会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言  北陸地方経済懇談会後の共同会見における榊原会長発言要旨

2016年11月8日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【北陸経済】

地方創生は日本経済再生に向けた喫緊の課題である。GDPの約7割を占める地域経済の活性化なくして、日本経済の再生はない。現在、政府の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」のもと、各自治体が地域経済の活性化に向けた地方版の総合戦略を策定し、今年度からその実行段階に入っている。まずこの総合戦略を実現することが、地域経済活性化の土台になる。

北陸では、北陸経済連合会による「第四次中期アクションプラン」のもと、地方創生のモデル地域を目指して、産業振興や住みやすい魅力的な地域づくりを推進するなど意欲的な取り組みが進められている。特に産業振興に関しては、ライフサイエンス産業と高機能新素材産業の2つのクラスター形成によるものづくり産業の集積を目指している。すでに事業化やベンチャー企業の設立に至るなど進捗があると聞いている。こうしたクラスター活動を通じて成功事例が生まれ、北陸が地方創生のモデル地域となって、地域経済の活性化をリードしてもらいたい。

経団連は、本年9月に北経連と地域経済活性化に向けた連携協定を締結している。この協定に基づいて、北陸の中小・中堅企業と経団連会員企業との間でビジネスマッチングを進めていく。大企業と中小企業の連携を進め、具体的な成功事例を生み出していく。

若者や女性など人材の大都市への流出について、特に若年層の場合、大学入学を機に北陸から転出し、就職のタイミングで戻ってこないことが課題となっている。まずは働く場を確保することが重要である。また、大都市の仕事は一見、魅力的に映るもしれないが、住環境や教育環境などに関しては、北陸ほど良いところはない。こうした魅力をきちんとPRすれば、地元回帰が進むと思う。地道な活動を続けていくことが重要である。経団連では、大企業の地方への機能移転を呼びかけている。本社を移転するとなれば、様々な障害があるが、機能移転であれば、検討課題になり得る。女性、若者の雇用の受け皿にもなると思うので、引き続き会員企業へ呼びかけていきたい。

【北陸新幹線】

北陸新幹線の開業を見れば、新幹線の経済効果は絶大であり、大阪への早期延伸を期待したい。全線開業によって、北陸と関西、東京、名古屋を含むより強固な広域経済圏の形成に大きく貢献するとともに、北陸と太平洋側をつなぐ周遊ルートを活用した広域観光の展開を後押しすることにもなる。北陸経済の活性化に極めて大きな効果を期待できる。経済界としても、北陸新幹線の早期全線開業を後押ししていきたい。

現在、国土交通省が各ルートの所要時間、事業費、経済効果等の試算を行いつつ、与党のプロジェクトチームが検討を進めているようだが、沿線各地域の考え方がまだ統一されていない。まずは地元の自治体や経済団体など官民が一丸となって、ルート決定に向けた地元意見の取りまとめを進めてもらいたい。ルートを早く決めることこそが全線開業の早期化につながる。

他方、リニア中央新幹線が2027年に東京―名古屋間で開業する予定であり、北陸新幹線の大阪延伸がそれより遅れるとなれば関西経済圏が孤立しかねない。東京、名古屋、大阪からなるメガ経済圏を形成することは日本経済全体の活性化につながるものであり、そこに北陸も加われば、さらなる相乗効果が期待できる。

【パリ協定】

本日の衆議院本会議でパリ協定が可決・承認されたことを歓迎したい。日本はパリ協定のもと、2030年までに温室効果ガスを2013年度比で26%削減することを国際公約としている。非常に高い目標であるが、この前提として、原子力は20~22%の電源構成を実現することが求められ、再生可能エネルギーもかなり野心的な目標が掲げられている。さらに家庭部門の温室効果ガスも40%削減しなければならない。原子力の電源構成を20~22%にするためには、国民全体がその意義を理解しなければならず、上記の前提が実現して初めて国際公約を達成できる。

こうした観点から、世界一厳しいと言われる原子力規制委員会の安全審査基準に適合した原発については、地元自治体や住民、国民の理解を得たうえで、早期に再稼働することが必要である。原発に対する国民感情もある中、地球環境保護という人類全体への責務にも応えなければならない。安全・安心が認められた原発は再稼働していくべきである。電力会社、政府には地域住民、国民の原発に関する安全・安心への理解を深めていくことが求められる。

以上