月刊 Keidanren 2000年 5月号 巻頭言

ナレッジ・マネジメントで21世紀の日本を創造しよう!

金井副会長 金井 務
(かない つとむ)

経団連副会長
日立製作所会長

経済社会のインターネット化が猛烈な勢いで進んでいる。日本のデフレ景気も吹き飛ばしそうな勢いである。情報技術(IT)革命の影響は計り知れない。少し視野を広げても、バイオテクノロジーや宇宙ステーション建設など、かつて夢のように思っていた技術革新が21世紀初頭にも実現しそうである。技術革新の生産性向上への効果は、米国の90年代の経済成長が証明している。2001年度の米国科学技術予算の大幅増加は、科学技術政策が財政金融政策や雇用政策と並ぶ、重要な経済政策の一つになったことを裏付けた。ニュー・エコノミーの興隆とともに、知識社会は本格的に始まった。

知識社会は、個人のアイデアや独創性の価値が高まり、重視される時代である。したがって、科学技術の予算増額も重要であるが、より重要なことは優秀な個人を育成することである。より一般的には、国民を優秀な知識労働者に育てることが、国民を豊かにし国富を増やす最大の経済政策となる。それには、教育の充実が必要である。逆に言えば、教育投資ほどリターンの期待できる投資はないのである。ところが、IMD(国際経営開発研究所)の99年世界の国際競争力調査によれば、日本の大学教育のランクは47カ国中45位と最下位に近い状況である。教育改革は21世紀の日本の最重要課題である。

21世紀の国際競争力をめぐる国家間の競争は、時間との競争でもある。技術開発力や、法制・税制などの制度改革、そして教育改革も急ぐ必要がある。しかし、考えてみれば、日本人の独創力や勤勉性のDNAが変わったとは思えない。要は、いかに潜在能力を磨くかだ。それにはITを活用したナレッジ・マネジメントが効果的である。産学官を始め政界やNPO、家庭等、すべての国民がニーズやシーズ等の知識を共有すれば、新しい対応策や教育のスピードアップの方法も見つかるかもしれない。日本の再活性化は、ナレッジ・マネジメントの実践から始まる。


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