月刊・経済Trend 2011年11月号 巻頭言

日本経済・国民生活への新たな脅威

― ソマリア海賊問題への対応を急げ

宮原副会長 宮原耕治
(みやはら こうじ)

経団連副会長
日本郵船会長

東日本大震災の教訓に厳格なリスク管理、サプライチェーンとエネルギー確保の重要性がある。これらを踏まえ遠くインド洋を望むと、資源や食料を輸入に頼り、貿易量の99%を海運に依存する日本が油断・船断の危機に陥りかねない脅威、すなわちソマリア海賊問題がみえてくる。

アフリカ東北部に突き出たソマリアは30年以上の内戦を経て無政府状態にあり、テロ組織アル・シャバブの影響下にある海賊がスエズ運河に続くアデン湾を通る商船(年間2万隻、うち2000隻が日本関係船)を襲っている。ロケット砲で武装する彼らの目的は身代金であり、船員・積荷・船舶は交渉中数カ月間も拘束される。国際輸送の大動脈、アジア・欧州航路への脅威に対する国連・安保理決議に応じて20数カ国が30余隻の護衛艦艇を展開しており、日本も護衛艦2隻と哨戒機2機を派遣し、そのアデン湾内での護衛の評価は高い。

しかしソマリア海賊は、護衛艦艇がいるアデン湾から、手薄なインド洋に大きく活動を拡げている。2010年の襲撃は219件であったが、今年は1.5倍に増え、9月頭には23隻の船舶、349名の船員が拘束されている。日本の石油輸入の9割、自動車輸出の3割が通る最重要海域インド洋でこの一年間、石油タンカー・自動車専用船・コンテナ船など10隻以上の日本関係船が襲われた。すでに一部航路の休止が余儀なくされ、また商船の乗組員の母国では安全確保措置を十分講じない国の関係船乗務を回避する動きすら出ている。わが国にとって致命的な油断・船断の危機である。

ソマリア海賊は日本経済・国民生活への脅威であるとの認識から、経団連は自衛隊の派遣規模の拡大、自衛隊員や海上保安庁職員の乗船による警備強化、ソマリアおよび近隣沿岸国への支援、および国際ルールの整備からなる「海賊対策の強化に向けた提言」を先日発表した。政府の早急な対応を期待したい。


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