月刊 Keidanren 2000年 1月号 巻頭言

確固たる決意で構造改革の完遂を

今井会長 今井 敬
(いまい たかし)

経団連会長

新たなミレニアム(千年紀)の幕開けを迎えるなか、私たちは少子・高齢化の進展や、食料・環境・エネルギー問題への対応など、克服すべき数多くの課題に向き合うことを余儀なくされております。

20世紀の総仕上げとなる本年、構造改革によって課題克服の道筋を明らかにし、新たな世紀もわが国経済が活力を維持するための基盤構築を急がなくてはなりません。現在のような財政依存は早晩限界を迎えることは明らかであり、また海外でもすでにアメリカは産業構造の転換を終え、ヨーロッパもユーロ圏の形成など大胆な改革の途上にあります。

とりわけ法制、税制のグローバルスタンダード化、戦略的な産業技術戦略の展開、および社会保障制度の抜本改革は緊急度の高いテーマであります。

昨年、産業競争力会議における議論を踏まえて、産業活力再生特別措置法が施行され、グローバルスタンダードに合致した法制、税制の整備は前進をみましたが、加えて会社分割法制の整備と連結納税制度の導入を急ぐべきであります。

また少子・高齢化により、労働力と資本の前提となる貯蓄の減少が避けられないなかで、持続的な成長の鍵を握るのは技術革新にほかなりません。小渕内閣のもと「ミレニアム・プロジェクト」として実施の運びとなっている情報化、高齢化、環境対応の研究開発について、予定された期限内に具体的な成果を引き出すべく、産・官・学を挙げた取組みが求められます。

さらに国民の将来への不安を払拭し、安心して暮らせる社会を築くため、社会保障制度の抜本的な見直しは不可避であります。税、あるいは保険料という負担の問題や、給付水準のあり方などにつき早期に結論を得たうえで、新たな制度の施行を急ぐべきです。

あらためて申すまでもありませんが、経済の担い手である企業にあっては、内なる構造改革の実行はもとより、傷んだバランスシートの改善に真剣に取り組むとともに、企業家精神の発揮による新たな事業・雇用機会の創造に叡知を発揮することが求められます。

この一年、勇気を持って構造改革を推し進めることにより、明るい展望に彩られた21世紀を迎えられることを切望するものです。


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