しかしわれわれ企業人は、こうした機会をとらえ、新しい時代に相応しい国土と地域を創造することを目指したい。本年1月にとりまとめた経団連の長期ビジョン「魅力ある日本−創造への責任−」でも述べているように、われわれは、「活力あるグローバル国家」、すなわち国内的には「真に豊かで、活力ある市民社会」を、また対外的には「世界の平和と繁栄に貢献する国家」の構築を目指している。国土は、そうした国家像を具体的に描くカンバスである。国民・企業が国土を保全し自然環境と共生することを基本に、自ら生活文化圏を育て上げていくという地域に密着した国土づくりを進めるとともに、本格的な国際化・情報化・高齢化に備えた国土構造の変革に取り組んでいくことが肝要である。
新しい全総計画では、「官から民へ」「国から地方へ」という基本理念の下で、
閉塞感を払拭し、多くの国民が自らの意志で参画する国土づくり・地域づくりの枠組みを提示することこそ、新しい全国総合開発計画に求められる最大の使命である。
そのためには、来たるべき21世紀のネットワーク社会を展望して、産官学それぞれの主体が相互に資源を共有しあい、課せられた責任を果たしていく体制をつくりあげることが何よりも必要である。我々は、こうした「新たな創造のシステム」が構築されてはじめて、上記2つの目標が実現されるものと確信する。21世紀に生きる世代が自由闊達に活躍できる土俵としての国土は、これまでのような中央集権のシステムによってつくられるのではなく、そうした新しいシステムによって用意されるべきである。
急速に高齢化が進行し経済社会の活力低下が危惧されている今こそ、地域は、大競争時代の到来を認識し、住民や企業に選択される魅力ある地域づくりのための具体的な施策を提示するなど、主体的に取り組むべきである。それを前提として国は、納税者たる国民、企業並びにそのニーズを代弁する地域の声に耳を傾け、縦割り行政を排し、全総計画で打ち出された目標を迅速かつ効率的に実現する大胆な構想を立案すべきである。
加えて新しい全総計画は、首都機能の移転を前提としたものでなければならない。首都東京をわが国の中心に置く、キャッチアップ型の官主導・中央集権型のシステムを改革し、規制緩和や中央省庁のスリム化、地方分権を推進することが不可欠である。こうしたシステム改革を行なっていくなかで、地域がそれぞれの個性を磨き競い合っていくことにより、東京一極集中の是正と国土の均衡ある発展を実現させていくことが重要であり、首都機能の移転はその大きな契機となるものである。立法府における決断を強く求めたい。
以下、企業の視点から、新しい全総計画に盛り込まれるべき考え方と基本施策のあり方等について提言する。