経済くりっぷ No.2 (2002年7月23日)

7月8日/総合政策委員会企画部会(部会長 神尾 隆氏)

「新ビジョン」の策定に向け総合政策委員会企画部会を新設


日本経団連は本年度、新団体としての問題意識や将来展望を示すため「新ビジョン」を策定するが、総合政策委員会のもとに新たに企画部会(部会長:神尾隆トヨタ自動車専務取締役)を設け、具体的な検討を行っていくことにした。第1回会合では、田中直毅 21世紀政策研究所理事長を招いて、「日本社会に対する新しい基準の提供を」と題して説明を受けるとともに、意見交換した。

田中理事長説明要旨

1.冷戦構造崩壊後の日本外交

 冷戦構造の崩壊により、1992年以降、中国とインドは、経済開放体制が整い、独自の手法で近代化に動き出した。これにより、中産階級の所得は改善された。日本の発展モデルがもはやアジアの途上国にとって学ぶべき対象ではなくなったという状況が生じているわけである。
 一方、取り残されたイスラム社会に対して、日本は、日本的なやり方を持ち込むのでなく、地域の内発的な努力に対して、「機会」を与えるという視点から貢献すべきである。また、サブサハラ諸国のHIV等は人類史的課題である。
 今後日本は、たとえばODAについてNPOの活用を考えるなど、パラダイムの転換を図る必要がある。

2.経済改革

 1990年代に米国の活力が高まった背景には、冷戦後、対GDP比3%以上の平和の配当があった一方、日本では、対GDP比3%以上が利害調整と雇用のバラマキとして公共事業費につけ回され、加えて1%が特殊法人に対する補助金として使われている。これらをいかに圧縮できるかが今後の大きな課題である。
 構造問題については、日本は相当自覚しているにもかかわらず、いまだ改善できずにいる。今後、新しいパラダイムを見出すには、(1)家計部門、(2)パートナーシップ形式の企業、(3)通常の株式会社、(4)NPO、(5)政府、の5つのセクターごとに何ができるのかを考えていく必要がある。政府については、地方自治法を廃止し、地方自治体が行政のあり方を幅広く決定できるようにする必要がある。
 また、都市空間の充実については、賃貸住宅を基本に据えるべきである。

3.労働市場と資本市場の成立

 労働市場の成立なくしてリストラ後の活性化もないし、移民の受け入れ基準づくりも不可能である。
 資本市場については、日本版SECが不可欠である。配当の二重課税も見直しが必要である。法人税は引下げではなく思い切ってゼロにし、納税者番号制による総合課税を導入する。

4.日本経団連の役割

 日本経団連が霞ヶ関の省庁との対比で考えていくのであれば、日本経団連の明日はない。今後、日本経団連は、自分たちの手で日本社会全体の規律づけに係わる基準づくりにチャレンジしていくべきである。

《担当:社会本部》

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