経済くりっぷ No.2 (2002年7月23日)

7月2日/貿易投資委員会(委員長 槙原 稔氏)

WTO投資ルールは現実的な観点から検討すべき


貿易投資委員会は、総合政策部会で検討して取りまとめた、提言「国際投資ルールの構築と国内投資環境の整備を求める」(案)の審議を行った。当日は、同審議に先立ち、東京大学の小寺彰教授より、WTO投資ルール策定に向けた最近の状況と今後の展望等をきくとともに懇談した。

小寺教授説明要旨

1.WTO投資ルールをめぐる動き

 投資ルールは、海外における事業活動の促進、安定化にとってきわめて重要である。
 現在、世界には、1,900件を超える二国間投資協定が存在するが、多数国間(マルチ)の投資ルールは存在しない。
 WTOでは、昨年11月のドーハで開催された第4回閣僚会議において、来年9月の第5回閣僚会議で全加盟国のコンセンサスを得た上で、投資ルール策定交渉を開始することを決めた。
 他方、WTOでの投資ルール策定に際しては、(1)自国の開発政策への影響を懸念(発展途上国)、(2)各国の環境政策・社会政策を拘束することに反対(NGO(非政府組織))、(3)低レベルのマルチ・ルールが不要(米国産業界)、といったさまざまな批判があることに十分留意すべきである。

2.マルチ・ルールの重要性

 マルチのルールは、各国の国内法令を変えさせる力を持っている。また、WTOでは、その後に行われるラウンド交渉を通じて、ルールが深化していく。
 これに対して、二国間協定は、たとえば、先般締結された、高度な内容を含む日韓投資協定でさえも、両国の国内法令を変えていない。また、二国間協定は、一度制定されると改訂されることがほとんどない。

3.WTO投資ルールの内容

 WTOルールの策定では、できる限り途上国の義務を軽くする一方、先進国に対しては重い義務を課すという基本姿勢が求められる。
 具体的な項目として、途上国等の反発が少ないと思われるのは、(1)投資に関連する法令の内容を開示する「透明性」、(2)外国企業を国籍に問わず同等に扱う「最恵国待遇」である。外国企業を自国企業と同等に扱う「内国民待遇」等については、抵抗が予想される。また、途上国に対しては、一定の例外を認める配慮も必要であろう。

4.経済界の働きかけが重要

 途上国は、投資ルールの構築によって得るものはないと主張している。これに対して進出企業は、投資ルールが投資決定の要因になった実際の事例を示すことにより、反論ができる。
 官民協力の重要性も高まっているが、他方、たとえば日米欧の産業団体が連携することができれば、交渉に大きな影響力を与えられる。


※提言は7月16日理事会において承認、本文については日本経団連ホームページをご参照ください。
「国際投資ルールの構築と国内投資環境の整備を求める」

《担当:国際経済本部》

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