会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言  東海地方経済懇談会後の共同会見における榊原会長発言要旨

2016年2月10日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【経済情勢】

アベノミクスが始まって3年あまりが経過し、日本経済は基調としては、緩やかながらも着実に成長している。懸案であるデフレ脱却に向けても、安倍総理が「もはやデフレではないという状況をつくり出した」と発言されているように、もうひといきというところまで来ている。

昨今の金融市場の動きについては、現在の実体経済の姿を反映したものではない。国際金融市場が原油安や新興国経済の先行き不安に過剰反応したものであり、実体経済のファンダメンタルズが毀損しているのではない。特に、日本経済のファンダメンタルズは強く、回復基調で推移している。そのことに自信をもって、金融市場の日々の動きに動揺することなく、冷静に対応していくべきである。経済界としても、実体経済への影響がないよう、市場の動きを冷静に受け止め、毅然として対応していくべきであると発信していく。政府に対しても、同様に毅然とした態度で、市場関係者に冷静な対応を求めるよう要請している。

【中部経済】

中部経済に力強さがあることを様々な指標が示している。個人消費、生産、設備投資、住宅投資、輸出、雇用など総じて全国平均より高い。特に、愛知県を中心とした製造業は日本一であり、製造業を中心に中部経済は引き続き力強く推移していくと思う。課題は、この経済の強さが地域の中小企業にまで行き渡っていないことである。中部経済には引き続き日本経済を引っ張っていくことを期待している。春季労使交渉においても、中部圏には業績を拡大している企業が多く、他地域を牽引するような賃金引上げを期待したい。

【春季労使交渉】

経済の好循環を回し、デフレ脱却・経済再生を着実に実現することは、社会的な要請だと受け止めている。今年はこうした要請がある中での春季労使交渉であり、これも踏まえながら、各社の状況に応じて、昨年を上回る年収ベースでの賃金引上げに積極的かつ前向きに検討してほしいと呼びかけている。年収を構成する項目は企業ごとに異なることから、自社の状況に応じて、基本給や賞与、諸手当などを総合的に勘案して、賃金引上げに取り組んでもらいたい。

中小企業の賃金引上げに向けた環境が整うよう、大企業としても原材料の高騰や円安でコストの増大に苦しんでいる中小企業等の取引先に対して、取引条件の適正化に取り組んでいく。同時に、中小企業の生産性向上を支援していく。

「官製春闘」という言葉が報じられることがあるが、そうではない。一昨年、昨年と企業は大幅な賃金引上げを実現したが、これは賃金引上げにより経済の好循環を回していくことが経済の再生のためには必要不可欠だと考えて、あくまで自主的に取り組んだ成果である。今はデフレ脱却・経済再生の実現に向けた正念場、異常事態であり、政治と経済が連携して、あらゆる手段・政策を動員し、もう一度強い経済を作り上げなければならない。

【金融政策】

今般導入されたマイナス金利は、デフレ脱却に向けた日銀の強い意志の現れだと受け止めている。マイナス金利にはプラス・マイナス双方の効果があり、導入されたばかりの段階で評価することは時期尚早である。日銀の意図は、企業、国民のマインドの悪化を未然に防ぐことである。マイナス金利を受けて銀行の貸出金利が下がれば、企業の設備投資や国民の住宅購入を促していく効果が期待される。現在、銀行株の下落、年金運用への影響など、マイナス面がたびたび指摘されているが、もう少し長い目で見ていきたい。

【政権への要望】

経済界としては、安倍政権には経済最優先の姿勢を貫いてほしい。当面の最大の課題であるデフレ脱却・経済再生に向けて、アベノミクスの第2ステージとして、2020年にGDP600兆円経済の実現という目標が掲げられており、心強く思っている。この目標に向けた具体的な道筋をたてることが最優先課題であり、このためには世界経済が不安定になっている中、もうひといきのところまできたデフレ脱却を着実に進めていかなければならない。来年には消費税の引き上げが予定されており、これを乗り切るだけの経済の自力、底力をつけることが重要である。このためには、経済政策、特に成長戦略を目に見える形で実行していく必要がある。直近の課題としては、平成28年度予算を年度内に成立させることが求められる。重要課題は山積しており、課題を的確かつ着実に実行していってほしい。

以上