月刊 Keidanren 2000年10月号 巻頭言

迫力のある規制緩和の議論を

秋草副議長 秋草直之
(あきくさ なおゆき)

経団連評議員会副議長
富士通社長

 IT化の推進にとって規制緩和が重要なことは言うまでもない。そういう議論も盛んにされているが、今一つ迫力に欠けるように思える。それは、結局、頭の中で議論していて、実際にシステムを動かしてみて、どういう規制緩和や新しい制度が必要かという地に足のついた議論が少ないからではないだろうか。

 例えば、通産省の補正予算で行なっている貿易金融EDIのシステムの実証実験である。貿易に関わる業務は、多くの関連企業があって、手続きは複雑をきわめている。調べによると、一つの取引について最大27社が関連し、書類数は最大40種、データ項目は約200、データの再入力は60〜70%ということである。これを、一つのセンターで一括処理して、効率化を図るというシステムである。しかし、実際このシステムを作って動かすと、さまざまな規制が浮かび上がってくる。例えば、行政に対する紙ベースの申請や報告が残ってしまうとか、貿易を取り巻く関連法の変更の必要性など実務レベルでの問題が出てくる。

 このように、実際にやってみると、本当に緩和すべき規制がはっきりと見えてくる。それを、個々に撃破していくことによって、実効性のある規制緩和論が出てくると思う。今の電子政府の推進でも、実際に企業や個人とのやりとりの姿が見えてくると、緩和すべき規制がはっきり見えてくるのではないだろうか。そういう意味で、まず具体的なプロジェクトを立ち上げて、その実行を通じて制度上の課題、あるいは効果などについて検証することが効果的である。

 もちろん、大きな観点での規制緩和という議論も必要であるが、実際にやってみて、どこが不具合なのかという実証的な議論をもっと行なうべきだと思う。そうすればもっと迫力のある議論になると考えている。


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