月刊・経済Trend 2007年6月号 巻頭言

未来を創る

御手洗会長 御手洗冨士夫
(みたらい ふじお)

日本経団連会長

安倍内閣は「成長路線」を旗印に、この国の未来に向け全力を挙げている。発足して一年にも満たない中で、地方分権や公務員制度改革、防衛庁の省昇格や国民投票法など、国の根幹となる諸制度の改革でも数々の成果を挙げてきた。電撃的な訪問で、長く「政冷経熱」といわれた中国との関係を改善したことも、大きな成果と言ってよい。

私にとっても大変、刺激的な一年であった。企業経営の現場から離れ、政治や行政と直接向き合う活動は、まさに挑戦に次ぐ挑戦であった。技術開発、地域活性化、税制、経済連携協定、社会保障、労働市場等々の課題に全身全霊を傾けて取り組んだ。その一つの果実として、今年1月には新ビジョン「希望の国、日本」を世に問い、私なりのこの国のかたちを示した。

こうした活動に加え、9カ月で14カ国を回り、各国の政治・経済の実情を首相・経済閣僚や経済人から直接伺う機会を持った。世界同時好況という極めて稀な現実を実感するとともに、国としての競争力強化に邁進する各国首脳の強い意志と姿勢に、国の未来を考える座標軸をみる思いがした。

また、地域間格差の存在が指摘されるなか、一年をかけて全国くまなく、各地域の経済界の生の声を聴いた。好調な地域もあれば、頑張っているのに苦しい地域もあった。各地域がそれぞれの特色を活かしつつ、自らの責任と権限のもとに広域経済圏の創出を目指して取り組むことこそが、日本全体の活力につながる。そこで、私から道州制の導入が必要だという持論を投げかけてみたところ、すべての地域から賛同を得ることができ、大いに勇気付けられた。

いま、日本経済は、確かな足どりで回復から拡大へと向かっている。われわれは、構造改革の成果を手にし、財政出動に頼らない景気回復を実現しつつある。引き続き、民間や地方の活力を引き出す観点から構造改革に取り組むことで、持続的安定成長を確実なものとしたい。

この国の明るい未来を実現するためには、いかなる変革も恐れてはならない。タブーへの挑戦にも躊躇せず、ただひたすらに、この国の未来を想いたい。こうした気概をもって、今年度においても、日本経済をとりまく諸課題に総力を結集して取り組む所存である。


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