月刊・経済Trend 2006年3月号 巻頭言

環境・省エネ対策についての対話・協力を
日中関係改善の一助に

三村副会長 三村明夫
(みむら あきお)

日本経団連副会長
新日本製鐵社長

日本と中国の関係が、しっくりいっていない。最近の内閣府調査によると、「中国に親しみを感じない」と回答した人の比率が過去最高となった、とのことである。「政冷経熱」と言われて久しいが、これまでの長年にわたる両国の友好関係、経済面での相互依存度の大きさ、さらには両国関係の将来を考えると、大いに憂慮すべきことである。

中国は、いうまでもなくわが国の「隣人」である。しかも、お互いに引っ越すことのできない、永遠の隣人である。隣人間で、日常的にいろいろな問題が起こることは、決して珍しいことではない。問題をお互いに認識し、お互いを尊重しあいながら、対話を通じて解決することが、全ての基本である。現在おかれている日中両国の状況を改善するためには、経済界としても、今まで以上に民間レベルでさまざまな対話を行い、お互いの信頼関係を深める努力を行うことが何よりも必要だと思う。

現在、中国においては、急速な経済発展にともない、大気汚染をはじめとする環境問題やエネルギー多消費の経済構造が、極めて深刻な問題となっている。近年、中国を訪問する機会も多いが、大気汚染や水質汚濁等の公害問題に苦しんでいた高度成長期の日本の風景と重なって見える。中国政府関係者や鉄鋼関係者と交流するたびに、持続可能な経済発展を目指すため、環境問題・省エネルギー対策を最重視し、真剣に取り組んでいるという並々ならぬ決意を、強く実感している。

これまで日本は、戦後の経済発展のなかで、官民ともに多大な資金・エネルギーを投入し、環境問題を克服するとともに、省エネルギーを実現してきた。今こそ、日本が有している環境や省エネルギーに関する高度な技術・ノウハウと過去の経験を、隣人である中国とのさまざまな対話と技術移転を通じて、積極的に活用すべき時だと思う。このような経済界による地道な対話や技術移転等の取り組みが、日中両国関係の改善の一助になることを願ってやまない。


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