月刊・経済Trend 2005年3月号 巻頭言

「省エネ技術」と「中国」

渡副議長 渡 文明
(わたり ふみあき)

日本経団連評議員会副議長
新日本石油社長

京都議定書が先月発効した。今後は、議定書の目標達成に向けた具体的施策が急務となる。

ところで、巷間いわれているとおり、議定書には、最大のCO2排出国である米国や、近年エネルギー消費が急増している中国が参加しておらず、どこまで温暖化防止に有効かは不透明といわざるをえない。日本が議長国を務めたわけだが、リーダーシップ発揮の面で不十分といわれても仕方あるまい。こうした反省を踏まえ、わが国が実質面で温暖化防止に貢献するにはどうすればよいかを考えたとき、「省エネ技術」と「中国」という二つのキーワードにたどり着く。

日本は世界に冠たる省エネ国家である。石油危機を契機に、あらゆる技術を駆使して省エネに取り組んできた。その成果は、トップランナー方式による厳しい基準を満たした省エネ家電、ハイブリッドカー、世界に先駆けて今年から市場投入される家庭用燃料電池など、枚挙に暇がない。

日本で省エネが急速に普及したのは、無資源国であるがゆえに常に国際エネルギー価格の変動に晒されてきたためである。一方中国は、1993年に石油の純輸入国に転じたとはいえ未だに有数の産油国でもあり、エネルギーコストへの感度はまだまだ低い。数値的に見ても、同国のGDP当たりの一次エネルギー消費量は日本の8倍である。そして問題は、エネルギー効率の改善が経済成長に追いつかないことである。このままでは、議定書加盟国が温暖化防止に努めても、元の木阿弥になりかねない。さらに、隣国であるわが国は、温暖化だけでなく、大気汚染や酸性雨等も直接的な影響を免れまい。

こうした事態を避けるためにも、日本は中国に省エネ支援を積極的に行う必要がある。経済成長を果たしつつ省エネを実現したわが国の技術・ノウハウは、今の中国のニーズに合致しており、その環境保全に大きく貢献することは間違いない。そしてこれこそ、京都議定書後の次期枠組みに中国の参加を促す重要な布石になろう。


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