月刊・経済Trend 2004年10月号 巻頭言

New Phase

三木副会長 三木繁光
(みき しげみつ)

日本経団連副会長
東京三菱銀行会長

世界経済はここにきて新たな局面を迎えている。世界景気拡大を牽引してきた米国では6月以降FRB(連邦準備制度理事会)が4年ぶりの金融引き締めに踏み切り、景気拡大の下支え役であった超低金利政策の修正が始まっている。一方、米国と並ぶ牽引役の両輪である中国経済についても、政府による各種引き締め政策により、高成長を持続しながらも、足元でそのペースは鈍化してきている。

それでは、日本はどうか。実質GDP成長率は直近4〜6月期まで5四半期連続でプラス成長を記録するなど、2002年1月を起点とした息の長い景気回復が続いている。特に、今回の景気回復局面では、個人消費や設備投資といった国内民需の増加が成長率を押し上げてきたことは喜ばしい。バブル崩壊以降、長きにわたり外需依存と揶揄されてきた日本経済も着実に変化しつつあるわけで、今後は、世界経済の安定成長に中心的な役割を果たしていかねばならない。そのためにも、民需中心の持続的成長を目指した構造改革を確かなものにする必要がある。

新たな局面を迎えているのは金融界も同じである。喫緊の経営課題であった不良債権問題は峠を越えつつあり、昨年度は多くの金融機関が黒字を確保した。まさにターニングポイントであり、不良債権問題という長いトンネルの出口が見えてくるなかで、各金融機関が収益力の強化や新たなビジネスモデルの構築に向けて積極的に取り組み、各自のオリジナリティを発揮する、いわば「金融新時代」に突入したと言える。

不良債権の集中処理期間の最終年度にあたる今年度は、名実ともに不良債権問題にピリオドを打たねばならない。同時に、「金融新時代」を勝ち抜くためにも、金融サービス業としての原点に立ち戻り、多様化するニーズに応える価値ある金融商品・サービスを次々とお客様に提供していかねばならない。それにより金融システムに対する信頼感を確固たるものとするとともに、日本経済・産業の新たな発展を後押ししていければと思う。


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