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月刊 経団連 巻頭言 カーボンニュートラルへの取り組み ―日本の役割

泉澤 清次 (いずみさわ せいじ) 経団連副会長/三菱重工業社長

カーボンニュートラル(CN)が大きな課題として取り上げられ、各国・地域において取り組みが加速している。当初は再生可能エネルギーの導入が唯一の解決策との議論が進んでいたが、具体的なロードマップを描く中で、トランジションをどうするか、経済発展等と環境とをどう両立させるかといった観点から、選択肢が広がってきた。また、2023年のG7広島サミットにおいて、各国・地域の事情に応じた強靭なエネルギー移行の道筋を示すこととなった意義は大きい。

このCN実現に向けた取り組みは、単一のものではなく、①国・地域によって異なるロードマップを描く、②需要側・供給側の両方からアプローチする、③エコシステムを構築する─といった視点で連携していくことが必要である。

CN実現への打ち手として、再生可能エネルギーが期待されていることは間違いない。しかし適地は偏在しており、各地域が同じように導入することは難しい。経済発展の状況に応じてエネルギー・トランジションの進め方は変わる。従って、既存の火力発電所の低炭素化、CO2回収、水素・アンモニア等への燃料転換、原子力の活用などをベストミックスさせたロードマップが必要である。また、供給側においてCO2排出量を削減するだけでなく、需要側におけるプロセス変革も重要である。Hard-to-Abate(CO2の排出削減をゼロにするのが困難)な分野では、技術開発が継続されており、官民学連携による実装が重要である。

さらに、燃料転換やCO2回収を社会実装するためには、上流から下流までのエコシステムとして構築される必要がある。例えばCO2回収であれば、回収するサイト、積み出し・輸送のシステム、さらに貯蔵・利活用まで、一気通貫で構築・制度化されなければならない。実証実験が始まっているが、社会実装までには乗り越えなければならない壁がある。

これら三位一体の取り組みが重要であり、日本はこの取り組みのハブになることが期待されている。経団連としてしっかり発信していきたい。

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