月刊 Keidanren 2000年 7月号 巻頭言

地方分権は21世紀「新生日本」のバックボーン

大賀副会長 大賀典雄
(おおが のりお)

経団連副会長
ソニー取締役会議長

2001年1月6日より中央省庁は大きく改革され、1府22省庁から1府12省庁に再編される。いくつかの課題は残されているものの、行政改革においては、大きな前進であり、終戦時以来の大改革といって過言ではない。一方、21世紀の「新生日本」を築くためのバックボーンは地方分権である。現在、地方自治体は、3229あるが、自治省の指導のもと、各都道府県は、今年中に、それぞれの圏内の市町村合併の青写真(「市町村の合併の推進についての要綱」)を描くこととなっている。

高度経済成長とともに、日本国内の交通網は飛躍的に発達し、さらに、ここ数年の加速度的な情報化・インターネットの普及は、人々の生活や経済活動の範囲を拡大した。このような環境変化に対応し、地方自治体の単位と規模も、実態に合わせて、より広域にくくることが必要である。そうすることにより、有機的で効果的な行政運営が可能になるだけでなく、深刻な財政赤字解消の一助ともなる。地方自治体が、それぞれ、庁舎や議会をもち、文化的な公共施設を建設すると、機能的、財政的な重複が起きる。地方の借入金残高は、2000年度末で約187兆円であり、国と地方を合わせた債務残高は、645兆円を超えると予測される。

現在の市町村合併は、各地方自治体の自主性を重んじ、市町村合併の特例法により、合併を容易にしようという努力が続けられている。一方、昭和20年代末から30年代前半にかけての昭和の大合併では、1万あったものが3472、すなわち、三分の一になった。この時は、小学校がつくれるぐらいの規模が必要であるということを背景に、地方自治体の数を約三分の一にするという閣議決定がなされ、政府のビジョンと明確な目標のもと、改革が行なわれた。その後、半世紀、地方自治体の数は、あまり変わっておらず、「自主的な合併」の難しさを感じる。

地方自治体は、より大きな単位にまとまることにより、主体性をもって総合力を発揮できる。地方分権への大きな一歩である。同時に、地方交付税交付金のように、中央から再配分される財源では、真の意味での自立や自主性は難しい。地方が自主財源を確保することが、地方の自立には不可欠である。さらに、市町村合併の後には、県レベルでの統合を考えていく必要がある。県を統合し、道州制を導入することにより、真の意味での地方分権に近付く。そういう観点からも、市町村合併の推進は非常に重要な第一歩である。


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