会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言  定例記者会見における十倉会長発言要旨

2022年4月18
一般社団法人 日本経済団体連合会

【円安の進行】

為替は、経済のファンダメンタルズを反映して一定のレンジ内で安定的に推移することが望ましい。そもそも絶対水準をもって良し悪しを一概に判断するものではなく、為替の変動に対して、金利を操作すべきではない。

以前から出口戦略は言われているが、政府、日銀は持続的なインフレ、賃上げに向けて、懸命に取り組みを進めているところで、日本の現状は非常に難しい局面にある。まだ金融政策をどうこうという議論をするのは時期尚早ではないか。

過去の円高も一つの契機となって日本企業の海外進出、現地生産が進んできたこともあり、円安が進んでも、輸出企業にとって昔ほどのプラスのインパクトはなくなってきている。一方で、原材料価格が急激に上がる中、円安も加わって、多くの消費者や輸入する企業、特に中小企業が足もとで非常に苦しんでいることもわかる。

円安のメリットが出てくるには少し時間がかかる。例えば、輸出企業の業績が良くなれば、賃上げ、消費増につながることも期待できる。3年後に大阪・関西万博を控える中、日本に海外から旅行客を呼び込み、インバウンド効果をもたらすということで追い風と見る向きもあろう。

【資源高・食料高の影響】

ロシアのウクライナ侵略と円安が相まって生じた資源高や食料高は、日本のエネルギー安全保障と食料安全保障の問題を浮き彫りにした。両者とも中長期的な視点で対策を講じる必要がある。再生可能エネルギーの推進、安心安全を前提とした原発再稼働、食料自給率の向上、エネルギー・食料の安定的な調達は不可欠の方策である。

【緊急経済対策】

〔緊急経済対策の関連でトリガー条項、生活困窮者支援について問われ〕原油高対策として、トリガー条項の凍結解除が議論されている。一度税率を変えると元に戻すのは難しいといったようなことから補助金でしっかり手当てするというのはわかる。生活困窮者支援については、過去の対策を見ても、真に困っている人に行き渡らせるのは容易ではない。パンデミックを前提とする対策からエンデミック時の諸施策に切り替えて観光業やサービス業等への確たる支援を行い、経済をまわすような方向での検討を進める必要がある。

【中国経済】

1-3月期GDP速報(4/18公表)は前期より4.8%上昇したが、鉱工業生産や消費、PMI等の指標を見ると、回復のペースが停滞気味であると言わざるをえない。米国の調査会社ユーラシア・グループは、中国のゼロ・コロナ政策の失敗を2022年の「世界の10大リスク」の1位に挙げた。中国は、今まさにその問題に直面している。引き続き中国の経済動向を注視していく。

【コロナワクチン】

〔新たに承認されるコロナワクチンについて問われ〕承認手続きを経て、新たなワクチンが増えることは喜ばしい。3回目のワクチン接種がとりわけ若年層で進んでいない。mRNAワクチンの接種は難しいという方々が、別のタイプのワクチンで接種できるのであれば、ワクチン接種を進める上で好材料だ。

若年層の接種率を高めるため、科学者には、コロナ感染症に感染した場合の後遺症、ワクチンによって自身や周囲への感染を予防できる効果、接種の副反応等について、丁寧な説明を行い、若者が判断できるようにしていただきたい。

【新たなインターンシップの普及】

学生には大学時代に、単なる学びだけではなく、学んだことを社会にどのように役立てるか、いかに自分のキャリアアップにつなげるかを考えてほしい。企業としても、社会や企業・職場がどのようなものかを、実務を通じて知る機会を提供すべきであり、就業体験を伴う質の高いインターンシップを普及させていく必要がある。本日、経団連と国公私立大学のトップからなる産学協議会では、学生のキャリア形成支援を4つにタイプ分けし、うち、就業体験を行う2つのタイプをインターンシップと位置付け、基準を満たした場合には、インターンシップで得られた学生情報を採用活動開始後に活用できることとした。今後、政府とも連携して、新たなインターンシップの普及に努めていく。

【経団連と日経連の統合】

統合以前、経団連は内外の幅広い政策課題に取り組み、日経連はもっぱら社会保障や労働問題を扱っていた。

労働問題や社会保障問題がそれぞれ切り離された個別のイシューにとどまらず、幅広い問題に関係するようになってきたことなどを踏まえ、それぞれの団体が担っていた役割を一体化させ、日本経済団体連合会として、より総合的な形で意見を発信し、様々な活動に取り組んできた。

20年を振り返って、統合には非常に意義があったと思う。

以上