月刊・経済Trend 2005年5月号 巻頭言

都市再生の意義

岩沙副議長 岩沙弘道
(いわさ ひろみち)

日本経団連評議員会副議長
三井不動産社長

わが国の都市の魅力と国際競争力の向上を目指して、都市再生本部(本部長 小泉純一郎総理)を中心に官民挙げて都市再生が推進されている。このところ東京をはじめとする都心部で大規模な都市開発プロジェクトが相次いで完成し、社会的にも脚光を浴びた。規制の改革によって民間の開発事業が促進されているが、それは都市再生の一面に過ぎない。

都市再生の本来の意義とは、経済活動や文化活動の舞台となる都市の魅力をグローバルなレベルにおいて高め、国内外からヒト・モノ・カネ・情報を呼び込み、需要を創造することにある。住む人や働く人、訪れる人たちの交流が活発に行われ、集積のメリットがさらなる付加価値を生み出し、経済そのものを持続的に活性化させる、それがまさに都市再生の効果だ。また、世界的に見ても都市への観光の比重は大きく、魅力的な都市づくりはインバウンド観光(外国人観光客の受け入れ)の振興にも資する。

わが国の大都市を欧米やアジアの諸都市と比較して改善すべき課題は何であろうか。空港アクセスや環状道路などの都市インフラ機能は不十分だ。耐震性の確保や良好な景観の形成といった施設整備面で対処すべき点も多い。さらに大切なのは、街づくりをプロデュースするソフト面での対応だ。街の歴史や伝統という固有のポテンシャルを引き出し、賑わいやアメニティを創出する知恵と工夫こそが求められる。街全体のクオリティやホスピタリティを高めるためには、地域の人々や行政の連携も必要だろう。

そうした意味において、都市再生はまだ緒についたばかりである。未曾有の少子高齢化社会を迎えるわが国の内需の柱として、中長期的なビジョンのもと、着実に全国の都市再生を進めていくべきだ。わが国の都市に人々が誇りを持ち、世界中から注目されるようになることを願ってやまない。


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