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Policy(提言・報告書) 科学技術、情報通信、知財政策 「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針の一部を改正する件」に対する意見

2022年12月27日
一般社団法人 日本経済団体連合会
デジタルエコノミー推進委員会
企画部会データ戦略WG
イノベーション委員会
企画部会ヘルステック戦略検討会

経団連が掲げるSociety 5.0 for SDGsを実現するうえでは、公益に資するデータ利活用の促進が不可欠である。今般、人を対象とする生命科学・医学系研究における円滑なデータ利活用に向け、本指針において用語の定義等に係る所要の見直しが検討されたことを歓迎する。

個人情報の保護を図りつつ、事業者や関係するステークホルダーの利便性・生産性のさらなる向上を目指す観点から、以下のとおり意見を述べる。

1. 総論

  • あらゆる取組みの前提として、人的・情報の両面で強固なセキュリティを確保することが重要。
  • DXの進展に伴い、本指針の対象となる事業者の拡大が見込まれることに鑑みれば、より幅広い事業者や関係するステークホルダーにとって容易に理解できる指針とすべき。本指針は文章が一般に理解しにくいため、指針の主旨が広く浸透するためにも、全体の構成や文章表現等の全体的な見直しが今後検討されることを期待。
  • 倫理審査委員会において、知識や経験の差によって法律や指針の解釈の違いが生じ得ることを念頭に、審査の均質化に向けた取組みを実施すべき。
  • 今後、侵襲・介入を伴う研究やアンケート調査に基づいた研究等、研究の性質に応じた指針の整理を進めるべき。
  • 本指針が対象とする「生命科学・医学系研究」の定義が広いことから、指針を適用する研究の範囲について、研究主体や各倫理審査委員会において解釈の違いが生じ得るため、本指針のガイダンスにおける事例を充実させるべき。
  • 適正かつ円滑な研究を促進すべく、相談窓口の設置等、支援体制を充実・強化することが必要。

2. 各論

(1)「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針の一部を改正する件(概要) に対する意見

Ⅰ.改正の趣旨
  • 指針の内容が複雑であるほか、個人情報保護法に上乗せした規律を求める部分もあるため、医療データを活用した研究の障壁となっている。今後とも、適時適切に指針の見直しを検討し、研究の性質に応じたIC規定等の整理を進めるべき。
Ⅱ.改正の内容(案)
3.「インフォームドコンセント(IC)を受ける手続き等の見直し」
  • 今次改正により、ICを行わずに匿名加工情報を研究に用いるための要件や、既存試料・情報を別目的で利用するための要件が緩和されたことを歓迎。医療のリアルワールドデータの活用促進に向けて、是非取り進めていくべき。

(2)その他、現行指針に対する意見

第4章 インフォームド・コンセント等
第8-1(2)
  • 本改正案では、新たに作成する仮名加工情報について「ICを受けない場合はオプトアウトによること」とされているが、オプトアウトも不要とし、個人情報保護法の上乗せとなっている現状を解消すべき。
第8-1(3)-ア
  • 試料を用いない研究において、要配慮個人情報のみを新たに取得し共同研究機関と共有する場合は、個人情報保護法上の同意(適切な同意)が認められている。一方、既存情報を他の研究機関に提供する場合はICが求められている。この場合においても試料を用いず要配慮個人情報のみを取り扱う際には、ICではなく個人情報保護法上の同意(適切な同意)が認められるべき。
第8-5⑪
  • 本改正案では、仮名加工情報への加工が想定されていなかった情報を新たに加工する場合に事前のIC無しにオプトアウトによる手続を認めることとされている。そうであれば、取得当初から仮名加工を予定している場合もICの説明事項に含めるべきではないため、ICにおける説明ではなく研究計画書への記載をもって代替可能とすべき。
第8-7
  • 「同意を受ける時点で特定されなかった研究への試料・情報の利用の手続」について、他機関へ試料・情報を提供する際、既に同意を得ている研究目的と相当の関連性があると合理的に認められる場合には、オプトアウトによる手続きを認める旨を規定すべき。
以上

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