会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言  夏季フォーラム後の記者会見における榊原会長発言要旨

2017年7月21日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【夏季フォーラム総括】

本年の夏季フォーラムは、2014年に経団連会長に就任して以来、4回目となる。この4年間、夏季フォーラムでは、経団連ビジョンで掲げたイノベーションとグローバリゼーションという二つの課題を中心に議論を行ってきた。

2014年に経団連会長に就任した直後に、東京で開催した1回目のフォーラムには、安倍総理にお越しいただき、その後、安倍総理の中南米歴訪に同行した。それ以来、デフレ脱却と経済再生の実現という共通の目標に向け、経済と政治が「車の両輪」という形で、それぞれの取り組みを進めてきた。その結果、経済成長率、賃金、雇用などの経済指標が軒並み好転し、デフレからの脱却がようやく見通せるところにまで漕ぎ着けたことを感慨深く思う。

日本経済を本格的な成長軌道に乗せていく上で、まさに今が正念場であり、取り組むべき課題は山積している。こうした認識のもと、今回の夏季フォーラムでは、「激変する国際情勢と日本経済の活力向上」というテーマの下、議論を行った。一日目はCSISのハムレ所長、グリーン副所長と激変する国際情勢を踏まえた日米関係などについて議論を行った。また、成長戦略の中核に位置づけられたSociety 5.0の実現について、ビッグテータの活用を中心に国立情報学研究所の喜連川所長に講演いただくとともに、意見交換した。二日目は非公開セッションで国の基本問題である憲法問題を取り上げるとともに、エネルギー、通商、格差是正について分科会で討議した。さらに、麻生副総理・財務大臣よりご講演いただくとともに、意見交換を行った。これまで夏季フォーラムでは2014年に安倍総理と甘利経済再生担当大臣、2015年に石破地方創生担当大臣、2016年に稲田自民党政調会長にお越しいただき、政治との連携を着実に強化してきている。

【財政再建と経済再生】

財政健全化については、財政審会長として麻生財務大臣への建議を行っており、本日、麻生大臣から2020年度のPB黒字化などこの建議を踏まえた発言をいただいた。経済再生に関連し、麻生大臣からは経済界が活発に設備投資、研究開発投資を行ってほしい、内部留保を減らしてほしいとよく言われる。いずれにしても、経済活性化に向けて、製品開発投資、設備投資、研究開発投資、人材投資、M&A投資をこれまで以上に前向きにやっていくことである。経済再生の主役は経済界であり、麻生大臣から改めて激励をいただいたと受け止めている。

【格差問題】

格差の問題について、経済界として現状をしっかり認識したうえで、対応していくことが必要である。一部の指標は改善傾向にあるものの、日本に格差は厳然として存在している。これにより、社会に歪が生じ、経済成長の足かせともなっている。

格差問題の解決策の一つは教育である。問題の背景として、家庭の所得と教育レベルの間に相関関係が見られており、経済的な理由で高等教育を受けられない子弟がいる現状を踏まえれば、教育は格差問題解決の切り札になる。政府においても教育問題を重要課題に位置付けており、経済界としてもしっかり取り組んでいく。また、もう一つの解決策は雇用対策である。具体的には、不本意の非正規労働者について、意欲と能力ある人はできるかぎり正規化を進めていくべきである。格差問題の解決に向けて、経済界としては、教育と雇用の二つの観点から取り組んでいく。

【政治情勢】

現下の政治情勢について、先般の都議選の結果や自民党の支持率の低下・不支持率の増加は深刻な問題であると感じている。政府には、現在の状況を深刻に、真摯に受け止めてもらいたい。反省すべきは反省し、第二次安倍政権発足時の初心に立ち返り、経済最優先の姿勢で政権運営を進め、党勢を立て直してほしい。

今回の支持率低下の背景には、加計問題や閣僚・議員の不適切な言動がある。ただ、経済界としては、安倍政権が掲げる経済、外交、社会保障、安全保障などの政策を支持しているし、国民も支持していると思う。政策に対する批判ではないことから、自信を持って政策遂行に当たってもらいたい。脇目もふらずに経済最優先で政策を推進し、デフレ脱却・経済再生が実現すれば、国民の支持も必ず戻ってくる。

【憲法問題】

夏季フォーラムで憲法問題を巡り、様々な論点について自由な意見交換を行った。今後、総合政策委員会企画部会にて議論を深めていく。

ただ、現在、国として最も重要な課題はデフレ脱却・経済再生であり、これに最優先で当たってもらいたい。憲法も大変重要な課題であり、改憲論議も必要であるが、そのためには国民の理解・支持を得ることが必要である。経済社会の安定に向けた政策をしっかり実行していけば、改憲論議の環境も整っていくのではないか。今は経済再生に集中してほしいというのが経済界の考え方である。

5月上旬の定例会見で、年内を目途に経団連の考えを取りまとめたいという趣旨の発言をしたが、夏季フォーラムの議論を踏まえて、時期を含めてもう一度しっかり議論を深めていきたい。

以上