７月４日／第１回関西会員懇談会

魅力と活力あふれる豊かな日本を目指して

日本経済団体連合会となって初めての関西会員懇談会が、標記テーマで大阪市内にて開催された。当日は奥田会長、奥井・片田・森下・槙原・香西・西室・樋口・柴田の各副会長が出席し、関西地区からは約260名にのぼる会員が参加し、率直かつ活発な意見交換が行われた。

発言要旨

I．関西会員

井植　敏　三洋電機会長
　国際競争力を高めるには、イギリスや中国の例を見て分かるように政官民一体となった取組みが大切であるが、今の日本ではできていない。また近年、関西地区では企業の倒産が相次いでおり、産業構造改革について真剣に考えるべきである。もっともベンチャー企業については関心が高く投資も行われているが、これから５～10年のことを考えるとベンチャー企業だけで関西経済を守ることは難しく、既存企業がどうすれば生き残ることができるのかについて積極的に考えていかなければならない。
　こうした取組みができていないのは、政官民、また民民のコミュニケーションがうまくできていないからである。とりわけ関西地区では中央行政とのコミュニケーションがここ２～３年の間ほとんど無く、関西の詳細な情報をきちんと伝えることができていない。このコミュニケーション不足の原因の一つは国家公務員倫理法である。特にその運用に問題があり、十分なコミュニケーションを取るために、もっと弾力的でなだらかなものにしなければならない。日本経団連としても、この国家公務員倫理法の見直しについてぜひ検討を進めてもらいたい。
古田　武　鐘淵化学工業会長
　日本経済の成長力を取り戻すためには新産業創生と既存事業強化が必要である。
　新産業創生には研究開発への投資が欠かせないが、日本の企業は欧米諸国の企業に比べ十分にできていない。今後日本においても、産学官が連携し、十分な研究開発費を投入し、欧米に勝てる新産業を創出していくような体制や制度づくりを進めていくべきである。また新産業創生のためにはベンチャー企業の育成も大切であるが、大企業を強化する方がより大切ではないだろうか。大学や国で研究された基礎研究と大企業の持つ応用研究を一体化させるとともに並行して特許を取るなどして、新産業を創出していくべきである。
　既存事業強化については、もはや国内において中国や東南アジア諸国と同じ物を生産していてはコストが合わないというのが実態であり、今後生き残るためには、①産官学連携による中国や東南アジアではつくることのできない差別化商品を産み出す体制づくり、②グローバルでニッチな市場を攻めるといったマーケットストラテジーの再検討、③国内で不採算の事業を積極的に海外へシフトできるバックアップ体制や法整備、というような強化策が必要である。
片山松造　東洋ゴム工業会長
　地球温暖化は地球環境問題の中でも代表的な課題である。温室効果ガス排出量の各国別削減目標を定めた京都議定書の第１目標期間が始まる2008年まであと６年あるが、できるだけ前倒しで各企業・各団体の自主努力による取組みを進めるべきである。さらに地球温暖化防止に向けて現在より詳細で具体的な温室効果ガス排出抑制や京都メカニズム導入のプログラムを決め、着実な方策を実施し目標を達成しなければならない。また、複数の業界団体の連携による、国際および国内企業間または業界間の排出量取引に関する取組みやリサイクル、リユースの推進を早期に実施すべきである。
　もう一つの代表的な問題に廃棄物がある。焼却処分による温室効果ガス増加の問題がある一方、堆積問題もあり、焼却処分も発電等利用の仕方によっては問題解決の有力な手段であると考えられる。焼却処分について、全てが罪悪であるかのように取り扱うのではなく、その正当性も認め、前向きに検討してはどうだろうか。
　また省エネ機器の促進・輸出により地球全体の炭酸ガスの排出量削減に寄与することも環境ビジネスの考えうる形態の一つである。一方国内においてはエコタウン構想がある。エコタウンにふさわしいものが入りやすい誘致活動、エコ事業が促進されるような仕組み・仕掛けを行うことが大切である。
　これらいずれの問題も業種を越え地域を越えたコミュニケーションが重要であり、こうした活動における日本経団連のリーダーシップを期待する。
今井清輔　松下電工会長
　住宅のIT化を業界全体で推進している。IT化推進のためには先行配線が必要であるが、約4,500万戸ある既存住宅については現実的には不可能である。そこで現在、電力線搬送システムと家庭内省電力無線について検討している。
　電力線搬送システムについては450kHz以下の範囲しか使えないという規制があるが２～10MHzという範囲の周波数帯が使えるようになれば、情報伝達量がきわめて多くなり、大きな追加投資なくユビキタスな社会を実現できる。日本経団連にはこういった電力線搬送に係る規制の緩和に向けた取組みをぜひお願いしたい。
自由懇談
　秋山喜久氏（関西電力会長／関西経済連合会会長）より将来の国家ビジョンづくりについて、南谷昌二郎氏（西日本旅客鉄道社長）より産業界としての国内インフラ整備のビジョンづくりについて、松下正幸氏（松下電器産業副会長）より二国間の自由貿易協定推進について、日本経団連に対し積極的に取り組むよう要望があった。

II．日本経団連会長・副会長

　片田副会長より証券市場の活性化、森下副会長より税制抜本改革の推進、西室副会長より社会保障制度をめぐる課題、香西副会長より規制改革特区構想の推進、樋口副会長よりグローバル時代に対応した教育基盤の整備、柴田副会長より社会労働分野の改革、奥井副会長より今後の住宅政策のあり方、槙原副会長よりWTO新ラウンド交渉等について各々発言があった。
　最後に奥田会長より、関西におけるさまざまな取組みを踏まえつつ、日本経団連として構造改革等に積極的に取り組んでいくとの総括があった。

《担当：関西事務所》

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