月刊・経済Trend 2003年7月号 巻頭言

外国の力を活用して、技術を磨き、競争力を高める

吉野副会長 吉野浩行
(よしの ひろゆき)

日本経団連副会長
本田技研工業取締役相談役

5月、IMD(国際経営開発研究所)の国際競争力比較の2003年版が発表された。今年から、59の国、地域を、人口2000万人超とそれ以下に分けてランキングが発表されたが、日本は、マレーシア、台湾、タイより劣る11位で、G7の中では下から2番目と引き続き低位であった。資源小国である日本が競争力を高めるには、技術を磨くことが、何よりも重要である。しかし、どうやって技術を磨くのか。

先般、カナダのロック産業大臣がホンダを訪ねてきた。大臣の話では、カナダは、資源大国に甘んじず、最先端の技術力を身に付けた技術立国を目指すということであった。そして、その説明の中で特に印象的だったのは、世界を見渡して、最新の技術を持った海外の企業を取り込んでいこうという姿勢であった。ホンダに対しても、研究開発分野での協力に強い期待が寄せられた。

カナダは、昨年、G7の中で最も高い経済成長率を実現し、今年のIMDの調査でも、人口2000万人超の国の中で3位であった。技術分野でも、燃料電池やバイオの分野で優れたベンチャーを生み出すなど、国としての高い競争力を維持している。その鍵の一つが、この、外の力をうまく使うというところにあるのではないか。

ホンダの場合、競争というとレースを思い浮かべるのだが、レースは、世界各地を転戦して外国のチームと競争しているだけでなく、実は外国の力を借りつつ戦っている。レーサーは、ほとんどが外国人であり、またF1であれば、外国のチームと車体の共同開発を行っている。ホンダの場合、レースを通じて、技術者の人材育成を目指しているが、この外国人と切磋琢磨した体験を通じて、技術者が大きく成長している。

どうも国も企業も内向きになりがちな日本であるが、よりオープンな姿勢で、外国の力をうまく活用して、技術を磨き、競争力を高めることが求められていると思う。


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