日本経団連タイムス No.3041 (2011年5月19日)

「資源の安定確保に関する提言」を公表

−海外資源権益確保へ政策の強化求める


日本経団連(米倉弘昌会長)は17日、「資源の安定確保に関する提言」を公表した。資源の大半を海外に依存するわが国が、東日本大震災によりもたらされた未曾有の被害からの復旧・復興を進め、その後の持続的成長を可能とするためには、エネルギーを含む資源の安定的確保が極めて重要な課題である。近年、新興国の経済成長に伴う需要の増大に加え、国際資源メジャーによる優良資源の囲い込みが進んでいる。多くの国では政府のトップが先頭に立って資源確保に動いており、わが国も、これまで以上に緊密な官民連携体制を構築し、海外の資源権益を確保していくことが不可欠である。あわせて、国内海底資源の着実な開発、国家備蓄やリサイクル、省資源などの技術開発といった政策を総合的に進めていかなければならない。こうした基本認識に基づき取りまとめた提言の概要は次のとおり。

■ 資源の安定調達に関する政策

資源権益の獲得に際し、民間企業だけではカバーできないリスクに対しては、政府系機関の金融・保険機能の強化による補完が求められる。具体的には、JBIC(国際協力銀行)やJOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)、NEXI(日本貿易保険)等の政府系機関による補完機能の拡充が不可欠である。また、海外における鉱山開発事業は、巨額の資金が長期間必要になるなどリスクが高い。そのため、投融資を行うわが国企業のリスク軽減策として、鉱山開発事業者などへの税制優遇措置を継続・拡充すべきである。

さらに、資源国との良好な関係を維持することは、企業が海外で資源を安定的に確保するための前提条件でもある。戦略的なトップ外交による資源国との一層の関係強化を図る必要がある。

同時に、わが国の領海・排他的経済水域の海底には天然資源が豊富に存在することが明らかになっており、この開発の促進も重要である。海底熱水鉱床、メタンハイドレートなど、豊富な海洋資源の開発の推進に向けた、研究開発予算の確保や法制面の整備が求められる。

■ 備蓄に関する政策

不測の事態により短期的に資源の供給が滞るリスクに備えるため、国家備蓄を着実に実施することが不可欠である。すでにレアメタルの一部については、国家備蓄の対象となっているが、今後、産業動向や代替材料技術の開発状況などを踏まえ、備蓄対象の機動的な拡大・見直しをすべきである。

■ リサイクルに関する政策

天然資源の乏しいわが国にとって、主に廃棄物として排出される有用資源を含む使用済製品を効率的に回収し、資源確保の一助としていくことは重要である。広域的回収の妨げになっている廃棄物処理法の規制見直しなど、有用資源を含む使用済製品の、国内における効率的なリサイクルを推進する必要がある。

■ 技術開発の促進に関する政策

わが国の競争力の向上にとって重要な鉱種については、産学官が協力して、省資源や代替材料技術の研究開発を進めていくことが重要である。技術開発はリスクが大きいため、政府は引き続き研究開発補助金を確保し、革新的な技術の開発を促進することによりわが国の競争力強化にもつなげていくべきである。

■ 資源人材育成に関する政策

近年、国内の大学における資源開発分野の学部・講座が減少していることを踏まえ、産学連携による資源開発人材育成事業の継続して実施するとともに、予算を拡充し、海外での資源ビジネスを支える人材を育成することが急務となっている。

【環境本部】
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