月刊・経済Trend 2004年5月号 巻頭言

活力ある高齢化社会の実現に向けて

和田副会長 和田紀夫
(わだ のりお)

日本経団連副会長
日本電信電話社長

日本は今、急速に進行する少子高齢化と、これに伴う社会的コストの増大という、避けて通れない社会的課題に直面している。日本の人口は2006年にはピークを迎え、その後は減少に転じると予測されており、これにより生産年齢人口の減少に伴う労働力不足と、消費の縮退も危惧されている。

日本の経済・社会の持続的発展のためには、こうした課題を正面から見据えて解決に向け努力していくことが必要だ。そのためのアプローチの一つとして、ICT(Information and Communication Technology)の利活用が非常に有効だと考えている。

生産の面では、高速・大容量のブロードバンドを用いた、映像等による多地点コラボレーションが手軽に利用できれば、いわゆる「テレワーク」が促進され、高齢者や介護などで外に出られない人たちが、自らの置かれている条件に応じて自宅にいながら働いたり、社会活動に参加することが容易になる。これは、ICTの利活用が、潜在的な労働力を顕在化するとともに、地域に偏在する労働力と雇用のミスマッチを解消することにより、少子高齢化で減少する生産力を補うことを意味している。

また、高精細な映像通信環境の実現によって、自宅で介護を受ける高齢者の毎日の健康チェックを、介護センターにいる専門家が遠隔で行うことも可能になる。これにより、家族の負担軽減はもとより、介護にかかる社会的コストの軽減が図れよう。

一方、消費の面でも、映像コミュニケーションは、今後、遠隔教育による生涯学習プログラムの受講や、ネット上のコミュニティー・趣味の会の形成などにもますます活用され、高齢化社会における文化活動の活性化等を通じて、コンテンツ分野等の新たな需要の拡大にも寄与していくであろう。

当社としても、このような課題解決にブロードバンドサービスが少しでもお役に立てるように、RENA(レゾナント・コミュニケーション・ネットワーク・アーキテクチャ)と呼んでいる光による次世代ネットワークの構築に取り組んでいる。これを通じて、生産と消費の両面から活力ある高齢化社会の実現に貢献していきたい。


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