瞰して考察できるグローバルな視野を持った人材の育成が重要である。大学をより一層グローバル化し、海外大学との国際的な教育研究ネットワークの構築により、双方向の留学生・研究者・大学間交流の核となることが求められる。特に、コロナ禍により萎んでしまった日本人の海外留学や外国人留学生の受け入れの回復は極めて重要な課題である。また、今後は6ヵ月以上の長期留学を奨励すべきである。

(1) 海外大学との教育連携の推進

海外大学との教育連携の推進にあたって、わが国大学は、国際的に通用する教育の質を確保し、大学間での単位や学位の互換性を高める必要がある。こうした取り組みを進めつつ、交換留学協定校の拡大や、ジョイント・ディグリー・プログラム#18、ダブル・ディグリー・プログラム#19の締結をより一層推進すべきである。

また、コロナ禍を契機に、世界の主要大学は遠隔・オンライン教育に力を入れている。日本では、大学設置基準の改正により、特例の適用が認められる一部の大学に対して、オンライン授業の適用単位数の上限が緩和される見込みである。このような動向を踏まえ、日本の大学も、オンラインで海外大学との交流を行うCOIL型教育#20等を活用するなど、オンライン留学と実留学を組み合わせた多様な留学機会を提供すべきである。

さらに、実留学の機運が高まるよう、各大学は、大学独自の基金による奨学金制度の充実や留学積立金制度の導入など、学生の留学支援を強化する必要がある。加えて、学生の英語力強化に取り組みつつ、英語による教育プログラムの充実や、入学・卒業時期の多様化・柔軟化を推進することで、外国人留学生の受入れ拡大を進める必要がある。

(2) 次期「トビタテ!留学JAPAN」事業をはじめとした海外留学の促進

政府は、2020年を目途に、日本人海外留学生のうち大学生等を12万人、高校生を6万人まで増やすという目標を掲げ、官民協働海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN」等により、日本の若者の海外留学を後押ししてきた。この結果、日本人大学生の留学者数は増加基調にあったものの、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響を受けて、2020年度に前年度比99%減と激減した。

政府は今般、2023年度から2027年度を対象とした、次期「トビタテ!留学JAPAN」事業の実施を決定した。政府は、経済界や地方自治体等が独自に実施している海外留学支援活動の周知も含め、海外留学の機運醸成に向けたメッセージを力強く発信し、民間の理解を得つつ、協力を求めていくべきである。同時に政府は、国費による海外留学支援制度の推進にも取り組む必要がある。

企業は、通年採用等の拡大により、グローバルな視野を持った優秀な海外留学経験者をこれまで以上に採用する#21など、留学しやすい環境を整備すべきである。

(3) 初等中等教育における英語教育の推進

グローバル・ビジネスでは、英語でのコミュニケーションは必須の能力だが、日本人の英語力は国際的に低い水準#22に留まっている。中学・高校生の英語力は以前と比べて伸びているものの、現行計画に掲げた目標#23を達成していない#24

今後、小中学校や高校において、外国語指導助手(ALT)の配置増員とあわせて、ネイティブスピーカーによる動画教材やオンラインによる学習を推進し、「聞く」「読む」「話す」「書く」といった英語4技能をバランスよく伸ばしていくことが期待される。加えて、多くの地方自治体において、子どもたちが日常的に英語に触れ合え、公立学校も海外の学校と交流できる「英語特区#25」の設置を検討すべきである。

また、各大学は、民間英語資格・検定試験の活用により、個別入試で英語4技能を評価対象とすべきである。その際、民間英語検定・資格試験のオンライン化を進め、大学はオンライン受検を認める一方、政府は、地理的・経済的条件に配慮した受検機会の確保に取り組む必要がある。

(4) 国際バカロレア(IB)教育#26の推進

国際バカロレア(IB)教育を実践するIB認定校では、グローバルな視野を持ち、課題発見・解決能力等を有する人材の育成に取り組んでいるものの、日本はIBに対する認知度が低く、実施校の増加ペースは緩やかである#27

IB教育の推進に向け、大学はIBを活用した入試を拡大するとともに、産学官の連携のもと、IB教育の有効性を継続的に発信する必要がある。経済界は、採用や人材活用において、IB修了者を適切に評価することが求められる。

(5) 外国人留学生の日本企業への就職の促進

日本が外国人留学生にとって魅力的な留学先となるよう、政府は、日本で就職したロールモデル等の情報を発信するとともに、各大学は、外国人留学生に対するキャリアサポートを積極的に推進することが求められる。また、大学は、企業等と連携し、留学生が日本での就職に必要なビジネス日本語等を身に付ける教育プログラムを策定・実施すべきである。企業も、外国人留学生への積極的な情報発信に取り組み、外国人留学生の積極的な採用を検討する必要がある。なお、政府は、外国人留学生を採用した企業に対し、適切な活用や職場定着に向けたフォローアップを実施すべきである。

指標:

  1. ① 英語力について、以下のレベルを達成した中高生の割合がそれぞれ6割以上
    -中学卒業時にCEFR A1レベル(英検3級)以上(←2021年47.0%(CEFR A1レベル(英検3級)以上)
    -高校卒業時にCEFR B1レベル(英検2級)以上(←2021年46.1%(CEFR A2レベル(英検準2級)以上)
  2. ② 日本人高校生の海外留学生数を6万人(←2017年度4.7万人)
  3. ③ 大学等の日本人海外留学生数を12万人(←2020年度約1500人、2018年度11.5万人)
    うち、留学期間6ヵ月以上の留学者数を3万人(←2020年度約900人)
  4. ④ 外国人留学生数を35万人(←2021年度24.2万人、2019年度31.2万人)

4.キャリア教育・起業家教育等

キャリア教育や起業家教育には、学校での学びと社会との関連性を示すことで、子ども達の職業観・就業観を醸成し、学習意欲を喚起する効果が期待されている。特に起業家精神を育む教育は、起業意欲の喚起につながるだけでなく、子どもの頃から自らの強みを意識させ、個性を伸ばすモチベーションを高める契機にもなりうる。

教育委員会や学校は、企業等と連携したキャリア教育および起業家教育のモデルを構築し、初等中等教育段階から、キャリア教育や起業家教育を体系的に実践するとともに、企業人や起業家等と交流する機会を提供することが求められる。

(1) キャリア教育

就職活動を行う直前になって自らのキャリアを考えるのではなく、初等中等教育から、働くことの意義や、社会・仕事の仕組み等について学び、自らのキャリアを自主的に考えていくことが重要#28である。経済界としても、学校・教育委員会等と連携しながら、出前授業、職場体験などのキャリア教育に取り組んでいく。

高等教育段階に関しては、産学協議会報告書に記載した学生のキャリア形成支援活動の4類型#29のそれぞれを実践していくことが重要である。経団連としても、学生のキャリア形成支援活動の4類型の普及に向けて、周知の徹底を図っていく。

(2) 起業家教育

政府は、GIGAスクール構想による学習の個別最適化の結果として生み出される時間等を活用し、初等中等教育において起業家教育を積極的に導入すべきである。教育委員会・学校は、オンライン授業も活用しつつ、国内外の起業家から学べる機会やコンテンツを企業とともに整備し、すでに実施されている学生向けの起業体験プログラムと連携することが望ましい。

大学は、研究者・学生が実際の起業家と接するコミュニティの構築を大胆に展開し、大学発スタートアップの創出までを見据えた起業家教育の拡充に努めるべきである。基本的な財務・会計に関する知識や株式会社に関する法令など企業経営上不可欠な知識の習得については、産学が連携した教育プログラムを実施・提供し、起業を志す学生の支援を推し進めるべきである。

そうした教育を通じて、幼少期から起業家を身近に感じ、キャリアプランの選択肢に「起業」があることが当たり前となっている社会を目指すべきである。

(3) 金融経済教育

政府が掲げる「貯蓄から投資へ」の流れのもと、安定的な資産形成を通じた国民生活の向上を図るうえで、若い世代への金融経済教育の拡充による金融リテラシーの向上が不可欠である。

2022年度より、高校「家庭科」において、資産形成や投資などの金融経済教育が必修化された。金融広報中央委員会は、「金融リテラシー・マップ」を改訂し、子どもの発達段階に応じた、きめ細かい教育カリキュラムを提示するとともに、国として金融経済教育の取り組みをさらに推進し、児童生徒が発達段階に応じて金融や経済に関する基本的な仕組みや考え方を身に付けていくための体制を整備すべきである。

学校は、教員研修を通じた教員のリテラシー強化や金融の専門家との連携による出前授業の実施、動画教材および体験型副教材の活用を進めるべきである。

指標:

  1. ① 大学における起業家教育の受講者数を30万人まで拡大(←2020年度約3万人)
  2. ② 大学発ベンチャーの年間設立数を2500社(←2020年度233社)

5.子どもの才能を伸ばす多様な教育機会の提供

個人のWell-being向上に向けて、あらゆる人々が多様な個性・才能を発揮し、未来を切り拓くことができるよう、子どもの頃から、一人ひとりの多様な個性・才能を伸ばしていくことが重要である。このためには、学校や家庭以外の「学びのサードプレイス」#30による多様な教育機会の提供が求められる。

特定分野への関心が高い子どもたちが専門家にアクセスし、知的好奇心を満たしながら学問を追究できるよう、政府は、学校と経済界、大学、科学館等をつなぐプラットフォームを構築し、学校外での学びの充実#31に取り組むべきである。

同時に、特定分野に特異な才能を持つ子どもに限らず、幅広い子どもの個性・才能を伸ばす教育#32を学校外で実践していく必要がある。特に学校になじめず、不登校傾向にある子どもの数が増加傾向にあるなかで、不登校の子どもたちの学びを保障することは喫緊の課題である。地方自治体は、学びを保障する観点から、不登校児童生徒など学校教育になじめない子どもたちがオルタナティブ教育#33を受けられる環境を整備すべきである。国も、質の高いオルタナティブ教育への支援を検討する必要がある。

指標:子どもの多様な教育機会を提供する「学びのサードプレイス」の数(←現在データなし)

6.大学院教育

経済界は、高い専門性とリベラルアーツの素養の両方を有し、新たな価値を創造できる人材を求めているものの、日本は諸外国に比べて修士や博士の学位取得者の割合が低く、高度専門職の人材が少ない。このままでは、イノベーション創出で他国の後塵を拝し、日本の国際競争力が低下するとの危惧がある。

大学は、大学院教育を見直し、体系的なコースワークの充実や、国際的な学術研究ネットワークを通じた研究留学の奨励#34、産学連携・協働による人材育成に取り組む必要がある#35

政府は、博士後期課程学生の処遇改善とキャリアパスの拡大を通じて、優秀な学生が博士後期課程に進学する環境を整備するとともに、破壊的イノベーションにつながるシーズの創出に向けて、創発的研究支援事業の継続および優秀な研究者が研究に集中できる環境の整備に取り組むことが求められる。

企業が優秀な博士人材をより積極的に採用することも重要である。経団連では、文科省と連携してジョブ型研究インターンシップの推進に取り組み、多くの企業の協力を得て、優秀な博士人材が産業界に就職できるキャリアパスの普及・拡大を図っていく。

7.リカレント教育

日本では学び直しを行う社会人が少数に留まっており#36、日本の社会人が学ばない理由として、「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」が挙げられる#37。今後、「仕事と学びの好循環」の確立に向けて、産官学が連携して、仕事と学びを柔軟に行き来する環境を整備すべきであり、社会人が自律的に学び直しを行うことが求められる。

企業は、社員がリカレント教育等を受講する際の経済的支援および休暇・休業制度の導入や、学び直しの成果を処遇・報酬と連動する仕組みの導入などの環境整備を検討すべきである。大学では、企業や働き手等のニーズも踏まえ、リカレント教育プログラムの拡充に取り組む必要がある。その際、オンラインの活用により、時間と場所に縛られない多様な履修形態を実施することが求められる。また、マイクロ・クレデンシャル#38を整備し、企業等において、従業員のスキル向上の観点から、活用を促進することが望ましい。

政府は、リカレント教育の推進に向けた機運を醸成しインセンティブを付与するため、産学協働によりリカレント教育プログラムを開発・実施する大学や質の保証されたリカレント教育プログラムを実施する大学等に対して、財政面および教員確保等の支援を図ることが重要である。産学協働によるリカレント教育プログラムの開発には、企業・大学のニーズ・シーズのブラックボックス化の解消が不可欠であり、マッチング機能の充実が求められる。

リカレント教育の充実には、実務家教員の活用も課題である。企業人が実務家教員として人材育成に貢献するうえで、大学にはクロスアポイントメント制度の積極的な活用が、企業には副業・兼業の活用推進が、それぞれ期待される。

指標:デジタル・グリーン等の成長分野におけるリカレント教育受講者数(←現在データなし)

8.教育DXの推進

エドテックを活用した個別最適な学びや、オンラインで海外大学と交流するCOIL型教育、オンラインによる実践的な英語学習、時間と場所に縛られないリカレント教育プログラムの充実等を進めるうえで、教育DXの推進は欠かせない。新時代における学びの基盤づくりとして、政府は、全国の学校でハイブリッド型教育やデータ駆動型教育を実現できるよう、教育DXの推進に全力で取り組むべきである。

(1) ハイブリッド型教育の実現

GIGAスクール構想により、小中学校のICT環境が飛躍的に改善した。今後は、教育現場においてデジタルとアナログ、オンラインとリアルを効果的に組み合わせたハイブリッド型教育への転換が必須である。特に感染症や災害時等における教育・学習の継続や、不登校児童生徒の教育支援にとって、ハイブリッド型教育は重要である。

① ハード面の整備

2024年度には全地方自治体で高校生1人1台端末環境が実現される見込みであるが、1日も早く整備を完了すべきである。同時に、GIGAスクール構想により、学校のネットワーク環境が整備されたものの、通信速度が課題である。国の財政措置により、デジタル教科書が本格導入される2024年度までに、全ての学校で通信速度を改善する必要がある。

また、ICTは日進月歩で進んでいることから、政府は、GIGAスクール構想によって整備された端末について、買い替え等の更新費用を支援すべきである。加えて、政府は、経済的理由等によりデジタル環境の整備が困難な家庭に対する支援を検討することが求められる。

さらに、校務の効率化を進めるため、全国の学校は、クラウドで管理する次世代の校務支援システムを導入することとし、政府もその導入を支援すべきである。

② ソフト面の整備

国はエドテック導入補助金を継続し、全国の都道府県・市町村において、良質な学習用アプリやデジタル教材の普及に取り組むべきである。

2024年度以降のデジタル教科書の本格的導入に向けて、デジタル教科書を無償給与の対象とするとともに、紙の教科書とデジタル教科書の併用を認める必要がある。また、教科書検定に関して、デジタル教科書は紙の教科書と学習内容(コンテンツ)が同一であることが求められているが、動画や音声等を取り入れたデジタル教科書を基に教科書検定を実施すべきである。さらに、障害のある児童生徒に対するデジタル教科書の導入支援にも取り組むことが求められる。加えて、デジタル教科書のビューアに標準搭載する機能やファイルフォーマットの規格を統一する必要がある#39。一方、新規参入を阻害しないよう、デジタル教科書・教材における公正な競争環境の確保が重要である。

③ 制度面の課題

ハイブリッド型教育の推進にあたり、遠隔・オンライン授業の普及を阻害している規制(①同時双方向性・受信側の教員配置要件、②高校・大学における遠隔・オンライン授業の修得単位数の上限規制)の緩和に取り組む必要がある。

(2) データ駆動型教育の実現

様々な教育データを活用し、教育の質の向上に結び付けていくことが重要である。個別最適な学びを追求する観点から、学校における学習データと学習塾など学校外での学習データを連携するとともに、校務データと学習データの連携を図りつつ、統合的に分析・活用できるシステムの構築を検討する必要がある。

学習データは、匿名化したうえでビッグデータとして蓄積・分析・活用し、学習データの規格を全国で標準化すべきである。また、匿名化した学習データの利用が限定されないよう、学習データへのアクセシビリティを確保する必要がある。

オンライン学習システム「文部科学省CBTシステム(MEXCBT)」#40について、デジタル教科書・教材との連携を進め、シームレスな学びを実現すべきである。学校は学習eポータル#41を活用しデジタル教科書・教材やMEXCBT等との連携のもと、学習データを活用し個別最適な学びを実現することが求められる。

(3) エビデンスに基づく教育政策

教育政策においては、より効果的・効率的に企画・立案等を進める観点や、国民・地域住民への説明責任を果たす観点から、様々なデータを活用し、エビデンスを示しながら、施策を進めていくことが求められる。国だけでなく全ての地方自治体も、教育振興基本計画において教育政策の目標を設定し、エビデンスに基づくPDCAサイクルを確立#42すべきである。

指標:

  1. ① 学習者用デジタル教科書の整備率を90%(←2020年3月35.9%)
  2. ② 遠隔・オンラインと対面とのハイブリッド型授業が実施可能な小中高等学校の割合を100%(←2022年3月69.6%)

9.産学官の連携・協働等を通じた、社会に開かれた学校づくり

学校において、実社会につながる学びを推進していくことが大きな課題となるなか、産学官による連携・協働を通じて環境整備を進めていくことが重要である。企業や地域、地方自治体等は、学校現場にリアルなコンテンツの提供や人材の派遣を積極的に推進するとともに、教育委員会は、教員が実社会への理解を深めるため、教員が企業等で研修を受けるなど、企業等との人材交流の機会確保を検討する必要がある。同時に、子どもたちが安全・安心に学べる学校の環境整備も重要である。

とりわけ大学においては、産学官の連携・協働を推進し、社会に開かれた教育を行うことが極めて重要であるため、大学における産学官連携・協働の取り組みを指標化し、大学の評価につなげていくことも一案である。

(1) 初等中等教育における教員の働き方改革と安全・安心な学校環境整備

教員の働き方改革の実効性を高め、質の高い教職員集団を実現するためには、教員は教育に集中し、それ以外の役割は他のスタッフ等と連携・分担する「チーム学校」を推進するとともに、民間企業等で多様な経験を積んだ人材等も学校現場に教員として活用することが重要である。

全国の教育委員会は、特別免許や特別非常勤講師制度の活用を促進し、学校以外の社会人経験者に門戸を広げるとともに、東京都教育委員会が設置した「東京学校支援機構」の取り組みを参考に、学校に多様な外部人材を供給する枠組みを設けることが望まれる。企業は、従業員が教員として活躍できるよう、兼業・副業や学校現場への在籍型出向の導入を検討すべきである。

また、デジタル化対応と同時に、耐震性に優れ、空調が設置された安全・安心な学校環境を整備すべきである。特に公立小中学校の体育館等は、災害時に地域住民の避難所としての役割が求められているなか、空調の設置が遅れている。熱中症対策にも考慮した学校環境を整備することが重要である。

(2) 大学等における産学官の連携・協働の推進

大学は、地域連携プラットフォーム等を活用し、経済界や地方自治体、地域団体等との連携・協働のもと、地域や社会のニーズにあった人材の育成を進めるべきである。その際、大学は立地する地域にとどまらず、国内の他地域や海外とも連携・協働していくことが期待される。また、大学は、国公私立を問わず、多様なステークホルダーが関わり合い、地域の課題解決や新たな価値の創出に取り組めるよう、自らの特色・強みを活かした形で、キャンパス全体を「イノベーション・コモンズ(共創拠点)」として整備することが重要である。その際、ハード・ソフト両面の環境整備を進め、教育研究活動のDXに対応する必要がある。

産学官連携・協働において問題となるのは、企業と大学をつなぐ人材や対話・交流の不足である。大学は、企業人材を積極的に実務家教員やコーディネーターとして活用することが求められる。

また、全国の教職課程では、授業におけるICTを効果的な活用方法を指導するとともに、STEAM教育や情報教育、データ活用・分析など特定分野に強みや専門性を有する教員の養成を推進すべきである#43

さらに、大学は、国際競争力の強化に向けて、3つのポリシー#44に基づき、入学から卒業まで一貫した教学マネジメントを確立し、「出口における質保証」を強化すべきである。加えて、大学は、学修成果の可視化を通じて、カリキュラム改善や学生支援に取り組むべきである。

加えて、大学は、財政基盤の強化に向けて、企業・個人からの寄附や外部資金の獲得拡大に取り組むべきである。その際、リサーチ・アドミニストレーター(URA:University Research Administrator)および産学コーディネート人材の育成や大学による情報開示の拡大が重要となる。

指標:

  1. ① 特別免許状の授与件数を年間500件まで拡大(←2019年227件)
  2. ② 公立小中学校等における体育館の空調設備率を50%(←2020年 体育館9.0%)
  3. ③ 産学官の連携・協働による人材育成の実施状況(←現在データなし)

おわりに

2023年度から始まる次期教育振興基本計画は、2040年以降の経済・社会のあり方を見据え、今後5年間の教育政策の方向性および主な施策を示すものである。コロナ禍を機に、あらゆる分野でDXが加速したことを受け、これからの5年間は、デジタルがもたらす学びの可能性をこれまで以上に前向きにとらえ、学校現場にAI、IoT等の革新技術を最大限取り入れ、学習者の興味や関心・習熟度に合わせた個別最適な学びや、国境等を越えた協働的な学びを実現することで、人々のWell-being向上、国内外の社会的課題の解決、わが国の持続的な発展・国際競争力の強化の3つを一体的に達成していくことが求められる。

また、多様性に富んだ社会を実現するためには、意欲と能力があれば、一人ひとりに寄り添った質の高い教育を誰でも受けられるよう、修学支援の充実に取り組む必要がある。「出世払い」の仕組みについては、教育未来創造会議第一次提言において、日本学生支援機構(JASSO)による貸与型奨学金の柔軟な返還や、在学中は大学院の授業料を徴収せず、卒業後の所得に応じて納付できる制度の構築が盛り込まれた。「出世払い」の仕組みについて効果を検証しつつ、修学支援の更なる拡充を実施すべきである。企業も、雇用した従業員に対する奨学金返還支援制度の活用を検討する必要がある。

経済界は、「〔別紙2〕教育分野における経済界の取り組み・支援の事例」にある通り、わが国経済の持続的な成長を実現するために、Society 5.0を担う人材の育成に向けた様々な取り組みを展開している。また、経団連では「産学協議会」の活動の一環として、質の高いインターンシップを核とした学生のキャリア形成支援活動や、リカレント教育の実践に取り組んでいる。今後とも、人材育成こそが成長の源泉であるという認識をもって、各企業における経営方針や人材・技術・ノウハウ等のリソースを踏まえつつ、学校との連携・協働に主体的かつ積極的に取り組んでいく。

以上

〔別紙1〕 次期計画に掲げるべきと考える指標

〔別紙2〕 教育分野における経済界の取り組み・支援の事例


  1. 教育振興基本計画は、教育基本法第17条第1項に基づき、教育基本法の理念の実現と、教育施策の総合的・計画的な推進を図るために策定。わが国教育行政における根幹的な計画。2008年の第1期教育振興基本計画策定以降、5年ごとに改定。
  2. 例えば、現行計画の「目標(8)大学院教育の改革等を通じたイノベーションを牽引する人材の育成」や「目標(10)人生100年時代を見据えた生涯学習の推進」では、測定目標として、それぞれ「修士課程修了者の博士課程への進学率の増加」、「これまでの学習を通じて身に付けた知識・技能や経験を①仕事や就職の上で生かしている者の割合の向上、②家庭・日常の生活に生かしている者の割合の向上、③地域や社会での活動に生かしている者の割合の向上」と設定されている。
  3. 〔別紙1〕に掲げた指標は、第Ⅲ章で掲げた施策ごとに点線枠内にも記載している。
  4. 臨時休業期間中、同時双方向型のウェブ会議システムを活用した小中高等学校等の割合。
  5. 経団連「採用と大学改革への期待に関するアンケート結果」(2022年1月)において、採用の観点から大卒者に特に期待する資質として、「主体性」の回答が84.0%と最多であるなど、主体性は特に重要な理念。
  6. マーティン・セリグマン(Martin Seligman)が提唱するPERMAモデルによれば、Well-beingは、①ポジティブな感情、②物事への積極的な関わり、③他者との良好な関係、④人生の意義の自覚、⑤達成感、の5つの要素から構成される。
  7. 例えば、インド工科大学の学生は米国をはじめ世界的に評価が高く、学生も専門知識を武器に、グローバルIT企業への就職を目指す傾向がある。日本企業も、ジェトロを通じて学生向けに就職説明会をオンライン開催するなど、インド高度人材の採用を行っている。
  8. 教育におけるAI、ビッグデータ等の様々な新しいテクノロジーを活用したあらゆる取り組み。
  9. 5つの領域(Science〈科学〉、Technology〈技術〉、Engineering〈工学〉、Art〈芸術〉/Liberal Arts〈教養〉、Mathematics〈数学〉)を対象として、科学技術の素養を涵養するとともに、デザインや芸術、教養の要素を取り入れ創造性も育む教育。
  10. 「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取った言葉。物事の因果関係がわかりづらく、突如として想定外の事象が発生するため、将来の予測が困難な状態。
  11. 文部科学省「教員勤務実態調査(平成28年度)」では、公立小学校の約3割、公立中学校の約6割の教諭の1週間当たりの勤務時間が、「過労死レベル」の水準に達している。
  12. ICTを活用した学習活動を実現するために、小中学校等における児童生徒1人1台端末と高速大容量の校内通信ネットワークを一体的に整備する構想。当初3年間かけて2023年度の実現を目指していたが、コロナ禍により実施が前倒しされ、2020年度末にほぼ完了した。
  13. 産業競争力懇談会(COCN)が2021年10月に設立した「一般社団法人学びのイノベーション・プラットフォーム」においても、産学官、地方公共団体、教育界などから成るSTEAM教育に関するプラットフォームを構築し、STEAM教育教材のライブラリーやSTEAM教育を支える人材のネットワーク等の整備を進めている。
  14. 2022年度より、普通科高校において、設置者の判断に基づき、学際的な学びに重点的に取り組む学科を新たに設置することが可能になった。
  15. 1つの学部に在籍する学生が、複数の学問分野の中から、2つの学問分野を主専攻(メジャー)として専攻し、体系的に履修する制度。
  16. 1つの学部に在籍する学生が、複数の学問分野の中から主専攻(メジャー)と副専攻(マイナー)を選択し、体系的に履修する制度。
  17. PISA(Programme for International Student Assessment)。国際的な学習到達度調査。
  18. 連携する海外大学との間で教育プログラムを共同開設し、修了者に共同で学位を授与する制度。
  19. 連携する海外大学との間に設定された単位互換制度を利用し、それぞれの教育プログラムを修了した場合に、双方の大学の学位を授与する制度。
  20. COIL(Collaborative Online International Learning)型教育とは、海外の連携大学と交流を行い、問題を共有し、協働してその解決に取り組むオンライン教育。
  21. 企業は、長期の海外留学を通じて、能力や資質等を高めた人材の採用を希望している。
  22. 「EF EPI 英語能力指数」(2021年)によれば、日本は世界78位。他の東アジア諸国・地域(香港32位、韓国37位、中国49位)と比べて低い順位に位置する。
  23. 中学校卒業段階でCEFRのA1レベル(英検3級)相当以上、高校卒業段階でCEFRのA2レベル(英検準2級)相当以上を達成した中高生の割合をそれぞれ5割以上。
  24. 文部科学省「令和3年度『英語教育実施状況調査』」によれば、2021年現在、CEFR A1レベル相当以上を達成している中学生の割合は47.0%、CEFR A2レベル相当以上を取得している高校生の割合は46.1%に留まる。
  25. 岡山県総社市では、2014年より、市内の山田・昭和・維新地区で幼稚園、小学校、中学校が連携し、一貫性のある特別な英語教育を提供する「英語特区」の取り組みを実施している。
  26. 国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)は、世界の複雑さを理解して、そのことに対処できる生徒を育成し、かつ、生徒に対し、未来へ責任ある行動をとるための態度とスキルを身に付けさせる総合的な教育プログラム。IBディプロマ・プログラムを履修し最終試験を経て所定の成績を収めた場合、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)が与えられ、大学進学へのルートが確保される。
  27. 文科省は国際バカロレア認定校を2020年までに200校以上に増やす目標を掲げたものの、未達成。2022年6月30日現在、国際バカロレア(IB)認定校等数は177校に留まる。
  28. 学校は、2020年4月から全国の小学校・中学校・高等学校で導入された「キャリア・パスポート」を積極的に活用し、キャリア教育を通じて子どもたちが将来の進路やキャリア形成を考えるように促す必要がある。
  29. 産学協議会では、学生のキャリア形成支援活動について、「タイプ1:オープン・カンパニー」、「タイプ2:キャリア教育」、「タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ」、「タイプ4:高度専門型インターンシップ」の4類型に分類した。
    https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/039.html
  30. 家庭と職場・学校などに次ぐ「第3の場所」。集まる人々と交流を図る「居場所」。
  31. 科学技術振興機構の「ジュニアドクター育成塾」では、大学・高専・研究所等における理数・情報分野の学習等を通じ、高い意欲や突出した能力を有する小中学生を発掘し、その能力を伸長する取り組みを実施。愛媛大学教育学部の「KIDS ACADEMIA」では、幼い子どもの知的好奇心を科学的な探究や科学的思考へと拡充・深化・伸長させることを目的とした体験型学習プログラム「キッズアカデミア・サイエンス講座」を実施するとともに、幼い子どもの才能や創造性、イノベーターの芽を発掘することを目的としたコンテストを企画・開催。
  32. 東京大学先端科学技術研究センターの「LEARNプロジェクト」では、企業や教育委員会との連携の下、プログラム毎に、学校になじめない子どもや、学校教育に飽き足らず社会で生きるための真の学びを追求したい子ども、障害児等、様々な子どもを対象にした教育を実践。
  33. 「川崎市子ども夢パーク」に設置された「フリースペースえん」では、画一的な教育になじめなかった不登校の子どもたち等を対象に、昼食づくりや実験・学習・体験合宿を実施。
  34. 日本の大学院には、論文指導に過度に依存する徒弟制的な研究体制の下、「大学院生は無給の労働力」という誤った認識が蔓延しているとの指摘がある。そうした悪弊を除去するために、「科学技術イノベーション創出と大学教育改革のための緊急アピール」(2022年8月)では、研究力の基礎を培うコースワーク強化等を提言。
  35. 例えば、2018年度より始まった5年一貫の博士課程学位プログラム「卓越大学院」では、民間企業の研究者が客員教授等として大学院の講義を受け持ち、共同研究を行っている。
  36. 文科省資料によれば、大学・専門学校等の社会人受講者数は43万人(2019年度)であり、2022年度までに100万人を目指すという政府目標からほど遠い状況である。
  37. 厚生労働省「能力開発基本調査(令和2年度)」。
  38. 大学の専門教育において、特定の知識や技能を修得したことを「修了証」や「オープンバッジ」と呼ばれる形式によって認証されたもの。学士・修士・博士などの一般的な学位課程よりも小規模に構築された教育プログラムの修了証明として用いられている。
  39. 現状のデジタル教科書・教材について、「教科書・教材会社の使っているビューアによってユーザーインターフェースが異なり、ユーザー側の負担となっている」との指摘や「デジタル教科書に画像、動画等の素材を多用することで、データ量の肥大化につながっている」との意見がある。
  40. 児童生徒が学校や家庭において、学習やアセスメントができるCBTシステム。
  41. 各種学習ツール(デジタル教科書・MEXCBT等)と連携し、学習のハブとなるシステム。
  42. 全国の市区町村教育委員会の策定状況(2019年3月現在)によると、「基本計画を策定済み」は1421自治体(全体の82.7%)
  43. 教職課程について、文科省は学校教育のデジタル化を踏まえ、2022年度より、ICTを活用した教育理論・方法を学ぶICT事項科目の履修を義務付けた。
  44. ディプロマ・ポリシー(卒業認定・学位授与の方針)、カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)、アドミッション・ポリシー(入学者受入れの方針)。