月刊・経済Trend 2005年4月号 巻頭言

食品企業の課題

―グローバル・フードCEOフォーラムより―

江頭副議長 江頭邦雄
(えがしら くにお)

日本経団連評議員会副議長
味の素社長兼CEO

世界の大手食品メーカー20社のCEOが、毎年10月中旬に集まり一泊二日の合宿を行っている。第1回目がパリ、その後、アムステルダム、ニューヨーク、パリ、昨年がボストンと計5回開催している。今年はロンドンの予定である。参加するメンバーは、ネスレ、ユニリーバ、コカ・コーラ、ペプシコーラ、クラフト、カーギル、ダノン、ケロッグ等々で、日本からは私(味の素)が参加している。

テーマは、「食品の安全と安心」、「電子商取引」、「偽物対策」、「肥満問題」、「国際会計基準」など、その時々の共通課題を選び、あらかじめ準備をして参加している。特に「食品の安全と安心」については、遺伝子組み換え食品、BSE問題、鳥インフルエンザ問題など、ここ数年問題が多発し、精力を傾けて議論をしてきた。議論の結果は、それぞれ自国へ持ち帰り、かなりの成果をあげてきたように思う。

これまでまだ取り上げていないが、参加者全員の頭の中にある最大のテーマは、将来の世界的な「食糧危機」への対応である。国連によれば、現在の約63億人の世界人口は、今世紀中に100億人を突破すると予測されており、いずれ、どの時点かで、食糧危機が訪れることも間違いないようである。その解決策には、人類の未来がかかっており、いろいろな国や機関により人類の英知を集めて対策を考える必要があるが、われわれCEOフォーラムの参加者も、その一翼を担って解決のための努力をしていきたいと考えている。

すでに一部のメンバーは、世界的な食糧危機への解決策として、植物に対しての先端技術、たとえばバイオ技術や遺伝子操作技術など、具体的研究テーマをかかげ、検討を開始している。

食により恩恵を受けている食品メーカーにとって、将来の食糧危機への対応は、社会的責任であると同時に、社会的貢献でもあると考えている。


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