日本経団連(御手洗冨士夫会長)は11月20日、提言「独占禁止法の抜本改正に向けた提言―審査・不服申立ての国際的イコールフッティングの実現を―」を公表、直ちに政府・各党に建議した。
現行独占禁止法の審判制度は、公正取引委員会が出した課徴金納付命令等の当否について公正取引委員会自らが再度判断するという、他の国内法制、諸外国の制度にない異例な制度となっている。日本経団連では、予見可能性があり国際的にも整合性のある適正手続を確保するとともに、迅速かつ明快な事件解決を実現させるために、次期通常国会での独占禁止法改正に向けて、公正取引委員会の審判を廃止して公正取引委員会の処分に関する不服申立ては地方裁判所を第一審とする訴訟で行うことを中心とする審査・審判手続の抜本的な見直しを行うことを提言した。概要は次のとおり。
2年前に内閣府に設置された独占禁止法基本問題懇談会は、競争法のあるべき姿を根本に立ち返って見直すとの2005年の独禁法改正附則に明示された基本理念を見過ごし、必要な論点について十分な審議をしないまま、今年6月に報告書を公表した。これをもとに独禁法の見直しがなされるならば、さらに問題が深刻化するおそれがある。
特に、わが国独禁法の行政調査、不服申立手続は、欧米諸国が備えている適正手続、制度運用の予見可能性が不十分であり、早急に改正すべきである。
自ら審査を行った公取委が、自らの排除措置命令・課徴金納付命令の当否を自らの審判において判断する構造の下では、公正な審理の確保は困難である。公取委の審判は廃止し、公取委の行政処分に対する不服申立ては、地方裁判所に対する取消訴訟の提起により行うこととすべきである。
独禁法の専門家を招いて訴訟に関与させることができる制度を創設すべきである。さらに、第一審を一定の地裁、第二審を東京高裁に集中させ、知験を蓄えつつ統一的な判断を行うようにすべきである。
将来の事件増の可能性に備え、専門的人材を育成・確保するための裁判所の予算の確保、法科大学院等における競争政策関連科目の充実を実施すべきである。
令状なしに収集された証拠と裁判所の命令で収集された証拠とは区別すべきである。また、審査段階で公取委が収集した証拠は、企業秘密を非開示とした上で、審査対象の事業者等がすべての関係証拠を閲覧できることとすべきである。
立入検査の際には検査を受ける者に対し、検査範囲を適切に限定する事前予告を行うこと、立入検査時・供述時を問わず調査を受ける者に弁護士が立ち会うこと、調査対象者・弁護士間の会話等に関する秘匿特権を保障することとすべきである。
課徴金の対象範囲については是非を含めてあり方を検討すべきである。見直す場合には、法的安定性・予見可能性の観点等から、私的独占における競争の実質的制限の意味や不公正な取引方法の対象となる行為を明記すべきである。