月刊・経済Trend 2004年4月号 巻頭言

新事業創出に向けリーダーシップの発揮を

高原副議長 高原慶一朗
(たかはら けいいちろう)

日本経団連評議員会副議長
ユニ・チャーム会長

日本経済は、これまで需要不足により経済が低迷していたが、アジアとアメリカの経済の堅調さに支えられ輸出が増えるとともに、新三種の神器(デジタルカメラ、薄型テレビ、DVDレコーダー)に見られる個人消費や民間設備投資の増加が原動力となり、経済に回復の兆しが見えてきた。この好機を逃すことなく、日本経済を活性化し、新たな時代の持続的な成長・発展へと導くためには、潜在的な需要を喚起するイノベーションによる消費拡大を一層推進する必要がある。

近年、欧米ではベンチャー企業と大手既存企業が協力して新規事業やニュービジネスの創造に取り組むモデルが台頭してきているという。わが国においても大学やベンチャー企業の有する独創的な技術や感性と、既存企業のもつ経営資源を組み合わせることにより、新市場創出に向けた推進力となることが求められている。

新産業・新事業委員会では、日本経団連会員企業と意欲あるベンチャー企業との接点づくりの観点から、2002年7月より「起業フォーラム」を7回にわたって開催し、会員企業の新事業への取り組みの紹介や、38社のベンチャー企業の事業紹介を行ってきた。その中から、業務提携で10社、新規取引で11社、出資で7社がコーポレートアライアンスに向けて検討を進めている。欧米同様、新たな推進力となることを期待したい。IMD(国際経営開発研究所)の世界競争ランキングによると、「国内への特許付与件数」「一人当たり研究開発費」の項目ではわが国が首位である。12万件もある特許を強みとして積極的に活かすことが必要である。

一方、経営トップはこうした推進力を得るために、積極的に関与しなければならない。新事業創造までのプロセスにおいて現場を支援する体制を整え、事業に対する期待を示し現場の一人一人に起業家精神を宿すことに、リーダーシップを発揮しなければならない。

新たな事業を発掘・創造し、経済成長と雇用の創出、そして豊かさを実現することは、経営トップの社会的責任である。それぞれの企業の新事業創造への取り組みが、わが国の産業構造を変えるイノベーションの源泉となる。このような考えのもと、今後も新産業・新事業創出促進に取り組む所存である。


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